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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第三章 王族たちとの交流

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61.第二王女様の暴露について 2

 「え?」

 キリマの叫ぶような告白に、ナディアは驚いたように声を上げた。

 ヴァンも、キリマがディグを好きだとかそういう想像はしていなかったため、目をぱちくりさせている。

 (キリマお姉様が、ディグ様の事を好き? キリマお姉様がヴァン様のもとに頻繁に訪れていたのはそのため? そっか、だからフェールお姉様のように言ってこなかったの)

 ナディアは、キリマをまじまじと見る。

 キリマの顔は真っ赤だ。いつもの澄ました顔が嘘のように年相応な態度である。

 (キリマお姉様の、こんな顔初めて見た。キリマお姉様はいつも冷静で、王族らしかった。でもそれは、私がキリマお姉様と距離を置いていたからなのかも)

 そう改めてナディアは感じた。

 ナディアはほかの王族たちから距離を置いていた。それは、母親が侍女で、目立った行為をしたら立場が悪くなると思って、自己防衛をしていたからだ。

 距離を置いていたからこそ、見えてこなかったキリマの内面。

 関わり合いが少なかったからこそ、キリマは他人に対する態度でしかナディアに接してこなかった。

 姉妹だというのに。

 母親が違っても父親は同じ存在だというのに。

 血のつながりがあろうとも、王族というものは家族との交流がほぼないのもよくある話である。

 カインズ王国の国王であるシードル・カインズは子供たちを大切にしている。それは幸いなことであろう。世の中には子供の事などどうでもよいという国王なんてよくいるものだ。

 しかし幾ら家族を大切にしている国王であろうとも、国王としてシードルは多忙である。子供たちの仲の良さまでは口出す余裕はなかったというべきか、そんなわけで親子仲は悪くないものの、子供間の仲――特に姉妹仲は上手くいっていなかった。王子二人は基本的に仲が良いし、妹たちの事を可愛がっているのでそちら方面から見れば仲の良い兄妹なのだが、姉妹たちだけでいえばそうとは言えない。

 「な、何よ、その反応はっ。私がディグ様を好きで何が悪いのよ! 私はディグ様が好きなの! 本当に大好きで! だからディグ様に近づきたいって思って。手段選べないじゃない。

 ディグ様は『英雄』だし、ディグ様に近づきたい人って凄くいるし! だからナディアがディグ様の弟子と仲良くしているって聞いた時、私でいいじゃないって思ったの」

 キリマはそういった。そして続けた。

 「ディグ様に近づきたいけど、そんな話しかけるのは恐れ多いし! でもでもディグ様に近づかないっていうのはなしで! だってディグ様の事好きなんだもん。近づきたいって思うのは当然じゃない!」

 キリマ、暴走したまま叫ぶように言った。

 「その気持ちわかります」

 唖然としているナディアの隣でそういったのはヴァンである。

 「俺も前はナディア様の事遠くで見ているだけでいいって思っていたけど、師匠に『ナディア様の隣で守れる』って言われて、なら守りたいって思いました。ナディア様の隣にこうしていれて、俺は嬉しい。キリマ様も、師匠にそういう気持ち感じているってことでしょう?」

 ヴァンの言った言葉に今度は顔を真っ赤にするのはナディアである。キリマもなんて素直に言うのだろうと驚いた顔だ。

 「……ま、まぁそうよ! それでね、私もうディグ様大好きで、毎日毎日ディグ様の事考えていて。ディグ様の事を考えるだけでもう、どうにかなっちゃいそうで! それで、ディグ様への溢れんばかりの私の感情をこうして言っているのは、その、ディグ様に近づく手助けしてほしくて」

 「うーん、師匠に会う手助けですか。師匠に会う場ぐらいは頑張れば……」

 「おおおおおぉおおおう。本当? 本当に!? 本当にディグ様に会わせてくれるの? 本当に? うおおおおおおおおおおおい! 嬉しい、超嬉しい。ありがとう。ヴァン!」

 キリマ、テンションが上がりすぎて色々言動がおかしい。王族としてどうかという言葉づかいである。

 「キ、キリマお姉様?」

 「なぁに? 愛しの妹よ!」

 「は、はい? なんですの、それ!?」

 「私とディグ様をつないでくれるナディアとヴァンはもう心の友! だからそんな風に言っているだけよ! ナディア、これから、是非とも仲良くしましょうね!」

 キリマ、ぶっちゃけすぎである。ナディアもヴァンも色々とついていけていない。

 しかしキリマはそんなナディアとヴァンの放心状態なんて知るかとばかりに、暴走したままである。

 「本当ありがとう! ディグ様にお会いできるなんて。ディグ様ディグ様ディグ様。ああ、ディグ様に会った時、どうしよう? 何を言おう、ディグ―――」

 と、暴走しっぱなしであったキリマは、腹心の侍女たちに止められてようやくおとなしくなるのであった。








 ―――第二王女様の暴露について 2

 (そんなわけで第二王女様は素を曝け出しているのでした)




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