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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
番外編3

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フロノス・マラナラの一日

 フロノス・マラナラはこのカインズ王国の英雄であるディグ・マラナラの弟子にして養女である。というのは誰もが知る話である。

 彼女は魔法錬の一角に住んでいる。それはヴァンも同様のことである。

 フロノスの朝は、まず、師であるディグ・マラナラと弟弟子であるヴァンのことを起こすことから始まる。基本的にディグはいくら英雄と呼ばれていようとも、多くの人々にあこがれられていようとも、その本性は堕落している一面がある。

 それで基本的に朝は予定通りには起きない。

 ヴァンに関して言えばただ単に朝早起きするのが得意なわけではなく、寝起きが悪い。実家暮らしの時も母親にたたき起こされていたのだから、それは昔からだ。

 まず、ヴァンの元へ向かう。ヴァンに与えられた一室へ向かい、幸せそうに眠っているヴァンをたたき起こす。

 「んー……朝?」

 何度も起きなさいと口にすれば、ヴァンは寝ぼけたように口を開いた。そんなヴァンを再度たたき起こして、目を覚まさせると、次にディグの元へと向かう。

 ディグもぐっすり夢の世界に旅立っていたが、それをたたき起こす。

 正直、フロノスはディグとヴァンに畏怖の念は持っている。若くして英雄になった偉大なる師と、自分より年下ながら数多の魔法を使いこなし、大量の召喚獣と契約している弟弟子。その二人に驚きと恐怖を抱くのは当然である。が、普段の二人の様子を見ているが故に、フロノスはこのような態度を二人にすることができる。

 天才であるがためにどこかずれている。そのことを理解しているからこそ、フロノスは自分がしっかりしなければと余計に思う。

 フロノスにはまだ契約召喚獣はいない。貴族でもなく、平民の出であるフロノスにとって召喚獣との契約は難しい。ヴァンはさらっと大量の召喚獣と契約しているが…、それは例外である。第一、魔力の関係もあり、大量の召喚獣と契約は普通できない。第一ヴァン以外がやろうとしても、対価である魔力が足りないだろう。

 ヴァンは規格外である。

 フロノスの師であるディグも三匹も契約しているのもおかしい。

 そんな二人に挟まれているフロノスだが、身はわきまえている。自分の才能がそこまでないことを知っている。だからこそ、いつかディグが許可をしたとき、たった一匹の、自分の相棒と契約できるように勉強をしている。

 ヴァンのように、適当にやっては召喚も契約もできない。

 だからフロノスは毎日少しでも召喚獣についての本を読むようにしている。フロノスの一日は日によってやることは基本的にバラバラである。同じような日々の繰り返しというのはありえない。

 フロノスが召喚獣についての本を読んでいるとき、目の前でヴァンも眠たそうにしながら本を読んでいた。知識を蓄えることは重要である。知識があるのとないのとでは、選択の幅も広がり、変わっていくことであろう。

 ヴァンが読んでいる本のジャンルはいつもバラバラで、ディグの研究室の中にある本を適当に読んでいる。ディグからナディアのそばにいたいのならばあらゆる知識を身に着けるべきだという言葉を聞いたからだ。

 お昼時になると、フロノスが作った料理を食べるか、王宮料理人が作ったものを持ってきてもらう。この日はフロノスが料理を作った。ディグは料理ができるがしないし、ヴァンは料理はそもそもできない。

 それからお昼ご飯が終わったころ、キリマが特攻をしかけてきた。

 「ディグ様ぁああああ! 私と結婚してくださああああああああああああああい!」

 大体叫び声を上げてキリマはディグにまとわりつく。

 「却下」

 ディグの元へキリマが特攻するのは、最近ではいつものことである。フロノスもヴァンも特に反応は見せない。黙々と自分のやりたいことをやる。ディグに指示されてやることもあるが、自主的な学びが多い。

 ディグとキリマを横目に、フロノスは魔法錬から出る。そして行うことは剣術の鍛錬である。フロノスは魔法師であるが、武器の適正は高いほうだ。魔法面ではヴァンには劣るが、剣術といった面ではフロノスのほうが勝る。

 全体的な強さでいえば、勝てはしない。だけれども、ディグ・マラナラの一番弟子として、ヴァンの姉弟子として強くありたいとフロノスは思っている。だからこそ、毎日、毎日ただただ誰に言われるまでもなく続ける。

 フロノスには魔法を使えるだけの魔力という才能はあったが、それだけである。上にも下にも天才がいるがために、慢心しない。いや、出来ない。だからこそ、自分を磨くといった点にフロノスは必死である。

 また、最近では魔法具づくりにもフロノスは関心を持っている。ヴァンがナディアへの誕生日プレゼントとして作成した魔法具に感化されたのだ。そして、自分も作りたいと思った。理由なんてそれだけで、作ってみようと魔法具について学んでいる最中である。

 時間を作って道具に魔法式を刻む練習をしているが、中々難しい。

 ナディアのためにという思いで、あんな規格外の魔法具を作るヴァンのことをフロノスはやはりおかしいと思った。

 何度も何度も試すが、道具が壊れたり、発動しなかったり、誤作動がおきたり、魔法具作りの初心者がやらかすことをフロノスはやらかしていた。おかげさまで壊れた道具や失敗作がディグの研究室にどんどん増えている。

 全然うまくいかないが、諦めることなく作ろうと必死である。魔法具の本も読みながら、きっちり勉強をして作り出そうとしているため、そのうち一つぐらい成功品が完成するであろう。

 そうしているうちに時間は過ぎていき、あっという間に夜になる。

 夜ご飯を食べ、魔法の練習や魔法の勉強をし、眠りにつくのである。





 ---フロノス・マラナラの一日

 (毎日コツコツと彼女はたくさんのことを学んでいる)




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