39 アランとライト
「ライト、寝てるのか?」
うたた寝してたのか、声をかけるとライトは身体をビックっと震わせ目を覚ました。
「アランさんか、アリスが無事で良かったです」
眠そうに目を擦ると、ライトはベットから起きてお茶を淹れてくれた。
「それにしても魔王に拐われるなんて予定外だけど、自力で無事に戻って来たってことは、協力関係になったってこと?」
ライトは興味深そうに聞いてきた。魔王討伐のため、召喚されたのだから気になるのは当然か。
「全面的に協力とはいかないな、まだ、魔王についてはいろいろ意図がわからないし、それにライトは召喚魔法を解かないと、ソルトの干渉を受けているのは魔王なら見てわかるだろう。そんな奴は信用されない」
俺の言葉に、ライトはシュンとしてうつむいた。
「アランも僕を信用してないの?」
捨て犬のような瞳で見つめられると、垂れた耳が見えそうだぞ。
「フッ、信じているわけがないでしょ。『僕には人間も猫も殺せません』なんて泣きついてくる奴を」
ショックだったのか、目を見開いて情けない声で「そんなぁ」と俺を見る。
「僕がライトに無理やり人を殺せと言うと思ったんですか? それこそ心外ですね」
「でもあの時は、いきなりダンジョンに連れていかれるし、ガリレは怖いし、アリスは守銭奴だし、どう考えてもヤバい事やらされそうだったから」
必死で言い訳するライトを見ていると、さっきまでのイライラが少し消えた。
「まあ、今後に期待ですね。しばらくはこの部屋にいるから」
第二王子だけならともかく、魔王までできたのではこのまま帰るわけにいかない。
「え~」
と、ライトは嫌そうに顔をしかめた。
「アリスの所に行けば?」
「女子寮はいくら僕でもまずいですから、ライトの所は二人部屋でベッドも空いてるし、何も問題ないでしょ」
中等部の寮は上位貴族以外二人部屋だが、何かの時のためにライトと同室だった生徒には、入学辞退してもらったのだ。
「それで栽培場所と加工場所の目処は立ったのですか?」
第二王子の情報のおかげで、貴族や商人の素性はつかめたが、用心しているのか、なかなか栽培場所の特定ができない。
「それなら、今日わかった。てっきり誰かの領地で栽培しているのかと思ったら、なんと魔王の森だった。しかも、瘴気が濃くて普通の人間じゃ近づくこともできない場所」
魔王の森で?
なんだってそんな危険な場所で。
瘴気がなくたって、魔物に襲われる確率が高いのに、メリットは何だ?
「そいつらは瘴気があるのにどうやって、森に入ったのです?」
「ソルトが一緒だったんだ。ソルトと商人、あと農夫数人にシールドを張ってた」
ソルトか。
悪事にどっぷりつかっているというわけか。
召喚魔法が使えるほどだ、うまく隠しているのかもしれないな。
それにしても、ソルトに合うのはライトにとってはもどかしいだろう。よく言いつけを守って、問い詰めるのを我慢している。
『まて』をさせてる飼い主の気分だな。
「明日僕も見に行きます。ところで、ライトはこちらの世界で勇者として暮らしていくつもりは本当にないのですか?」
ライトがこちらの世界に来てまだ数か月だが、ガリレとの修行で時間が止まった空間にいた時期を合わせるとかなりの日数だろう。今では勇者として剣の腕も上げたし、チートな魔法が使い放題だ。
地球で平凡な人生を送るより、魅力的ではないかな。
「俺は、帰りたい。もちろん、今は簡単に帰れないことはわかってる。でも、どうしても黙っていなくなったままじゃいやだ」
「そうですか、大切な人が待っているんですね」
無言でうなずくと、会いたい人を思い出したのか、ぐすっと鼻をすする。
まあ、ライトもまだ子供だ。からかわないでおいてやろう。
「あ、恋人とかじゃないぞ。父さんと妹だ。僕、小さいころ母さんを亡くしたてるから。僕までいなくなったら、みんな悲しむ」
「そうですか、いつか帰れるといいですね」
俺はライトの頭をくしゃくしゃになぜてやった。
アリスと同じ漆黒の髪だ。
「あの、アラン…………さん」
「アランでいいですよ。なんです?」
「しばらく、ここで一緒に暮らすなら、二人の時はアリスと一緒の時みたく丁寧にしゃべるの無しでお願いできますか?」
「アリスと一緒の時みたく?」
「はい、アリスと二人きりの時はなんだか素のアランさんみたくて好きです。ですます調で話されると緊張して怖いし」
ライトはしどろもどろ言う。
「男に好きって言われてもうれしくないが、まあいい」
他の人間に言われたら、そいつとは一線を引くが、ライトは何となく天然なのか、憎めない。
「じゃ、今日からライトは俺の下僕な」
からかうようにいうと、ライトはまた「え~」とむくれた。
アランとライト二人っきりの会話って書いていて楽しいです




