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魔界食肉日和  作者: トネリコ
魔界編
26/62

26、魔界のイケメン

 


 そういやふと思わないだろうか

 トカゲは何で雌にばっか優しいんだ?と

 もしやレズかこいつ?と


 答えを言ってやろう

 魔界の顔面偏差値が高い奴はな


「大抵クズいんだよ」

「えー何か言ったー? 嫉妬してんの?」

「お前みたいなクズがモテてることにな! おい目を覚ませ!」

「はあ? ブスが話し掛けてんじゃねーよ!」


 折角忠告してやったのに、親の敵の如く睨まれたクッソ

 もう知らねえ!ダメンズに引っ掛かってろばーかばーか!


 般若顔の美女の後ろでは、げらげらと顔だけ男が笑っている。


 おい、これみよがしに血を吸ってんじゃねー!

 ことちら仕事中だぞ! 他所でやれや他所で!


「仕事の邪魔だっつって司書長に言いつけてやるかんな」

「えー、人のいない薄暗い場所って中々ないんだって」

「そうよ、あんたがどっか行きなさいよ」

「だからこちとら仕事だっつってんだろうが!」


 クッソふぁいあーさしてえ!

 無属性で魔法使えねえがなクッソ!


 今こそ我に力を!

 禁書投げてやろうか!

 司書長に禁止されたが!!


 目の前では金髪赤目の吸血鬼がメイドさんといちゃこらしている。


 吸血鬼のキメ顔うぜえ

 種族的にもエリートが多い吸血鬼らしく能力値も高いが、一つ言う。


 顔だけで中身はどっろどろのクズである。

 見てればわかる。


「ねー、いつ結婚してくれんのー? もうお家まで買ってるのに」

「もう少しだって、俺がお前を養えるくらい出世したらって言っただろ?」

「でももう待てないよ、私あなたとなら苦労してもいいからさ、ね、結婚…」


 このメイドさんも長く付き合った方だが、最近来るたびにこの話題である。

 可愛いおねだりだが、そろそろあれかと吸血鬼を眺めると、案の定吸血鬼が冷めた顔をしていた。


 いや、お前が冷めた顔すんなよマジで


「あー、面倒臭え、もういいや」

「え…」


 がぶりと勢い良く首筋に噛み付いた吸血鬼


 私はいつものことなのでしらーっと見守る。


 いつもの吸い方とは違うと分かったのだろう、メイドは慌てるも時既に遅し


 爛々と薄明かりの中で赤目が発光する。

 どさりとメイドの体が崩れ落ちた。


「最後にいい夢見させてやるとか俺ってやさしー」

「一ミリも無かったぞクズよ。っつーか殺してねーだろーな、汚すなよ」

「注意されてからはしてないって」


 へらへらーっとしている。

 金も血も時間も貢がせるだけ貢がせて、面倒になった女はこうやって記憶ごと消してしまうのだ。

 上手いこと関係を隠させて付き合うのもこいつの手である。


 最初の頃は普通に殺ってたからな

 マジクズイわ


 殺人現場見た時も一回殺られたしな

 お前が仕事場に来て勝手に殺り出しただけなのにな

 思い出してもマジクズだわ

 

「終わったならさっさとどっか行け」

「えー、足りないし一口くんない?」

「散れクズ。いつもより吸ってるぐらいだろーが」


 しっしと脚立の上に立って禁書を仕舞っているとおさげを引っ張られた。

 血に濡れた牙が眼前で光る。


 羽無しの癖に飛ぶんじゃねーよ

 赤目が光り、頭痛がした


「いいでしょ」

「…」


 首筋に生暖かい息が掛かった所で、手に持っていた禁書を振り下ろす。


「あっぶな、トカゲ酷いなあ」

「正当防衛だっつーの。催眠掛けて問答無用の強血野郎がうっせえ」


 違和感にもごもごと口元を動かす。

 雑魚にとっちゃあ格上の吸血鬼の本気催眠は死ぬ気でないと解けない。


 お前のせいで無駄にショック死療法してんだぞこっちは

 無痛だが以前人体実験されてたから身体に覚え込ませてるのである。はぁ、思い出したくねー


 噛み切った舌がようやく完全に繋がったが、口内には短時間で溢れた血がいっぱいだった。

 匂いを嗅ぎとった吸血鬼がきらきらと此方を眺める。


 うっぜー、誰がやるかばーか


 無理に飲み込む。

 うっぷ、ワニとか吸血野郎と違ってこちとら味覚は正常なのだ。


 うえー、まじきもちわりー


「そんな顔するならくれてもいいのに」

「うっぜ、さっさとしね」

「あー、いい匂い」

「ガチきもいわ」

 

 口臭を嗅ぐという変態行為にガチ引きしていると、メイドさんがふらふらと立ち上がった。

 目が虚ろでまだぼんやりしている。

 

「アフターフォローぐらいはちゃんとしろよ」

「はいはい、注意されてからはちゃんとしてるって」

「行為自体を止めねー時点でアレだがな。しっし、さっさとどっか行け、二度と来んな」

「また来るわー、次は金髪ボインの子なんだ」

「おま、何で我が癒しの子ばっか狙うんだよクッソ!!!」


 高笑いに禁書を投げつけるが無情にもドアが閉じてしまった。

 あいつ無駄に有言実行だから近い内に此処で対面してしまう日も近いかもしれない。

 そして最早ルーティンである、天使が般若と化して我が幻想をぶち壊し、最終ゾンビと化して私が心の内で涙目になるのも

 

「あー今度の癒しは戦乙女ヴァルキリーの中から探すかなー。マジイケメンとかクソだわ」


 な、クズだろ?

 魔界のイケメンってこんな奴等ばっかだぜ?







ちなみに魔王様は色々超越するくらいのご尊顔らしい。


◆吸血鬼◆

 トカゲを殺った時に味わった血が気に入ったご様子

 何でもぴちぴち舌で跳ねてイキがいい新触感らしい。クセになるとのこと

 しかし三度目の機会は貰えてないご様子

 二度目に無理矢理貰った時、こりゃダメだと思わせる対応をされたらしい

 トカゲの興味を引くやり方が可愛く言えば天邪鬼、普通に言えばゲスイ

 まあ、興味を引く以外にも日々の食事やら貢がせるのは楽したいからでもあって、それだけじゃないのだが

 トカゲの天使(癒し)ちゃんを落とすのは、彼の中でもゲームになっているようだ

 ゲームが始まったのは、偶々引っ掛けた相手がトカゲの癒しちゃんだったため、2回目の吸血以降何をやっても冷徹に無視していたトカゲがオーバーリアクションをしたせいである

 ちなみに相手はめー子

 めー子本人は催眠で無理矢理連れられたせいで覚えていない。以降吸血鬼はめー子に触れるな宣言を出されている。代わりに吸血鬼がトカゲに話し掛けたら反応しろよと約束させられた。

 バトルロワイヤルだとワニが勝つが、逃げの一手を打たれると逃げられる力関係

トカゲ「クズにクズをぶつけて両方消滅させてえ」

 叶わぬ夢であった


次話「赤い花」500字~♪

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