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38 焼きもち?

「ルークとはまさか魔王の名か? 何故会ったばかりで、呼び捨て?」

 アランは眉間をてで押さえ、動かない。


「あら、アリスずいぶん魔王と親しくなったのね」

 アリシアが嬉しそうに、腕を組んでくる。

 何故かアランの方を見て、勝ち誇ったように微笑む。


「別に、親しくなったというほどでもないけど、商売としての感触はいいよ。魔界といっても、魔族だけじゃないし本当にきれいな町並みで市場もあって、むしろ人間がいない分商売敵がいない」


「いや、今は忙しい。第一王子の事が片付いたら、浄化ならリリィ様を紹介しよう。アリスはくれぐれも大人しくしてるように」

 リリィ様は急にアランに話をふられて、驚いている。


「小さい男ね」

 アリシアの呟きに、一瞬鋭い視線を向けるも、アランはそれ以上何も言わなかった。

 でも、周りの温度が下がったのは気のせいじゃないよね。


「あの、第二王子に報告は? すごく心配してました」

 リリィ様が申し訳なさそうに言う。

「さっきあいつの影に、アリスが無事だった事は伝えた。それ以上の情報は伝えるつもりはない」


「アラン? でも、ダイヤや薔薇の事は伝えないと」

「………………。」

 アランは思案するように目をつむり、腕を組みながら中指と薬指だけトントントンと動かしている。


「よし、アリスをさらったのが魔王であることだけ伝える。前魔王が薔薇にかかわっていたことは、あえてこちらからいう必要はない」

 それでレオン様が納得するようには思えないけど。


「第二王子は味方じゃない。それに、魔王のことを詳しく話せばガリレのことも話さなくてはならなくなる」

 ガリレはああ見えて極端に人とかかわるのを嫌う。多分この何百年、新たに知り合ったのは私が紹介した数人の人間だけだ。


「そもそも、今回の仕事は何だ?」


「ライトの召喚を解除してもらうのと、リリィ様を聖女にしないこと」

「そうだ、どちらも第二王子にとってはメリットよりもデメリットのほうが大きい」

 勇者と聖女が国にいるとなれば、国内外に有利にアピールできる。

 アランは第二王子と協力する気はないようだった。


「わかった。レオン様には魔王のことは詳しく話さないようにする」

「ああ、しばらくは薔薇園にも近づかないほうがいい。かなり第一王子のしっぽは掴めたし、第二王子と協力は必要ない」

 アランは話は終わりとばかりに、紅茶を淹れはじめた。


「あら、それは判断が早急すぎるんじゃないかしら。第二王子はかなりの切れ者よ、第一王子の交友関係もこちらから頼んで教えてもらったわけじゃないし、ライトのことはともかく、リリィ様が聖女だとバレるのは時間の問題だわ。たとえバレたとしても、リリィ様の意志を無視して聖女に仕立て様とするようには思えない」

 確かにアリシアの言う通りだ。

 アランは初めは第二王子を巻き込むつもりだったと思う。でも、今は関わり合いにならないようにしているようだ。


「薔薇園に現れた時点で、魔王が王女様の恋人じゃないかと見当はつけていると思う。それに、アリスに『自分は王になる』と宣言しているくらいよ。こちらが協力を頼まなくても、もう巻き込まれてるんじゃない? それなら協力体制を作ったほうが早く第一王子をつぶせる」

 心が狭いのよね、とアリシアは付け足した。


「アラン、何か気になることでもあるの?」

 いつもなら、商売になりそうなことは何をおいても優先するのに。魔界での商売についても、第二王子とのコネを作る機会を優先しないことも、やっぱりおかしい。


「あら、アランの気になることなんて一つしかないじゃない」

 苦虫を嚙み潰したようなアランに、アリシアは意味ありげに視線を向ける。

「うるさい。王族のごたごたに巻き込まれたくないだけだ」


 アランが何を気にしているかわからないが、第二王子を味方につけて損はない気がする。

「じゃあ、リリィ様が聖女じゃなくなるまでのしばらくは、やっぱり王宮内にいる第二王子については保留で」

 うん、リリィ様の安全が一番優先。

 浄化魔法が使える聖女は、第一王子だけじゃなく、魔王にとっても貴重な存在なはず。


「わかった」

 アランはしぶしぶ了解した。


「そうだ! アリス。魔王はどうだった?」

 アリシアが嬉しそうに顔を覗き込んでくる。

「どうとは?」

「決まってるじゃない、顔よ顔。美しかった?怖かった?ソースかしら醤油かしら?」

 ソース?醤油?何言ってんの?


「顔は、精悍なイケメンだった。深紅の流れるようなウエーブの髪に、同じ色の瞳で、下から見上げると夕日のように揺らめいていて、ガリレとは違った色気があったよ」

 思わず「結婚するか」と言う言葉と風になびく深紅の髪を思い出し、ぽーっとする。


「あらあら、アリスが珍しく男に興味がある?」

 嬉しそうに、アリシアはウリウリと肘で小突いてくる。

「え、興味って!違うから。あれはそういう意味じゃなくて………そうだ、アリシアに見て欲しいものをもらったの」

 私はポケットから魔王にもらったルビーを取り出し、アリシアに渡した。


「あらー、これ本気のルビーね」

 本気のルビー?

「通話石よ」

「わかってないわね、普通、通話石にこんなランクの高いルビーは使わないわよ。通話機能はどう考えてもおまけね。それにこのルビーの色、深紅よね」

 意味ありげに、アリシアはルビーをアランに渡す。


「アランはどう思う?」


「只の通話石だ、別に意味はないだろ。魔王との交渉用におれが預かっておく」


「え――――――っ、それはなしじゃない?」

 アリシアは何やら怒っているが、もともと交渉用にくれたのだまずはアランに話をつけてもらうほが、何かとスムーズだろう。


「リリィ様。浄化魔法はどのくらい使えるのですか?」

 アランは怒るアリシアを無視して、リリィ様に話かける。

「実は、このところ自分でも驚くくらい、聖魔法が安定してきてるんです。もちろん第一王子には知られないようにしていますが」


「なるほど、それはよかった。では、万が一魔王から依頼があれば、浄化しに行ってもらえますか?」

 アランの無茶ぶりに、なぜかリリィ様は了承した。


「それは助かります。きちんと契約書には、リリィ様のことは秘密にすることと、ライトも付けます」

 ライトが一緒なら、どんな瘴気でも大丈夫だろう。


 それにしても、あんなに聖女になりたくないと言っていたのに、なぜ?


 私の視線に気づいたのか、リリィ様はウィンクした。


 いや、ヒロインさんめちゃかわいいですけど。


「甘いわねリリィ様は、こんなこじらせている男ほっとけばいいのよ」

 アリシアがアランに舌を出している。

 はしたないけど、なぜかやっぱりかわいい。


アラン頑張れー。取り敢えず私は応援してるよ!

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