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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第十章 そして、その少年の名は——。

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208.VSシザス帝国について 1

本日二話目

「た、隊長、自分、おかしなものが見えるのであります!!」

「は? どうした?」

 その日、シザス帝国の南部、トゥルイヤ王国やカインズ王国との国境沿いの砦に慌てた様子の見張りの騎士が一人、砦の主の元へと駆け込んだ。まだ年若い騎士の顔色は悪い。砦を任されている騎士は、その尋常ではない様子に目を見張った。

「……な、なんか近づいてきているのであります!! 巨大な動物……いえ、あれは召喚獣でしょうか?」

「は?」

「人が、人が乗っているのが見えたのであります! その周りには無数の生き物がいます!!」

 その騎士はこの砦の中でも視力が良い事で知られていた。遠くを見る能力に長けているのもあって、彼は見張りとして重宝されていた。その彼が、信じられない事を口にしていた。

(召喚獣? 人が乗ってる? その周りに無数という事は複数? 複数の召喚獣を従えているとなると、カインズ王国の『火炎の魔法師』以外思い浮かばないが、まさか……上層部の奴ら、カインズ王国に喧嘩を売ったのでは!)

 辺境の騎士達は上層部がどのような動きをしているのかというのを正しく把握しているわけではなかった。

 しかしこの砦の周りでシザス帝国の騎士達を何度か見かけていたので何か企んでいるのだろうと砦所属の騎士達は考えていた。

 そしてその砦を任されている騎士は、報告の真意を探るために上へとあがった。見張り台へと上がった彼は、その報告をした騎士の指さす方向を見る。

「は!?」

 何かが迫ってきていた。

 土埃が舞うほどのスピードで何かが迫ってきている。距離は遠いというのに、姿が見えるという事はそれだけその迫っている何かが巨大だと言う事。

 その巨大な何かが、複数こちらに迫ってきていた。

「な、なななななんだ、あれは!」

 思わず叫んでしまったのも無理はない話だった。五匹ほどだろうか、巨大な召喚獣達が駆けている。その一匹——真っ白なブリザードタイガーの上には一人の少年が乗っている。

(……『火炎の魔法師』でさえ、従えている召喚獣は三匹だぞ? それなのに、今、目の前で見えるだけでも五匹? それに対して、一人しか姿が見えないのは何故だ?そもそも、あれだけ巨大な召喚獣を従えている存在なんて早々いないはず。いや、そもそも、待て、五匹もあんな召喚獣が存在しているのがまずおかしいだろう!? 待て、俺は夢を見ているのか? どういう事だ!?)

 その男は、冷静にならなければならないと承知していたが、どうしても目の前の光景を前に冷静になる事は不可能だった。

 そもそも、召喚獣を従えられるというだけでも凄い事なのだ。一匹だけでも召喚獣という力を持つ獣を従えられるだけでも……充分なのだ。それなのに、目の前に五匹もの巨大な召喚獣が存在している。召喚獣達が五匹も集って、同じ目的で行動をしているというだけでも敵からしてみれば悪夢である。その場で迫ってくる彼らを目撃している者達は、現実を直視出来ていなかった。

(……何に、手を出した!? 上層部は本当に何に手を出したんだ。というか、あの召喚獣達、こちらに向かってきているが、どういうつもりだ。ちょ、ちょっと待て)

 召喚獣達はどんどん迫ってきている。瞬き一つしただけでも、どんどん視界に映る召喚獣達の姿が巨大になっていくのだ。

「た、隊長。ど、どうします?」

「ど、どうしたらいいんですか!?」

「ええ、っと! 一先ず――」

 男が戸惑う部下達に指示を出そうと頭を働かせた。だけれども、何を指示するべきか、男には思いつかない。このような状況など、想定さえも出来ていなかった。

 そうしている間にも、召喚獣達はその砦に迫ってきていた。

 ――そして、男がどうにか指示を出そうとした時にはもう遅かった。

 大きな音がした。それと共に何かが通り過ぎて行った。そして、見張り台に上がっていた彼らの体は浮いた。そして、落ちる。驚いて、目を閉じる。不思議と痛みはなかったが、目を開けて彼らは驚愕した。

 砦が崩壊していた。

 木端微塵に崩壊していた。

 ……本来なら砦内にいた彼らは死を迎えているはずだが、怪我一つなかった。

 それは砦を崩壊させた相手が命まで奪おうと考えていなかったからと言える。

(……待て。一瞬だぞ。迫ってきていたあの召喚獣達が、これをした? いや、召喚獣達に砦が轢かれたと言えるのか? いや、待て、しかし召喚獣達が幾ら此処までやろうと思って出来るものなのか? となると、その上に乗っていた人間——あの、たった一人の人間がやった?)

 震える体で、男は尻餅をついたままも、思考し続ける。

(……俺達を殺そうと思えば殺せただろう。一瞬で命を奪えただろう。でも、それをしなかった。あの召喚獣やその契約主の目的はこの砦ではない? なら、何故この砦を壊したのか。……というか、本当に何に手を出しやがったんだ、あいつら!!)

 震える体で、男はおそらく、あの召喚獣達やその契約主を怒らせたであろう上層部に対して悪態をついたのだった。



 ―――VSシザス帝国について 1

 (国境付近の砦は一瞬で少年と召喚獣によって破壊された)



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