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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
異界育ちの娘

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異界育ちの娘 7

 さて、ヴァンが領地の視察に向かってしまったというのもあり、子供達はナディアと共に領地でお留守番をしている。

 その領主の館の中を、ヴァンとナディアの一人娘であるディニー・サモナーは興味深そうに探検をしている。

 その領内には、何匹かの召喚獣も滞在している。召喚獣の多くは、領地を見て回ることになっているが、ヴァンが愛しいナディアに召喚獣をつけないわけがない。

 ナディアの傍には、数匹の召喚獣たちが控えている。

 この人が多くいるこの世界は、異界で生まれ育ったディニーにとっては、不思議で、よく分からない世界である。まるでおとぎの国に迷い込んでしまったような、そんな気持ちにさえなっている。

 そもそもの話、異界の方がこの世界にとっておとぎの国のような場所なのだが、ディニー・サモナーからしてみれば逆であった。

 この世界は不思議で、ディニーにとってはよく分からない世界。

 だけれどよく分からない世界とはいえ、この世界には、ディニーがずっと一緒にいた両親と、父親が契約をしている召喚獣たちがいる。それだけでもディニーにとってこの世界は、現実だと実感するものだった。

「なぁ、ディニーはずっと異界にいたのだろう? ならディニーも父上のように召喚獣と契約しているのか?」

「ううん。ナガラードお兄ちゃん、私は召喚獣とはまだ契約していないよ」

 ナガラードはディニーの言葉に、それはもう驚いた。あれだけ召喚獣達に対してキラキラした目を向けて、異界で育っていたディニーは召喚獣と契約しているのではないかと思っていたからである。

 ヴァン・サモナーは八歳の時には召喚獣と契約を交わし、魔法を使いこなしていた天才である。その天才の娘にして、異界で育ち続けたその存在ならば幼くても召喚獣たちと契約しているのではないかと思っていたからだ。

「私、お父さん程異常じゃないよ」

「……まぁ、父上は色々とおかしいからなぁ」

「うん。お父さんはおかしい。私、こっちの世界にはもしかしたらお父さんみたいなのが沢山いるんじゃないかって思ってたけど、違ったね」

「あんなのが大量にいたら大変だぞ? ディニーは父上の異名とかは知っているか?」

「ううん。知らない。たまにお母さんが話してくれたことぐらいしか、こっちでのお父さんたちのことは知らないよ。お父さんはこっちのこと、そんなに話さないし」

 ヴァンと言う存在は何処までもナディア・サモナーがいればそれでいいと思っている。ナディアさえいれば他の存在はいらないと思っている。だからこそ、ディニーはヴァンのことをそこまで把握できているわけではない。

 一緒に過ごしている父親としての姿は知っているが、こっちでのヴァンのことを知っているわけではない。

「父上は『破壊神』『召喚師』とか、そういう呼び名で呼ばれているな」

「お父さんは基本的に無害だから、そんな呼ばれるほどの事しないと思うのだけど」

「……昔、母上を攫って嫁にしようとした人がいたんだよ。それで父上がブチ切れて一国相手に大暴れしたらしい」

「あー……そんな馬鹿なことを? お母さんに手を出したらお父さんは、何するか分からないのに」

 ディニーは驚愕した。

 ヴァンは基本的に人に対して関心がないため、無害である。ただし、ヴァンが愛してやまない女性——ナディアに手を出せば何をするか分からない。

 それが一目瞭然なのに、手をだした存在がいるのかと驚いてしまった。

「父上と母上もそのころは有名ではなかったんだよ。父上は母上のことではないと動かなかったからというのもあるだろうけど、それもあって父上と母上に手を出さないようにしなければとそんな風な認識になったんだ」

「なるほど……」

 そんな会話をしながら仲良く、屋敷内を見て回る兄妹に屋敷に仕えるものたちは笑みを向けていた。長らく離れていた兄妹が仲よくしているというのは、彼らにとってみていて嬉しいことなのだろう。

 何より、不在だったこの屋敷の主がようやく戻ってきたことも喜ぶには十分なことである。

「ディニー、召喚獣と契約していないというならば、異界で生きていくのも大変だっただろう。いくら、父上がいるとはいえ」

「ううん。私にとって異界での生活は当たり前だったし、全くそんなことはなかったよ。それに、私は異界で生まれたから」

「異界で生まれたからって、なんなんだ?」

「異界で生まれた私は、異界の魔力に影響されて育ってるって、お母さんとお父さんが言ってた」

 ディニーはそんなことを告げる。ナガラードは、ディニーが何を言いたいのか、いまいち分からなかった。

 そんなナガラードにディニーは続ける。

「――私、異界に影響を受けたから、異界の召喚獣たちも、私に親近感を抱いてくれてたんだ。私に襲い掛かってくるものももちろんいたけど、仲よくしてくれた召喚獣達の方がずっと多かった。私にとって、皆は友達だよ」

 ディニーはそう言って笑った。




 ――異界育ちの娘 7

 (異界育ちの娘は、長兄と会話を交わす)



 

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