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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第四章 ナディア様の誕生日

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86.ナディア様の誕生日パーティーについて 3

 ヴァンはディグに連れられて、ナディアたち王族の前に立つ。

 目の前に国王陛下並びに、レイアード、ライナスもいるというのに、ヴァンの視線はナディアにばかり向いている。

 ナディアの事しか見ていない。

 ナディアはヴァンにじっと見つめられ、恥ずかしくなったからか視線を外す。

 ナディアに見惚れているヴァンと、ヴァンに見つめられて恥ずかしそうなナディア。

 そんな二人の様子にディグは呆れた様子だ。

 「……ナディア様、誕生日おめでとうございます」

 「おめでとうございます」

 ディグの言葉に続いてフロノスも告げる。二人がナディアに祝辞を告げれば、ヴァンもあわてたように我に返って声をあげる。

 「ナ、ナディア様、お誕生日おめでとうございます」

 目の前に着飾ったナディアが存在することで、どうしようもなく緊張しているらしかった。

 他の人間がいくら着飾ろうとも気にしないだろうに、ナディアを前にするとこれである。いくらなんでもわかりやすすぎる。

 ヴァンがナディアと親しいという噂はあっても、実際はどうであるかを知らない貴族たちであってもすぐにヴァンの思いがわかってしまうことであろう。

 事実、周りにいる貴族たちは先ほどまで平然としていた英雄候補の少年がナディアを前にして挙動不審になっていることに対してささやき合っている。

 「ありがとうございますわ。ヴァン様」

 そしてナディアもナディアで、王族としての仮面はかぶったままだが、それでもヴァンに祝われたことがうれしいといった笑みを浮かべている。

 「ヴァンは今日がはじめてのパーティーだろう? もっと交流関係を広げにいかなくてもいいのか?」

 シスコンをすねらせているレイアードは、目の前でかわいい妹がヴァンと仲良くしていることが嫌なのかそんなことを言い出している。

 もっともそんな残念なシスコン発言は、近くにいるものたちにしか聞こえていない。

 親しいものたち以外の前ではレイアードは完全無欠な完璧な王太子である。そもそも、レイアードはかわいがっている妹たちの前でも「かっこいいお兄様でいたい」という思いから残念な部分は隠し通している。

 「まぁまぁ、ヴァンもナディアと話したいこともあるだろう。ナディアの誕生日という祝うべき日なのだから」

 レイアードの心情に呆れながらも、ヴァンが義弟になることに対して特に反対もないライナスは笑ってそう告げる。その言葉に、シードルとレイアードが顔をゆがめてライナスを見るが、ライナスは知らん顔である。

 「あら、そちらがディグ様のお弟子様ですのね。私にも紹介していただけますか? 陛下」

 和やかな空間の中にひとつの声が響く。

 それは、フェールの母親であるアンの声である。

 アンは十四歳であるフェールを二十歳の時に産み落とした女性で、まだ今年三十四歳になる若い女性だ。母親になった今も、一人の女性として生き続けている彼女は、美しく着飾っている。

 水色の髪を腰まで伸ばし、大きな胸が強調される赤いドレスを身にまとい、彼女は優雅にそこに存在している。

 その後ろで、フェールは一瞬困ったような表情を浮かべた。

 (お母様ってば、ヴァンが折角ナディアと会話を交わして楽しそうなのに、なんで間に入っていくのかしら。困ったものだわ)

 ナディアとヴァンと交流する前なら自分の母親がこういうことをしても特に気にしていなかったフェールであるが、ヴァンが幸せそうにナディアと過ごすのを見たいと思っているフェールは母親の態度に眉をひそめた。

 「ああ、そうだな。ヴァン、これは私の妃であるアンだ。フェールの母親にあたる」

 「フェール様のお母様ですか、よろしくお願いします」

 ちらりと視線を向けてヴァンはただそう告げる。特に興味がないらしい。

 アンは国王の妃である自分に興味がなさそうなヴァンに眉をひそめた。自分が主役でありたいと望む女性である。そして生粋の貴族である。ヴァンに対して「これだから平民は…」といった見下すような視線を向けている。

 「……お母様、あちらにおじい様がいらっしゃいますわ。積もる話もあるでしょう?」

 ナディアとヴァンの邪魔をしたくないフェールはそういってアンの気をそらす。自分の父親を目にとめたアンは「失礼しますわ」といってそちらに向かう。

 「じゃあ、ヴァン、はじめてのパーティー楽しみなさい」

 フェールも一言、ヴァンに告げて、そのままアンの後を追っていった。

 それから、ヴァンはナディアたち王族としばらくの間会話を交わした。

 ヴァンがナディアに向ける笑顔は、ほかの人に向けているときとは違い、見ているだけでヴァンの気持ちは丸わかりである。

 そしてナディアもその様子を嫌がっていないことが見てとれ、周りの貴族たちはまたささやき合っている。

 はじめてのパーティーで、ナディアとヴァンの仲の良さは噂になるのだった。





 ―――ナディア様の誕生日パーティーについて 3

 (誕生日パーティーで、二人は仲良く会話を交わす)




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