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68 浄化の依頼

 ルークのためってどういうこと?


「アリス」

 レオンに名前を言われ、はっとアランの方を見る。

 すぐ駆け寄ると、剣は全部、身体から抜かれ真っ青な顔のアランがレオンに支えられている。


「意識はないがとりあえず無事だ。砦の中に運ぶが腕輪が外れたのなら,浄化を頼みたい」

 私はすぐに返事ができなかった。

 こんな状態のアランから離れたくない。


「大丈夫、私に任せておいて、アリスはアランさんの側にいてあげて。魔力の補充を繰り返せば、私でも浄化できます。殿下、お手をお借りしてもいいですか」

 言葉に詰まっていると、リリィ様がすっと立ち上がった。


 リリィ様も治癒魔法を使い相当魔力量が減り、体力も弱っているはずなのに。いくらレオンから魔力を補充できても、体力までは回復できない。


「ライト、アランを見ていてくれる。私も浄化するわ」

 私はちょっと考えて、アランを支えるライトの顔のそばまで近づいて小声で囁いた。


「この薔薇を私が戻るまで誰にも渡さないで。ルークにもよ」


「わかった、アランのことは任せて」


「では、いったん休戦という事で。ルーク、アリシアの代わりにこの人数に結界張れる?」

 この人数とは、アランはもちろん将軍、騎士たちである。アリシアもかなりの魔力量で浄化もピカ一なのだ。アリシアの代わりに誰か結界を張ってくれるなら、リリィ様同浄化できる。


「それくらいの結界なら、僕が張るよ」


「ライトは、アランのことに集中して。万が一の時はお願い」


「大丈夫だ、結界は俺がやろう」

 ルークが、答えると将軍たちは警戒をしつつも了解したと頷いた。


「レオンは自分の結界は自分でできますよね」

 確認のつまりだったが、レオンのことを呼び捨てにした私のことを、将軍たちがものすごく驚いた顔で見られてしまう。


 あ、呼び捨てはまずいか………。


 レオン本人は気にする様子もなく、私同様将軍に腕輪を外すように頼んでいる。

 将軍も何となく第一王子の企みを察知し、自らレオンに腕輪をしたことを,後悔しているのか深々と頭を下げているが、今はそんなこと咎めている暇はない。


「じゃ、レオンはリリィ様とアリシアの側にいて魔力の補充をお願い」

 力強く見つめ返されて、一瞬心がホワッと熱くなる。

 この世界に来たときは、一人きりだったけど。今は信頼できる味方がいる。


 よし、頑張れる。


 アランの頬にそっと触れてぬくもりを確かめる。


「レオン、ルークこれって依頼よね」


 え??


 二人が訝しそうに私を見た。


「だって、さっき浄化を頼むって言ったでしょう。これは仕事の依頼と思っても?」

 にっこりと営業スマイルを送ると、二人は目を合わせて爆笑した。


「ああ、もちろんこれは仕事の依頼だ」


「そう、じゃあ友達価格で」

 私はウィンクすると。


「婚約者からも、報酬を請求するのか?」

 とルークが宣う。


「婚約者になった覚えは一度もないから」

 軽くあしらうと、ルークは「そうなのか」と呆けた返事をした。



 アリシアの結界の外へ出ると、そこは思った以上に瘴気が渦巻いていた。

 懸命に魔術師やシスター達が押し返しているが、風が強すぎる。この風の流れは、明日にならなければ変わらないだろう。となれば、浄化するしかない。


「アリシア」


「アリス、アランは大丈夫?」


「たぶん、リリィ様が傷は塞いでくれたから、アリシアこそ大丈夫?」

 何となく上の空のアリシアに逆に聞き返す。さっきルークを見たときから様子がおかしかった。


「うん、大丈夫。あとで話がある」

 なに? 様子から恋の告白と言った感じではない。

 ものすごく気になったが、目の前の瘴気に集中しなくては。


「結界は代わりにルークが張ってくれる。アリシアは一緒に浄化をお願い。魔力が切れそうなときは、レオンが補充してくれるから」


「了解」

 アリシアが結界を解くと、すでにルークの結界が張ってある。

 リリィ様もすでに浄化を始めていてくれて、砦は徐々にリリィ様の光の浄化に包まれていった。


「派手ね」

 アリシアも同じ感想なのか、横でうなずいている。

 さすがヒロインである。


「それにしても、この風何とかしたいわね」

 風のせいで、せっかくリリィ様が浄化魔法を使っても、上空まで届かず、浄化魔法の上を風が吹き込み瘴気が城下に少しずつ流れ込んでいる。


「それは私に任せてください」

 振り向くとそこには所在なさげにエルフが立っていた。


 瞬時にアリシアの前に出て、警戒する。

 ルークは何をやっているんだ。


「何もしませんよ、だいたい腕輪を外したあなたにかなうわけないでしょう」


「あなたのことは全く信用していない。これ以上近づくなら拘束する」


「はい、はい。わかっています。蒼竜に風を押し返させるって言いに来ただけです。逃げる気はありませんから」

 私は、ルークに視線を移した。

 彼も承知済のようだ。


「じゃあ、やって」

 エルフは私の答えを聞くと、右手を空に向かって高く上げた。

 それが合図のように、蒼竜が舞い降りてくる。


「綺麗ね」

 アリシアが緊迫感のないことを言うが、確かに綺麗で神々しい生き物だ。


 私はエルフに逃げられないように目を光らせていたが、本人の言うように、蒼竜に風を押し返すように命令しただけだった。


「殿下はもしかして、薔薇の宝石を持っているのですか?」

 去り際、エルフが不意に質問してきた。

 リリィ様がレオンの手を取り魔力回復をするのを見ていたのだろう。


 私は質問には答えずに、浄化を始めた。

 エルフは私が答える気がないのを確認して「後でお話が」と言ってルークの所に戻って行った。


 あなたもなの………。


 もう面倒なことには巻き込まれたくない。

 このまま家に帰ってゆっくりコーヒーが飲みたい。

 今回は働きすぎだ。

 報酬には色を乗せてもらわないと。

 知らず知らず深いため息が出た。


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