20、めー子は見た
めー子の前をふんふんと鼻唄を歌いながらトカゲが通り過ぎた。
どうやら庭に出るようだ。
声を掛けようとした瞬間どこからともなくトカゲの傍へとのっそりと影が現れる。
鋼の様な鱗に覆われた巨体と威圧感、切込隊長のワニである。
思わずぴっと背を伸ばしてワニ達に見つからぬようぷるぷると壁に張り付いて隠れた。
逆鱗に触れなければ無闇矢鱈には食わないと知っていても、やはり急だと怖いのだ。
しかもこの前トカゲに腕をふにふにされてから、時折視線を感じるのである。
トカゲに変にちょっかいを掛けていた大鷲くんも行方不明になったので、慎重を期すべきである。
ひとまず痩せようかなぁ
少ししてもう行っちゃったかなと覗けば、どうやら庭でランチをするようであった。
これは時間が掛かりそうである。
トカゲに話し掛けるのを諦めようかとぴるぴる耳を動かしていると、ワニと目があった。
めえっ!?と思わず隠れるが、トカゲの呼び声によってワニの視線が逸れた。
トカゲはどうやら弁当を自慢していたのに、ワニが無視したので怒っているらしい。
これでも固有魔法を発動していれば魔王城内でも宰相や侍女長位にしか見付かったことなど無かったのに、明らかに絡んだ視線に冷や汗が羊毛を膨らませる。
少しして主にトカゲが挑んでいた喧嘩が発展した。
どうやらトカゲのランチをワニが全部食べたようだ。
ぼこすかワニは殴られている。
トカゲの腹が悲しそうに鳴っている。
あ、トカちゃんの腕が飛んだ
ワニはもぐもぐと食べているが、対するトカゲはお腹が空きすぎて寝転がり一歩も動けないようである。
これは流石に可哀想だと思っていると、近くで舌打ちがした。
固有魔法で姿と気配を消していたのに、また見破られたのかと驚いてしまう。
しかし、どうやら見つかっていたわけではなさそうだ。
白衣の豹獣人はガジガジと鋭い爪を噛みながら恨みがましくトカゲ達を見ている。
毒、もう少しという単語が聞こえたので思わずまじまじと眺めていると豹獣人が踵を返した。
凄まじい速さで走り出す。
ぽくぽくと音を出さぬように魔法で音を消しながら、必死で後を追いかけた。
途中見失ったが、糸を咄嗟に付着させていたのでそれを辿って隠し部屋的な場所を見つける。
ぼこぼことした泡の中に家守族やら蛇族の死体が多く浮かんでいた。
慌てて逃げ出す。
元居た庭に戻れば、どうやら奢ってもらったらしいトカゲと鉢合わせした。
手にいっぱい持った綿あめやらをもらう。
葉っぱ味とかないかなぁ
似てる、かわいい、写メりたいとお世辞を言ってくれるトカゲを心配して豹獣人のことを言おうとしたが、ふと思いつく。
トカゲと別れた後はいつもならすぐ気配を消してワニから逃げ出していたが、今日はさっき見たことを伝えてみた。
後日、それ以来あの豹獣人を見ていない。
隠し部屋もただの壁になっていた。
お陰様でワニから一応使える認定を受けたのか、あの羊毛が膨らむ様な視線が無くなった。
しかしストレス解放に浮かれて甘いハーブをいっぱい食べ過ぎたため太ってしまう。
近頃の悩みはトカゲが益々ふにふにするようになったので、ワニからの視線が復活しないかということである。
メふぅ、やっぱりダイエットしようかなぁ
恋愛的なものを見ると思った? わいも何でこんなの見ちゃってるのか分からない(初期の構想が跡形もない恐怖
いつの間にかスプラッターやクズは感染するのか(リアル筆者恐怖)
めー子のクズ度はかなり低い方。いい子だが何だかんだ強かな感じ
白いふわもこの毛並みにくるんとした角、ぽくぽく足、そう、二足歩行の羊ちゃん
めー子は完全羊形態のデフォルメされた感じ
身長伸びないかなーと思ってる
ゴシップネタとかちょっと好きなミーハーな子。後を付けたのは友達思いやら好奇心やらが理由
ただの一般羊に思えるが、やはり魔王城に務めるだけあってかなりのハイスペック
一度魔法で気配を消せばほぼ誰も見つけられない、めー子固有の魔法(超つえー
暗殺者向きだが、性格的に不向きで侍女に
ワニには見つかったが、この力のおかげで草食の獣人でもやっていけてるようだ
ちなみにトカゲの弁当にその速さを活かして隙を見て毒を入れた豹獣人
不老不死研究を続ける中で、雑魚で近場にいたトカゲを使うかと画策
普段ランチは二人別々に取っていたので、ワニが現れるのは想定外だった
ちなみにトカゲ達は知らないことだが、龍族は番相手の死が近いと虫の知らせ的なのをキャッチ出来る
今回もそれ(何で死ぬかは分からないが)
ワニ曰く「結構鳴ってるぜー」だそう
ワニのストーカーも意味あってなようだ。トカゲは知ってもうざがるだろうが
知った場合の会話
トカゲ「言ってみ? ほぼワニ関連だろ?」
ワニ「おー、そうとも言うなー」
やはり腕を食べた後にも鳴るらしい
次回「酸性雨」お楽しみに〜




