17、飛行
「飛びてえ、この空を羽ばたきてえ」
「トカゲも飛びたいとか思うんだなー」
「お前が追えなさそうだからな」
「結婚するか?」
「話の流れを追え」
ごろーんと魔王城の庭に寝っ転がって空を見る。
魔界の空はでろでろしたイメージだが、雲もあるし結構色合いも澄んでいる。
紫ベースだがな
朝から夜まで紫の色の変化なのだ。
気に入ってはいるが、人間界の空の写真の様な青色もみてみたい気もする。、
「お、あれワニの親じゃね」
「仕事忙しーとかで流石にいねーなー」
「そういや長だったな。クソ、坊ちゃんかよ」
「結婚するかー?」
「タイプじゃねえ」
「ちぇー」
おー、ハーピー達がきゃっきゃうふふと飛んでいる。
いいわー、目の保養だわー
あ、食われた
マジ魔界って情緒ねえわー
「おいワニ吐き出すよう怒れよ、丸呑みだし間に合うだろ」
「飯吐き出させるとか、トカゲ流石鬼だな」
「褒めんなよ」
耳を塞ぐ。
ワニが吠えた。
鼓膜破れた。
飛んでた空飛ぶヘビが落ちた。
よかった、まだワニに向きを配慮する思考があって
こっち向いてたら脳みそが沸騰して死んでたわ
「お、トカゲー、ハーピーが手を振ってるぜー」
「ほんとだ、振るか」
ワニが手を振らないので、遠目だが代わりに手を振り返した。
どうせなら鶴の恩返し的に何か恩を返してほしい
私が手を振るとハーピー達は手を振るのをあからさまに止めた。
おい、コイツなんてお前らのこと飯って言ってたぞ。クッソ、ハーピーめ雑魚扱いしやがって!
「クッソ、現実なんてクッソ」
「トカゲー、モテるって言ったろー?」
「鳥目だからに違いねー!」
寝てるヘビを起こしてもっかい食わせてやろうかとか思っていると、何を勘違いしたのかワニに肩車された。
高い! こえーわ! 下ろせ!
「トカゲ妬けるからあんまヘビ見んなってー。飛べねーけど跳べるぞー?」
「ちげーわ! てか、ちょ、やめっっ!」
ワニが渾身の力で飛び上がる。
一瞬でハーピー達の真上にいる。
おえっ、重力がやべ…おおぇっ
舌噛んだし内臓マジ出そう
「トカゲー、景色どうだー?」
「一声掛けろ!! あと対空時間を延ばせな」
言うだけ言って意識が落ちた。
体も落下している。
俗に言う失神である。
もうロケットスタートとスカイダイビングとか無理だと思うんだわー
翌日、対空時間をほんとに延ばし中らしいワニのせいで地面が揺れてうるさいと仲間に怒られた。
果てしなく理不尽だと思った。
その後のハーピー達は運悪くまた食われたらしい。
ざまあと思った。




