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10 異世界での前世 始まりのはなし

今回、ちょっと面倒な話です。

しかも、いつもより長いです。二つに分けようとも考えましたが、面倒な話は一気に読んだ方がいいかなと思い、そのまま投稿します。


 桜舞い散る中、私は意識が遠のいていくのを感じながら、もうすぐ死ぬんだと思った。

 あと数分、数十秒後、確実に意識が途切れるはずだった。


 しかし、ピンク色だった視界が闇に沈むことはなく、青い光に包まれて、落ちていく。

 どこかにつかまろうと、必死に手を伸ばすが、力が入らず、私は意識を手放した。



 気づいたら知らない森の中だった。

 死んだの?

 これが死後の世界?

 天国ではないことはわかった。暗く陰気な森のあちこちから、獣の叫び声が聞こえる。

 地獄に落とされたのか? と思ったくらいだ。


 目の前に真っ黒く角が生えた、魔物を見たとき、そこが異世界だとわかったが、魔物に襲われ、すぐ死んだ。

 そう、今度は確実に死んだ。死んだとわかった。


 よりによって異世界で死ぬとは………。


 神様、酷すぎるでしょ――――――――。


 異世界で死ぬと、私は日本の自分に転生していた。

 いや、これは転生と言うより、やり直しだ。


 日本の両親のもとに生まれ、中学生くらいに自分が人生やり直している事を思い出す。


 数年後に自分が死ぬ寸前、異世界に落とされることを、思い出したときの衝撃は何度味わっても慣れることはない。


 目が覚めるといつも同じ森。

 魔物がうじゃうじゃいて、2度目以降も異世界ですぐ殺された。

 過酷すぎる…………。


 死ぬ寸前異世界転移したことから、死ぬ目に遭わなければいいのだと、危険を避けたが、結局、いつも危険は避けきれず、異世界へ落ちる――――――――。


 私、何かやらかしましたか?

 どんな業をもって生まれたら、こんな事になるんでしょう?


 なんとか異世界で生き残れないか、魔法ものや、冒険もののゲームを読みあさり、自分にも魔法が使えないか試行錯誤し、何度目かでやっと森を脱出できた。


 しかし、異世界は現実よりも厳しく、いくら魔法が使えても平和ボケして生きてきた現代人には、生き残るのは大変だった。


 せっかく無事に森を出ることができても、貴族にぶつかっただけで殺され、井戸水を飲んだだけで死に、奴隷として売られたこともある。


 さらに問題は、異世界に落ちる度に同じ人がいるわけではないということだ、ガリレは勿論、アランにも会えないときがある。


 微妙に違う世界なのだ。


 異世界で生きていくには、強くならなくては――――――。


 そうして、何度も何度も森に落ちて魔法使いのガリレを見つけ出し、魔法の鍛練をし、ついに()()()()()()()()を使えるようになる。


 それは、全くの偶然だった。

 異世界では、やり直す度に魔力量も多くなり、魔力量だけならこの世界の誰にも負けないのではというくらいになった。

 あれだけ何度も残虐に殺されたのだ、チートな力がついても納得です。


 一方で見た目は全く変わらない。年を取らなくなった事に気づく。


 その頃、転移魔法でどこまで行けるか試していたときだった。

 転移魔法には、いくつか条件があるが絶対に外せないのが、転移先の正確な情報だ。これは軽緯度など数字的なものもあるが、もっとも重要なのが感覚的な情報だ。


 早い話、一度も行ったことがない所には転移できない。逆に言えば一度でも行けば転移できるのだ。


 なら、日本はどうだろう?

『異世界で死んで日本に転生する』というのはかなり精神的に辛い。

 今は異世界で簡単に死ぬことはないけれど、逆に日本の両親に会うことも出来ない。


 一か八か日本を思い浮かべて転移してみると、信じられないことに、日本に転移していた。


 じろじろと、町行く人が見てくる。コスプレとでも思われているのか、そこがいつなのかも確認せずにいたたまれなくて、すぐにアンダルシ王国に戻る。


 自分でもビックリ。

 これで運命を断ち切れるかもしれない………。


 私は今度は自分の部屋を思い浮かべて転移した。

 部屋を見回すと、16歳の誕生日に来ているようで、見覚えのあるプレゼントが机においてあった。どうやらまだ()()帰ってきてないらしいが、これは不味いかも。


 素人の私でも、私自身に鉢合わせするのは、面倒なことが起こるであろう事がわかった。


 仕方なくアンダルシ王国に帰りガリレに報告するも、やはり怪訝な顔をされる。


「安易に時空を越えて、もとの世界に転移魔法を使っては駄目だ。同じ世界に同じ魂が存在することはできない、融合することもあるが、たいていは近づけばどちらかの魂は消えてしまう」

 ガリレは恐ろしいことをさらりと言った。が、怒ってはいないようだった。アリスを本当に心配してくれているのだう。


「もうやってしまったことは仕方ない、お前なら、自分の転移魔法の軌跡が追えるだろう? 次からは必ずそこに転移すればいい」


「軌跡を追う――――――。」

「そうだ、向こうに行く時は、こちらに帰って来た瞬間に転移すれば魂が重なる事はない」

 ややこしい話だが、言いたいことはなんとんく伝わった。

「わかった。次はさっき帰ってきた続きに行けばいいのね」

 了解したとばかりに返事をすると、ガリレは難しい顔でため息をついた。

「いやわかっていないな。今度行くときはもとの世界のお前がどうなったかきちんと確認するんだ。もしも、存在していたら、その場所に転移するのはもうやめた方がいい」

「ああ、そっか。魂は重なっちゃ駄目だから………」

「まあ、だが自分の部屋に転移したんだろ、かなりの確率で現実にいたお前自信を吸収してしまった確率が高い」

「それって、私自信が向こうで生きている私を消しちゃったってこと?」

「そうとも言えない、そういう世界ができたといった方が正しい――――考えても仕方ない。答えなんてないからな」


  それからガリレはちょっと迷っているのか、口許に手をあて考え込んでから、目を見つめて言った。


「今度行くときはアランにはきちんと言っておけ。黙っていなくなるな」



 私はこの時、浮かれていた。

 もとの世界の私問題を思うと、頭がいたくなるが、ガリレの言う通り私には考えてもわからないだろう。

 それよりも重要なことは、現代日本で魔法が使えるということだ!


 異世界で死んで日本に転生した自分では魔法を使うことができず、どんなに頑張っても、運命を変えられなかった。


 でも転移魔法で日本に行った私は魔法が使えるのだ。

 魔法があれば、変えられる。きっと日本で続きを生きられる!


 私は、アランのところに行き、話をした。アランとは商会を立ち上げたばかりで、これからどうしたらいいのか、相談が必要だった。


「話はわかりました。アリスが向こうの世界で、運命を回避できるまで、向こうとこちらを行き来するということですね」

 アランは少し固い表情で頷く。今回、森に落ちたときアンダルシ王国では中々アランと出会えず、一年前にやっとで会えたのだ。


「あの、向こうの世界で続きを生きられるようになっても、こちらの世界にもどって来てくれますよね」

 まだまだよそよそしいが、前世同様信頼している。


「うん、勿論。転移魔法で行き来出来るよ。暫く落ち着かないけど、商売は手を抜かないから」


***************


 それから商会は軌道に乗り、アランが立派な青年に成長した頃、私は商会の権利を全部アランに譲渡した。


 アランはそんな必要はないと言ったが、万が一と言うことがある。


 運命の日、異世界に落とされそうな事になっても、その前に自分で転移魔法を使えばいいのだ。

 そうすれば目覚めた時には新たな森……。なんて事はないはず。



「アラン、じゃあ行ってくるね。絶対に運命に勝つから」

 アランはニッコリと笑って抱き締めてくれた。

 こんなことをするアランは珍しい。

 どちらかというと、この世界のアランは、堅物のイメージだったのに、何だかくすぐったかったが、「絶対帰るから」とぎゅっと抱き締め返した。





 結局――――――――――。

 私はアランとの約束を守れなかった。

 魔法が使えても、運命には勝てず、またしても桜舞い散る中、青い光に包まれて落ちてしまったのだ―――――――。



 目が覚めるとそこは見知った森の中で、絶望して泣いた。

 もしかして、と思いアンダルシ王国の商会のあった場所に行ったが、何もなかった。


 運命に負けたことも、悲しかったが、それ以上に、もとのアンダルシ王国に帰れなかったことが悲しかった。

 以前のアランにもガリレにも、町のみんなにももう会えないのだ。


 私は馬鹿だ。大馬鹿だ。


 一番大切なものが何かわかっていなかった。


お疲れ様です。


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