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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第十章 そして、その少年の名は——。

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213.VSシザス帝国について 6

12/31 四話目

「ナディア様も本当に強情なものだ」

 グラス・シザスは、宮殿内の自室でつぶやきを発する。

 美しい顔立ちは歪な笑みを零している。

 その頭の中では、ナディアをどのように組み伏せるかという下劣な事を考えていた。

 グラスはナディアの美しさを一目見て、自分のものにすると勝手に決めていた。まだ十二歳のナディアに対して、そんな下劣な感情を持ち合わせているグラス。グラスの年は、十六歳。四歳差と考えれば歳の差は特に問題はないものの、自分の事を拒否している相手を無理やり自分のものにするという事を考え、そのことを想像して笑みを零しているのだ。そういう視線がナディアにますます嫌われている原因だが、グラスは自分を嫌っている女性を懐柔したり、無理やり自分のものにする事に喜びを感じるような嫌な性格をしていた。

(それにしても、まだ十二歳だというのにあの美しさ。あと数年もすれば、益々美しくなるだろう。ああ、本当に美しく育っていくのが楽しみだ)

 グラスはもうカインズ王国やトゥルイヤ王国に勝ったつもりになっており、負けた時の事など考えていなかった。

 もう、ナディア・カインズが自分のものであると思っていた。

 ナディアを自分のものにして、ナディアの婚約者であるヴァンを処刑にする事は、グラスにとってはもう決定していた。

 ……そのナディアの婚約者が、猛スピードでこの帝都に向かっている事など、把握出来ていないグラスである。

(ナディア様はまだ十二歳で胸が小さいのだけがアレだが、そのうち胸も大きくなるだろう。十二歳から調教を続ければ、もう少し大きくなった時には俺好みの従順な存在になっているだろう)

 そんな事を考えながら舌なめずりをして、未来を思って笑うグラス。

 そんなグラスの部屋に慌てて飛び込む存在があった。

「で、殿下!!」

「あ? 何をノックもせずに俺の部屋に入ってきている」

 グラスはノックもせずに皇太子の部屋の中に入ってきた無礼な存在に不機嫌さを顕にする。ソファに座っていたグラスは立ち上がり、そのものを切り殺そうかなどと考えていた。

「で、殿下、た、た、大変なのです! 今すぐお逃げください!!」

「は?」

 切り殺そうという思考に陥っていたグラスも流石に、大変で、逃げるようになどと言われて固まる。何を言っているのだ、この者はといった様子でその男を見る。

「こ、此処は危険です。召喚獣が、召喚獣が迫っています!!」

「は?」

 召喚獣が迫っている、などと言われてもグラスがぴんと来ないのも当然であった。

 この大陸でも最も名をはせている召喚獣達の契約者である『火炎の魔法師』ディグ・マラナラは捕らえて無効化してある。その報告を受けていた。トゥルイヤ王国の英雄、『雷鳴の騎士』ルクシオウス・ミッドアイスラは召喚獣を従えてもいない。

 そのこともあって、召喚獣達が迫ってきているなどと現実味のない事を言われてグラスは意味が分からなかった。

(召喚獣? 何を言っているのだ、こやつは。そもそも、召喚獣達とは、複数いるという事か? 複数の召喚獣なんて居るわけがなかろう)

 グラスがそう感じるのも当然の事であった。

「どういう事だ。召喚獣達とは……何を寝ぼけた事を言っている」

「ね、寝ぼけてなどおりません。召喚獣達がこちらに向かって来ているのです!! 此処に居たら危険です! もう見える距離まで来ているという報告を受けています。貴方様はこの国の皇太子なのです。此処で命を落とされるわけには——」

「はぁ?」

 本当にグラスには理解を出来ない事を男は言っていた。

 召喚獣達が向かって来ている、そして、ここは危険などと言っているが、宮殿には結界が張られており、宮殿以上に安全な場所はないと言えるような場所だ。その場所に居て危険とはどういう事なのか、さっぱり分からない。

「召喚獣達などと、そんな複数もいるわけがなかろう。報告が間違っているのではないか?そもそも、この宮殿以上に安全な場所などあるわけがなかろう。それで逃げるとはどういう事だ。敵が攻めて来ようとも、我が国の力があればどうにでも出来るだろう。合成獣達を使ってでも、追い返せばいいだけの話であろう」

 グラスは合成獣達の恐ろしさを理解していた。そして、その合成獣達がいれば、大陸を支配する事さえも出来るだろうと思っていた。帝都には合成獣達の研究施設がある。そこから合成獣達を出せば、この帝都が攻められても問題がないというのが、グラスの意見だった。

「い、いえしかし、おそらくあれは——」

 男がそんなグラスに対して、再度逃げるべきだと進言しようとした時、その場に何かが壊れるような大きな音が響いた。

 パキンッという大きな音。

 それが何の音だか、グラスには理解が出来なかった。

「殿下、大変です!! 結界が破壊されました!!」

「は!?」

 そして、そのすぐ後に、慌てたようにやってきた別の者の言葉で、宮殿に張られていた結界が破壊された事をグラスは知り、驚いたような声をあげるのだった。



 ―――VSシザス帝国について 6

 (皇太子は宮殿で勝利に浸っていた。しかしその場に少年が到着する)




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