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40 聖女は誰?

 教室に入ると、レオン様がすかさず目の前に来て、にっこり「おはよう」といい、小声で放課後薔薇園で待っていると告げられる。

 本当は心配かけたことを謝りたかったが、すぐにララ様が来てレオン様の腕にしがみつき、席へと連れて行ってしまう。



「アリス、おはよう」

 アリシアが、ワクワクした顔で挨拶してくる。

 なに?

「なんだか二人とも、物憂げな表情で見つめあって、もしかして密会の約束でもしてたの?」


「なっ! 何を言ってるのよ。違うから」

 あわてて否定するも、ニヤリとアリシアが口角を上げる。

「もう、冗談よ。ちょっとはのってよ」

 なんだか笑えない。


「放課後薔薇園に行く事になっちゃったから、アリシアも来てね」

 昨日アランに薔薇園に近づかないよう言われたばかりだから、せめてアリシアについて行ってもらおう。


 レオン様にどこまで説明するかまだ迷っているけれど、ライトとガリレのことは話さず説明するよう考えないと。


「まあ、しょうがないわね。生徒会室に寄ってから行くわ。それにしても、マリー様がさっきからアリスのこと睨んでるけど、心当たりある?」

 ちらりと視線を移すと、確かにきつい顔で睨んでいる。


「全く心当たりない。ララ様になら睨まれるのわかるけど、第一王子とは入学式以来まったく接点ないし」

「そうよね。でも、ちょっと気になるわね。彼女は腐っても悪役令嬢だし、ゲーム補正であなたを虐めるとかありかしら?」

「いや、ないでしょう。それに、アリシアに言われたくないと思う」

 てへ、っとアリシアは可憐に笑った。






 ***************************




「アリス!無事でよかった」

 レオン様が薔薇園で私を見つけると、笑顔で駆け寄ってくる。

 なんてさわやかに走ってくるんだろう。


「心配かけました。薔薇を持ち去られると思ったら咄嗟に手が出てしまって」

 レオン様は今はもう何もない空間を見つめた。


「うん、俺のほうこそ何もできず、みすみす逃げられた。アリスまで巻き込んでしまって、伝説通りアレキサンドライトを手に入れて、浮かれていたのかも」

 ごめんね。と愁いを帯びた瞳で見つめられ、固まってしまう。

 なんて凶器なの! 

 こんな瞳で見つめられてこれ以上責められる人がいる? 


「アリス?」

 呆けている私を見て、レオンが心配そうに首をかしげる。

 もう、いちいち絵になる。


「あの、私こそ薔薇は取り返せませんでした………あの薔薇は………」

 この先なんて続けたらいいのかわからず、黙っていると、レオン様が先を続けた。


「魔王のものだったんだね」


「知ってたんですか」


「やっぱりそうか、昨日、王宮の禁書で手あたり次第深紅の髪と瞳の容姿の人物がいないか探した。あれだけ目立った容姿だ、あちこちに記載があった。そして彼が王女の恋人っだったんだろう?」

 レオン様は確信しているようだった。


「今の彼は代替わりしているそうです」

 恋人だったかは、あえて肯定も否定もしなかった。


「自分が薔薇の正当な持ち主だと思ったから取り返しに来たんだろうけど、代替わりしているからこの薔薇園の存在を知らなかったのか?」

 ちょっと違うけれど、説明できないのでそのままスルーしよう。


「ダイヤの力については何か言っていた?」

「えっと、ダイヤを持っているから結界の中に入れたと言っていました。それ以上詳しくは聞けなくて」

「そう」

 レオ様はそっけなく言うと、何か考え事をするように腕を組んだ。


「ねえ、アリス。もしかして昨日俺の影に、君が無事だと伝えてきた男に口止めされてる?」

 影に伝えた男? ってアランよね。


「まあ、君が無事だったんだからいいんだ。なかなか、面白そうな男のようだし、この国にいるうちに一度会いたいな」

 何故かレオン様は嬉しそうに言った。


「伝えます」

「うん。それとアリス。一つだけ教えて欲しいんだけど。君は聖女なの?」

 

はぁ?

「私が聖女?」


「なるほど、自覚がないか、本当の聖女がだれか知っているのか、どちらかな?」

 レオン様は心底驚いている私を見て、にっこりと黒い笑みを浮かべる。

 なおも呆けている私に、

「薔薇園をきれいに浄化したのを見たら、誰だってアリスが聖女かなと思うよ」とほほ笑んだ。



40話まできました!

ここまで読んでいただきありがとうございます。

学院編と思いながら書いていますが、なかなかそれらしくなくて反省。学校祭もどうなることやら……。

ラストに向けて伏線回収頑張ります。

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