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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第四章 ナディア様の誕生日

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87.パーティーのあとの会話について

半分ぐらい書いたらなんかデータが消えて書き直しました。消えるとへこみますね。

 ナディアの誕生日パーティーが終わった。

 パーティーが終わった後、ヴァンは誕生日プレゼントを渡すためにナディアの元を訪れていた。

 「ヴァン様、お話とは?」

 パーティーに参加した恰好のままのナディアはそう問いかける。

 ヴァンは目の前に美しく着飾った好きな少女がいることに、相変わらず挙動不審である。もっとも二人っきりというわけではない。周りにはナディア付きの侍女たちが二人の様子を伺っている。

 「あ、あの、ナディア様、誕生日プレゼントです!」

 普段の様子からは考えられないような緊張した様子で、ヴァンはそう告げると、小包を差し出した。

 「まぁ」

 ナディアはうれしそうに声を上げてそれを受け取る。

 もしかして最近挙動不審だったのは、この誕生日プレゼントが理由なのかしら? などと考えながらヴァンを見据える。

 ヴァンはナディアの反応を見ている。喜んでくれるだろうか? それともがっかりされるだろうか? とでもいう風にうずうずしており、まるで犬か何かのようだ。

 そんなヴァンを見つめてナディアは頬が緩むのを止められなかった。

 こちらの反応をうかがっているヴァンを前に、小包をあける。

 中から出てきたガラス細工のネックレスに、ナディアは目を輝かせた。

 「かわいい」

 声をあげれば、ヴァンはキラキラした目でナディアを見る。

 ナディアの反応が嬉しかったらしい。

 「それ、俺が作ったんです」

 「まぁ、ヴァン様が?」

 ヴァンの言葉に、ナディアの目が見開かれる。商売品にもできそうな出来のガラス細工のネックレスをヴァンが作ったことに驚いたのだ。

 「はい! ナディア様、それに魔力をこめるか、血をたらすかしてください!」

 「え?」

 「それ、俺が作った魔法具なんです。どちらかしたらその魔法具、ナディア様以外使えなくなります」

 さらっと言われた魔法具だという言葉にナディアが驚いている。が、それはおかまいなしでナディアが行動するのをヴァンは待っている。そのため、ナディアはそれに魔力を込めた。

 そうすれば、そのネックレスは一瞬光り輝いた。

 「これで、ナディア様以外使えないはずです!」

 「………ヴァン様、これ私のためにわざわざ作ってくださったのですか?」

 「はい。ナディア様が危険な目に合うのいやなんで」

 笑顔で頷かれて、驚きもあったけれどもうれしそうに笑った。

 ヴァンはナディアの事を十分に守っている。ヴァンが召喚獣という存在に、ナディアを守るように命令を下していたからこそ、王宮で生きてこれた。召喚獣たちがいたからこそ、ナディアはなんだってできた。安心して過ごすことができた。

 それが事実。

 それなのに、もっとヴァンはナディアを守ろうとしてくれているのだ。

 「ヴァン様、ありがとうございます」

 ナディアに喜んでもらいたい、そんな一心で作った魔法具。それを渡してナディアが喜んでくれたから、ヴァンは満足げに笑った。

 「ナディア様が喜んでくれてよかった」

 「あの、ヴァン様」

 自分が作ったものでナディアが喜んでくれたと嬉しくてたまらないらしいヴァンにナディアが声をかけた。

 「フェールお姉様も、キリマお姉様も、ヴァン様の事ヴァンとお呼びしていますわ」

 そういうナディアに、何が言いたいのだろうとでもいう風にヴァンは首をかしげている。

 「私も、ヴァン様をヴァンとお呼びしてもいいでしょうか?」

 いうなればナディアは嫌だったのだ。自分の二人の姉がヴァンの事をヴァンと呼び捨てにしているのに、自分は様付で呼んでいたのが。ナディアも、ヴァンの事をヴァンと呼びたかったのだ。

 「あ、はい、もちろん!」

 ナディアの申し出に、ヴァンは驚いた顔をして、その後笑顔で頷いた。

 「それで、ヴァン様……いえ、ヴァン」

 いつものように様をつけてしまって、呼び捨てになおす。

 「私の事も、その、公の場ではない場所では呼び捨てにしてよろしいですわよ」

 「へ?」

 「あと、公の場以外では敬語ではなくてもかまいませんわ」

 ヴァンと出会って、そしてヴァンと過ごして。

 ヴァンの事を少なからずナディア自身、特別に思っていると理解した。王である父親がヴァンを国にとどめさせるために、ナディアを嫁がせるというのをうれしいと思うぐらいには特別に思っている。

 二人の姉が自分よりもヴァンと仲良くしているのが、快く思わないぐらいには特別に思っている。

 だからこその言葉。

 「え、でも……」

 「だめでしょうか? 私は、ヴァンともっと仲良くなりたいですわ。距離を感じるので、ナディアと呼んでほしいのです。そしてヴァンらしい言葉で私と話してほしいのです」

 ヴァンがナディアに好意を抱いていることをナディアは知っている。知ったうえで、お願いをした。

 ナディアが大好きでたまらないヴァンがナディアのお願いに対し断るはずもない。

 「はい……じゃなくて、わ、わかった」

 「ふふ、うれしいですわ。ヴァン、ナディアと呼んでくださいませ」

 戸惑いながらもナディアのお願いを聞いてくれるヴァンを見ていたら、無性に自分の名を呼んでほしくなった。

 「ナ、ナディア」

 「もう一度」

 「ナディア」

 「ふふふ」

 呼び捨てにすることに、顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうなヴァンを見て、ナディアは嬉しそうに笑った。





 ―――パーティーのあとの会話について

 (そうして二人の距離は縮まっていくのでした)




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