24 アラン視点 厄介な人タラシ
「どうしていつも面倒な人に気に入られるんでしょうね」
本人は気づいていないようだが、アリスは人たらしだ。
あちこちで人を引っかけては、いつの間にかたらし込んでいる。
今までは、諦めていたが、今回は厄介なやつだ。
アリスがイスラに行ってからすぐ、周辺を探る影が現れた。
探られて困ることはないので、どこのものか泳がせていたのだが、以外に優秀で、こちらが作り上げた経歴まで探ってきた。
抹殺しても良かったが、面倒事になりそうだったので、暗示をかけ帰した。
第一王子より優秀だという噂は本当のようだ。
「えっと、ごめんなさい?」
目の前にはイスラから帰って来たアリスが座っている。
業務報告をするだけなら、いつものように通話石で済むのだが、今日はダイヤをガリレに見せるためにわざわざ転移してきたのだ。
「入学そうそう、目を付けられたのは困りましたが、第二王子はどんな男ですか? 商売相手として信用できそうですか?」
「まあ、一言で言うなら、猫かぶりの腹黒王子。頭も良さそうだし、行動力もありそう。商売相手としては油断できない感じ」
アリスは「腹黒同士話したらどちらが勝つのかしら?」などと首を傾げている。
「アリシアはこれを見て、何か言ってましたか?」
「特には―――――魔力が込められているけど、変なものじゃないって」
アリスはちょっとそわそわして、ダイヤを差し出した。
俺はダイヤを手に取ると、光にかざして覗きこんだ。
存在感のある大きさに、このダイヤに込めた思いが感じられる。
「こんな大きなダイヤを、男からもらった気分はどうです?」
言った瞬間、自分でも驚いた。
これじゃあまるでやきもちだが、アリスは嫌みだと思ったのか、「もらったのは花びらよ」とすねたように言い返した。
「この魔法は誰がかけたと思う?」
アリスは何か言いたそうに見つめてくるが、じっと答えを待っている。
単純なアリスの考えることは、容易に想像がつく。
「これがガリレの魔法か聞きたいのだろうけど、僕にはわからないです」
動揺を悟られないように、淡々と答える。
がっかりした様子で、アリスは「はぁ―――」とため息をついた。
「でも可能性はあるよね。時を止める魔法を使える魔術師なんてそうそういないし」
確かに、その点はいま探りをいれている。
「まあ、そうだね。そんなに気になるなら、先に聞いて来たらどうです?」
俺が言うと、アリスはギョッとすると小刻みに首を横にふった。
「仮にこれがガリレの魔法でも、もう何百年も前のことです。いまさらどうにもならない」
とは言ったが、たぶんガリレではない。
ガリレなら、こんなぬるい魔法は使わないだろうし、想い人に毒を盛られた時点で、徹底的に潰しているだろう。俺だって、守るべきものを傷つけられたら、死んだ方がましというくらいな制裁をしてやる。
良くも悪くも『ガラスの薔薇』を創った奴はロマンチストだ。俺やガリレとは違う。
まだあれこれと思い悩んでいるアリスの頭をなぜてやる。
「あ、また頭撫でた! それ止めてくれる! ちょっと背が高くなったからって、生意気なのよ! 仕返ししてるでしょ」
アリスは怒って俺の手をはらった。
「仕返し?」
「そうよ、まだアランがチビだったときよく、その柔らかい水色の髪が気持ちよくて撫でてたら、子供扱いするなって怒ってたわ」
ああ――――。
アリスと出会った頃はよく頭を撫で回されたっけ。
あの頃は恥ずかしくて、照れ隠しに怒ったふりをしていた。
アリスに頭を撫でられるのは、くすぐったくて本当は好きだったのだ。
「仕返しじゃないですよ。元気出たでしょ」
「元気だし! ただちょっとガリレが王女様と今一緒じゃないのは何でだろうと心配しただけだし」
アリスは基本心配性だ。
店の従業員も、ほとんどが食べられない子供を拾ってきては、学校にいかせてやり、仕事を教え込んでいる。
他人のことばかり心配して、いつも自分のことは後回しだ。
「私、最近キャラ変わってきてると思うの」
アリスが真面目な顔をして言う。
何を突然言うんだ?
「キャラ?」
「そうよ、本当はできる皆のお姉さんだったはずなのに、このいつまでも変わらない姿のせいで、どんどん子供達に見た目追い越されて、威厳が保てない」
確かに、皆大きくなった。
おじさん、おばさん化したやつも多い。
アリスの教育のおかげで、今ではこの商会を支える、立派な大人だ。
「アリスには皆感謝しているよ。もちろん、僕も」
アリスに出会わなければ、俺は死んでいただろう。
次回はアランと出逢い編です




