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47 勇者に資格はありませんでした

「お前は勇者か?」


 驚いて、思わず魔王の顔を見てしまう。

 これでは肯定しているのと一緒だ。


 どうしよう。勇者だとバレたら殺される?

 力の差は明らかで、絶対にかなわない。

 腕の中のリリィ様を抱く手にギュッと力を入れて、このままアランの所に転移しようか考える。


 どう考えても、今の状態のリリィ様が転移に耐えられるとは思えない、でもワンチャン瀕死の状態でもアランなら何とかなるかも。


「物騒な事を考えない方がいいぞ、どう考えてもお前に俺は倒せないし、聖女は転移に耐えられない」

 うっ。

 お見通しか。

 でも、すぐには殺されることはなさそうだ。

 リリィ様だって、瘴気のもとがなくなったわけじゃないから、すぐにどうこうされることはないだろう。


 そのうちアランが助けに来てくれるだろうし、それまで絶対リリィ様のそばから離れないようにしなくちゃ。


「どうして、僕が勇者だと思うんだ?」

 警戒しながら聞いてみる。

「お前、自分のステータスダダ洩れだぞ。ちゃんと隠しておけ。それに、召喚魔法がまだ完結しないで、そのままかかっている」

 そうか、ステータスって隠しておかないとならないのか。だれも教えてくれなかったけど。


「お前は誰に召喚されたんだ、目的は俺か? それとも他の魔王か?」

 他の魔王って、確かあと3人いるんだっけ。

「僕は勇者になるつもりないから、魔王討伐もしない、でも商会の敵になるなら全力で戦う」

「ふーん」

 面白いものでも見るように、魔王は僕に視線をちらりと向ける。

 なんだよ、その馬鹿にした視線は!


 どうせヘタレな勇者だよ。

 ムッとしたが、ふと、これってチャンスじゃないか? と思い至る。


「あの、聞きたいことがるんだけど」

「何だ? 褒美として少しくらい答えてやる」

「僕は異世界から召喚されたんだけど、元の世界に帰る方法を知らないか?」

 そう聞いたところで、リリィ様を乗せる馬車が到着したと、騎士が知らせに来た。


 真っ黒の外装に銀色に模様が浮き出た、ちょっと大きめの馬車に、リリィ様と一緒に乗り込むと、魔王まで後から乗って来た。転移してっさっさと帰ればいいのにと思ったが、どうやら僕の質問に答えてくれるために、一緒に乗り込んだようだ。


「直接は知らないが、数年前にどこかの魔王が、次の代に魔王を引き継いだ後、異世界に行ったという話を聞いたことがある」

「ほんとか? それって地球?」

「本当かどうかは知らないし、どこかも知らん」

 ちょっと不機嫌に魔王は答えた。

 でも、魔王が言うのだ、あながち嘘と言う訳ではないだろう。

「ありがとうございます。他の魔王にも聞いてみます」

 今までこれと言って情報がなかったけど、何とか次の目標が出来た。

 この世界に数人しかいない魔王なら、そんなに時間をかけずに訪ねて行けるだろう。


「現実的じゃないな」

 僕が希望が湧いてきたと思っていたところに、魔王が冷たく言い放つ。


「先ず、今のお前じゃ他の魔王に合うことはできないだろう。それでなくても、毎日沢山の冒険者がレアダンジョン目指して森に入って来る、その中でも、腕に覚えがあるものは魔王を倒そうと森の奥深くまで来るんだ。この城だって、そういう輩から見えないように結界が張られているしな」

 そうなのか、魔王討伐希望者ってそんなにいるのか。


「仮に魔王に会えて、異世界に行く方法が分かったとして、今の魔力量じゃ到底転移できない。こちらに召喚するときでさえ、上位の魔術師が数人で命がけで呼ぶんだ今のお前じゃ、10年たっても無理だな」


「そんなぁ、10年なんてそんなに待てない、地球では7年で死亡届が出せるんだぞ」


「まあ、そんなに落ち込むな、お前の周りにいる人間は面白い、道というのは一人では切り開けないんだ、偶然異世界からくる人間もいるんだから、逆に偶然帰れる人間もいるかもしれん」

 うなだれている僕に、魔王は慰めているのか、適当なことを言った。



 城につくと魔王はリリィ様を抱き上げようとする。


「俺が運びます」


「ちびには無理だろ」

 うっ。

 さっき馬車に載せるとき、背が小さいせいで、リリィ様の足が地面を引きずってしまい、騎士に手伝ってもらったのだ。

 見てたのか。


 チッ、あと数年すれば、アランくらいにはなる予定だ。


 でも、高さのある馬車から降ろすには、乗せる以上に引きずらないのは難しい。

 仕方ないので、黙って魔王の後に続く。


 城は思った以上に大きく。綺麗に整えられていた。

 使用人も皆、知的で修業の時に狩っていた魔獣のような凶暴な者はいないようだ。獣族だろうか、耳としっぽがあるものもいて、眺めていて楽しい。

 あの時やっぱり殺さなくてよかった。


 長い廊下を抜けると、中庭があった。

 ここか、アリスが言っていたところは。ここに薔薇があるのかも。


 中庭を過ぎると、長い階段を上り扉を開ける。

 魔王はリリィ様を中央に置かれたベットに横たえると、俺たちのすぐ後から入ってきた鶯色の髪をした、青年から大きな石をいくつか受け取った。


 それを一つ一つ、寝ているリリィ様の横に並べていく。

 ?


「魔力石だ。ほら見ろ」

 並べた石の一つが光りだした。


「魔力にはそれぞれ波動があって、波動の合う魔力石からしか魔力を受け取れない。彼女の場合、聖女だから光魔法をためた石じゃないと魔力は受け取れないだろう」

 へー、初めて見た。


「これで元気になる?」


「いや、気休め程度だな。あれだけ魔力を消費したんだ、これくらいじゃだめだ。まあ、命の危険はなくなったがな」


「転移魔法には耐えられる?」


「すぐには無理だ、1週間は寝ていないと。ただ、あいつを呼べばすぐに帰れる」


「あいつ? アランか?」

 魔王は眉間にしわを寄せ、「違う」と否定する。

 やっぱりアランが嫌いらしい。


「薔薇の花びらを宝石にした奴がもう一人いただろう。あれは、本人の魔力を復活させる力があるバカみたいな宝石だからな」

 第二王子殿下。

 いや、それは無理だろう。

 アランの態度から絶対に第二王子殿下に事情を話すことを、うんと言いそうにない。


 取り合えず、魔王がいなくなったらアランに通信しよう。

 そう思って、外を眺めた。


「あれは?」

 窓際まで行くと、さっき通ってきた中庭が広がっていて、その中心にガラスの薔薇がキラキラ光っていた。


「ああ、薔薇か。見に行くか?」

「いいの?」

「ああ、しばらくかかるからな」

 魔王はちらりと魔力石に目をやる。

 まだ、先ほどと同じく光っている。

 でも、薔薇には興味あるが、リリィ様を一人にするわけにはいかない。


「大丈夫だ、別にとらえて閉じ込めるつもりはない」


「じゃあ、ちょっとだけ」

 僕は魔王の後に続き、中庭に降りた。


「すごい綺麗だ」

 話には聞いていたけれど、実際に見たのは初めてだ。

 花びらが透けて、キラキラ光っている。


「一枚やろうか?」

「えっ?」

「ほら、手を出せ」

 魔王はそう言って、一枚花びらをちぎった。

 えーーーーーっ!!

 何考えてるんだこの人。

 いや、人じゃないけど、いいのか?


 俺は恐る恐る手を出した。

 ひらりと花びらが手に載せられる。


「すごい、七色だぁ」

「やっぱり勇者では選ばれしものにはなれないんだな」

「は?」


「ほら、宝石に変わらんだろう」

 ああ、アリスと第二王子が花びらを宝石に変えたってやつか。

 なんか、ダメな奴認定されてたようで、悔しい。


「まあ、落ち込むな。普通の人間は触ることもできない。お前が悪いわけじゃない。宝石は魔王からの加護みたいなもんだ、さすがに勇者に魔王の加護はつかなってことだろう」

 そうなのか、それでもなんだか、悲しい。


「その花びらはやる。口にすれば100年寿命が延びる。ただし、お前くらいの魔力がない奴が口にすれば魔力に充てられて逆に危ない、間違っても他の奴にやろうと思うなよ」


 それも怖い。でもありがたくもらっとくことにした。自分の寿命を延ばしたいとは思わないが、これから先何があるかわからない。


「ありがとう」

 僕は素直に礼を言った。


 あれ? それってお墓?

 ガラスの薔薇の横に、お墓らしきものがある。

 目線に気づいたのか、魔王も視線をお墓に視線を向ける。


「昔の聖女の墓だ」

 昔の聖女って………。


「それって、イスラの王女様だった人?」


「そうだ。代替わりする前も、やはり瘴気が多発した時に聖女に浄化を頼んだらしい。この薔薇はここにあるのが正解だろ?」

 俺には関係ないがな。と魔王が付け足した。

 それを伝えたくて、僕をここに連れてきたのか?


 訪ねるより先に、魔王は部屋へと戻っていった。



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