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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第九章 外交と、波乱の幕開け

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192.外交について 1

「ようこそ、お越しくださいました。ナディア様」

 カインズ王国の第三王女であるナディア・カインズとカインズ王国の英雄『火炎の魔法師』ディグ・マラナラを含む一同はいくつかの街を経由してトゥルイヤ王国の王都へとたどり着いた。

 これだけ長い間、馬車に揺られるのもナディアにとって初めての経験であり、正直な所、疲れがたまっていたが挨拶はきちんと済ます。

 それから疲れているだろうからと案内された客室に向かうと、体を休める。

(流石に疲れたわ。これだけ長い距離を移動するのは初めてだったもの。それにしても私がこうして外交に繰り出そうとするなんてヴァンに出会うまで想像さえもしていなかったわ。私は……目立たないようにひっそりと一生過ごすつもりだったもの)

 王女という地位だったけれども、目立たないように一生過ごそうと考えていた。それ以上の事は求めないと。

 だけど、ヴァンに出会ってヴァンに相応しくありたいと願ったからこそ、ナディア・カインズは今こうして隣国にまで赴いている。

(ヴァンは今頃、どうしているかしら。元気に過ごしていたらいいのだけど)

 ヴァンの事を考えて、ナディアは思わず笑みを零す。

 ヴァンの事が好きだと気付いて、ヴァンと心を通じ合わせて、それからずっとヴァンの事を考えると笑みが零れるぐらいにナディアはヴァンの事を大切に思っていた。

 離れていても、ヴァンに誕生日プレゼントにもらったペンダントや腕輪はすぐそばにある。そしてヴァンの従えている召喚獣たちは、ナディアの側に侍っている。

(離れていても、ヴァンの存在を感じられるのはなんだか嬉しいわ。私は一人ではない。ヴァン自身はいなくてもヴァンの事は感じられるのだから)

 そう思うと、不安な外交もナディアは楽しく過ごせる気がした。

 

 それからその日は、そのまま眠ってしまった。翌日から、ナディアにとっての外交のスタートである。





「ナディア様はお美しい方ですね」

 翌日になってナディアの事を案内するのは、トゥルイヤ王国の第二王女であるビィタリナ・トゥルイヤであった。

 美しい空のような水色の髪を持つ少女だ。

 何故、彼女がナディアの世話係に充てられたかと言えば、彼女が最もナディアと年が近かったからである。

「ビィタリア様だって、美しいですわ。髪の手入れなどは何を使ってらっしゃるの?」

「私は——」

 トゥルイヤ王国の王宮内を案内されながらナディアはビィタリアと美容の話で盛り上がる。そこは年頃の女の子なので、互いに気になるのだろう。特にナディアはヴァンと婚約をして、もっと綺麗になりたいなどと考えていたため楽しそうに話している。とはいえ、初対面の他国の王族相手なので心を完全に許しているなどというわけではもちろんない。

「そういえば、ナディア様はあの『火炎の魔法師』ディグ・マラナラ様のお弟子様と婚約を結んだのでしょう? どんな方なのでしょうか。平民の身でありながら王族と婚約を結べるなんてとても素晴らしい方なのでしょう?」

 ビィタリアはそんな風に問いかけながらも、王族なのに貴族に養子にもきていない平民と婚約をするなんて……という信じられないといった気持ちも見え隠れしていた。

 ヴァンは貴族の家に養子に入っているわけでもない。ディグの弟子という立場であるが完全な平民である。だけれども、婚約が許されたのはヴァンが国が手放したくないと言えるだけの力を持ち合わせているからだ。

 だけど、ビィタリアはそれを知らないからこそ、そういった態度を取る。

(ヴァンは王女であるだけの私なんかよりも、ずっとずっと……凄い男の子だわ。それこそその力をもってすれば国に縛られる事がないぐらいに。自由に生きられるぐらいに。それに私は平民であったとしても、ヴァンとずっと一緒に居たいと思っているのだもの)

 ナディアはヴァンがどれだけ凄いのか知っている。今だって、ビィタリアは侍女はいるもののナディアと二人っきりだと思っているかもしれないが、ヴァンの召喚獣たちはひっそりとナディアの事を見守っている。それこそ、ビィタリアが何か問題を起こせばすぐに飛び出せるぐらいに近くに。

「私にはもったいないぐらいの方ですわ。私はあの方と婚約が出来た事を心から嬉しく思います」

 それはナディアにとっての本心である。

 ヴァンはナディアに沢山のものを与えてくれている。だけど、ナディアはそれと同じものをヴァンには返せていないと思っている。そして、ヴァンの隣に立つには自分ではまだまだ相応しくないと思っている。

(だから、もっと頑張らないと。頑張って、ヴァンの隣に私は立ち続ける私でありたい)

 そう思っての言葉だったが、一瞬だけビィタリアは面白くないといった表情を浮かべた。平民と婚約を結ぶことに対してナディアが不満を口にするとでも思っていたのかもしれない。

(私の場合、お父様が政略結婚を強要しない方だけど、ビィタリア様は幼い頃より決められた婚約者がいる。それも政略結婚するための。それで色々と思う所があるのかもしれない)

 ナディアはそんな風に考えながらも笑顔を張り付けて、会話を交わした。



 ―――外交について 1

 (第三王女はトゥルイヤ王国に到着し、交流を深める)




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