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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
番外編2

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フロノス・マラナラの観察記 1

 「ディグ様、ディグ様ぁああああ」

 「……また、来たのか」

 フロノス・マラナラは目の前の光景を前に、思わず笑いそうになった。

 目の前にはこの国の第二王女であるキリマ・カインズ様が、ディグ様にまとわりついている。

 茶色の髪を肩まで伸ばしたかわいらしい少女。キリマ付きの侍女たちはディグに飛びついているのを見てほほえましそうに見ている。キリマの暴走になれているのだろう。

 キリマ・カインズがディグの元へ突撃するようになったのは、ヴァンがディグとキリマを引き合わせたからである。元々ディグはキリマとはあった事はあったものの、個人的に交流したことはほとんどなかった。

 しかしだ、今回ヴァンがなぜか第一王女であるフェールと、第二王女であるキリマとまで仲良くなり、キリマから頼まれたからと引き合わせたのである。

 その結果がこれである。

 (まさか、キリマ様がこんな方だったなんて。普段の姿なんて典型的なお姫様を体現したような方なのに。ディグ様に惚れているなんて)

 フロノスは笑うのをこらえながら、嬉しそうに笑うキリマと対応に困っているディグを見る。

 (ディグ様も、邪険にしにくいでしょうし。第一、キリマ様は打算でも何もなく、本当にディグ様を好きみたいだし)

 フロノスにとって養父であるディグは憧れであり、血はつながっていないが家族としての情はある。感謝だってしている。そんな存在だ。

 女性にだらしない所や、自身の研究室でのだらしない態度を見たら尊敬の念も冷めそうになるが、それでも 目の前の養父の事をフロノスは尊敬している。

 (それにしても、ヴァンが来てから色々なことが変わるわ)

 三人の王女たちの交流は今までほとんどなかった。それが、仲良くなるだなんて、現実とは何が起こるかわからないものだとフロノスは思う。

 まだ、社交界デビューはしていないものの、ヴァンは注目の的だ。王族たちとの仲も良好だという噂も出回っている。

 ヴァンとつながりを持ちたいものや、興味を抱いているものは沢山いる事だろう。

 「ディグ様、私をお嫁さんにしてください!」

 「却下。俺は子供には興味ない」

 「じゃあ大人になったらしてください!」

 「却下。俺は結婚はする気はない」

 それにしてもキリマは押せ押せだと、そんな風にフロノスは思う。

 なんでもフロノスがキリマに聞いた所、ナチュラルにいちゃついているナディアとヴァンを見て「私もディグ様とっ」と夢を見て、「行動しないと変わらないもの」と開き直ったらしい。

 逆プロポーズを断られても、キリマはディグと会話が出来ることが余程嬉しいのかにこにこしている。

 フロノスはキリマと同じ年だが、キリマの事を素直に可愛いなぁと思った。なんというか、真っ直ぐに「ディグを大好き」というオーラを醸し出しているキリマは応援したくなるような何かがあったのだ。

 (キリマ様たちの侍女たちもキリマ様の事大好きなんだろうな)

 ちらりと侍女たちに視線を向けてそんなことを思う。

 (それにしてもこれだけ暴走している様子なのに、社交界の場では『お姫様』だから、お姫様って凄い)

 そんな風にも思う。

 パーティーなどで、フロノスもキリマの事を見たことが何度もある。その時の『お姫様』らしいキリマと今のキリマは全くつながらない。同じ顔の別人だとでも思ってしまいそうである。

 (フェール様は個人的にはあった事はないけれど、この前の件があって態度が軟化したって話だし…。ディグ様の話ではヴァンと仲良くしたい風だったみたいだ。

 キリマ様は完璧なお姫様を演じられるのに暴走癖があるのか、素はこんなにまっすぐだし。ディグ様に結婚してくださいって言えるなんて凄い度胸

 で、ナディア様はヴァンの思い人で現在一生懸命完璧なお姫様になろうとしている。ナディア様とヴァンって本当に仲良いのよね)

 フロノスは三人のお姫様について考える。

 (そしてその三人が仲良くなったのが、ヴァンの影響か。本当にヴァンの影響力って凄いな。ディグ様並だ)

 お姫様たちが仲良くなったのは、ヴァンがきっかけだ。フェールもキリマもヴァンに興味を持って、ナディアに歩み寄った。

 ヴァンは影響力を持っている。そしてこれからも、沢山影響力を周囲に与えていくだろう。

 (……師匠が《火炎の魔法師》で、弟弟子がヴァンとか、私はさまれてる……天才に。―――でも、まだまだヴァンには負けてあげない)

 意地があるから、フロノスはヴァンに勝ち続けている。

 姉弟子としてのプライドが、フロノスをもっと高みへと登らせようとしているのだ。

 (私も、またヴァンに影響されている。負けたくないからって理由で)

 《火炎の魔法師》の弟子として相応しく、そしてヴァンの姉弟子として相応しくありたい。それが、フロノスの願望だ。だからこそ、フロノスは止まらない。

 今だって、フロノスはキリマとディグの様子を見ながらも一人黙々と知識を深めているのであった。





 ―――フロノス・マラナラの観察記 1

 (フロノスは特にかかわる事はせずに、ディグとキリマの様子を観察している。さまざまな変化に思考をし続けながら)



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