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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第四章 ナディア様の誕生日

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85.ナディア様の誕生日パーティーについて 2

 「あれが……」

 「あんな少年が《竜殺し(ドラゴンキラー)》なのか?」

 「ほぉ、あの少年が」

 ナディアの誕生日会場であるお城のホールの中へと足を踏み入れた瞬間、ヴァンへ一斉に注目が集まった。

 もちろん、一緒にいる英雄、ディグ・マラナラにも注目はいっているが、ヴァンへの注目はその比ではない。

 それだけ平民から『火炎の魔法師』の弟子になり、召喚獣を従えているヴァンは注目を浴びる存在であった。

 「めっちゃ、見られてる」

 「当たり前だろうが。お前は注目の的だ」

 ヴァンがいやそうにつぶやいた言葉に、ディグはそんな風に返す。

 全くもってヴァンは自分がどれだけ注目されているかということを自覚していなかった。ディグやフロノスからしてみれば、自覚のなさすぎるヴァンには呆れたものである。

 「ヴァン、ナディア様と一緒にいたいならこういうパーティーもきちんとこなせるようにしなければならないのよ。その言葉遣い、周りに聞かれたら駄目よ」

 「はーい」

 フロノスの注意に、ヴァンは素直に返事を返す。

 周りの貴族たちはヴァンへの関心が尽きない。しかし、ヴァンの隣にディグ・マナラナがいるのもあってなかなか近づいてこれないようだ。

 そして、貴族たちがヴァンへと話しかけようかと思案している中で、会場の一角がざわめいた。

 主役であるナディアが、カインズ王国国王であるシードル・カインズと兄たちとともに入ってきたのだ。

 ヴァンはナディアのことをじっと見つめている。

 (ナディア様、きれい)

 ヴァンが考えていることなど、そういうことだけである。

 パーティーに初参加のヴァンは、こうしてパーティーのために着飾っているナディアをきちんと見るのははじめてであった。好きな女の子の着飾った姿に、ヴァンはぽーっとした表情である。

 そして、ナディアもまたヴァンに視線をちらりと向けていた。

 (ヴァン様、正装していると普段とは違った感じに見えますわね)

 こちらは正装しているヴァンを見てそんな感想を抱いているようだ。

 ナディアとヴァンの視線交差する。そんな見つめあっている二人に気づく人は気づくものだ。

 ナディアの二人の兄と、ナディアの父親ももちろん気づいている。

 「今日は、末姫であるナディアの誕生日を祝うためにこの場に集まってくれたことを――」

 シードルはナディアがヴァンを見つめていることに父親としての複雑な心境を感じながらも冷静さを保ち、祝辞を口にする。


 そしてパーティーは始まった。


 今回のパーティーの主役であるナディアの元には沢山の貴族たちがやってくる。

 シードルの二人の側妃たちはナディアのそばにシードル、レイアード、ライナスがいるためにおとなしくしているが、美しく着飾ったナディアのことを忌々しそうにみている。

 アンとキッコの隣には、フェール・カインズとキリマ・カインズも並んでいる。

 キリマは普段の暴走癖のある様子が嘘のように、立派な王女としてそこに存在している。

 母親が隣にいることもあって、フェールも、キリマ進んでナディアの傍にやってこようとはしない。

 そんな中で、ヴァンの元にもかわるがわる人がやってくる。

 今、貴族の相手をするという慣れない作業をするヴァンの元にやってきたのは、ヒィラセとクアンである。

 王宮魔法師の一人であるヒィラセは、実際の年の割には美しい見目を持ち合わせている。実年齢を知っているものさえも、その美しさを前に見惚れるものは多くいるものだ。

 ドレスを身にまとい、美しくそこにヒィラセは存在する。

 「ヴァン、これはクアンの師で、王宮魔法師のヒィラセだ」

 「ヴァンと申します。よろしくお願いします」

 ディグの紹介に、ヴァンはそんな風に返す。

 ナディアに以外興味のないヴァンは、美しい女性が目の前にいても特に関心はないようである。

 そんな自身に特に興味のなさそうな様子のヴァンに、ヒィラセは面白そうに笑っている。

 「ふふ、今日が社交界デビューなのでしょう? お姉さんがいろいろ教えてあげようか?」

 ヒィラセは反応を見るようにからかうように笑う。

 「お姉さんって、あんたばばぁだろうが」

 呆れたようにディグがぼそっと言えば、ヒィラセはディグの足をヒールの靴で踏んだ。

 「いっ」と小さく声を上げるディグを無視して、ヒィラセはヴァンの反応を見ている。

 「色々? 社交界の勉強になるなら学びたいですけど」

 ヴァンはヒィラセの言葉にそんな風に答えた。ちらちら視線はナディアのほうにむけられており、ヴァンはまったくもってヒィラセの美しさに惑わされる気配はない。

 美しく着飾っているナディア以外に関心が持てないらしいヴァンである。

 そんな様子にヒィラセは相変わらず面白そうに笑っている。

 (ディグみたいに女遊びもしなさそうだし、ハニートラップにはかかる気配なさそうね。それにしてもどこからどうみても普通の少年なのに、召喚獣を従えているなんて、面白い)

 ヴァンのことを改めてみて、ヒィラセはヴァンへの興味がわいて仕方がないらしい。

 「おい、ヴァン、フロノス。ナディア様のところに挨拶に行くぞ」

 ヒィラセが興味津々といった様子でヴァンにまた話しかけようとしたとき、ディグが口を開いた。

 そして「ヴァンと話したいならまたあとでな」とディグはヒィラセに言うと、ヴァンとフロノスを連れてナディアの元へと向かうのであった。




 ―――ナディア様の誕生日パーティーについて 2

 (誕生日パーティーの中で、ヴァンはナディアにずっと見惚れている)




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