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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第八章 婚約騒動と二人の関係

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167.誕生日プレゼントについて

「どうしようかな」

 ヴァンは一人、椅子に腰かけて頭を悩ませていた。何を悩んでいるかと言えば、

「ナディア様への誕生日プレゼント?」

「うん」

 ナディアへの誕生日プレゼントに何をあげるべきかということである。

 その相談を受けているのは姉弟子であるフロノス・マラナラである。

「……去年凄いものあげたわけだし、それ以上のものはあげられないんじゃない?」

「去年以上とかは考えていないよ。ただ、この前とかぶらないようにしたいから何あげようかなと」

「……それも凄い物にする気?」

「さっきからすごいものすごいものって言っているけど、俺はナディア様のために全力で色々効果つけてるだけだし」

「……それがすさまじいものになっているわけだけど」

「去年作ったネックレスって、魔法反転と物理攻撃もきかなくして、あとは落ちた時に浮遊は出来るようにして毒とかも無効化するようにはしたけど……他に何があったほうがいいっけ?」

 ヴァンはさらりといっているけれど、フロノスからしてみればわけがわからない性能の魔法具をさらりと作るなと言いたかった。

「んー。ナディア様が危険な目に合わないように……ってなると結構詰め込んだけど、他にも何かあるっけ。いっそのこと、ナディア様自身を強化する方向に行くか? それとも……」

 うーんとヴァンは唸りながらそんなことを言っている。

 これ以上、ナディア様をどんなふうにする気なのだとフロノスは突込みたくはなった。しかし、突っ込んだところでどうしようもない。それだけ異常な力をヴァンが持ち合わせている事は把握しているし、いちいち反応していたらきりがないことも分かっているのだ。

「……いっそのこと、召喚獣、ナディア様にあげる?」

「いや、駄目でしょう。召喚獣たちとは貴方が契約しているの。というか、そもそも普段から召喚獣ナディア様の側に控えさせていてあげているようなものじゃない」

「それもそうか」

 ヴァンが召喚獣をいっその事ナディアに上げてはどうかなどと驚くべきことを口にするので、フロノスは思わず突っ込みを入れた。

 召喚獣とは、そんな風に簡単にあげるという話を出していい存在では決してない。だというのに軽くあげるなどと言い出すヴァンには本当に呆れたものだとフロノスは思う。

「というか、別にそういう効果つけなくても普通のプレゼントでナディア様は喜ぶと思うわよ? どういう効果をつけるか思いつかなかったら普通のプレゼントでいいと思うのだけど」

「んー、それもそうか。どうしようかなぁ」

 それもそうかと口にしながらもヴァンは相変わらず悩んでいるようだった。

(本当、ヴァンはナディア様の事が大好きね。人に関心を全然持たないヴァンが好意を抱いているのがナディア様で良かったかもしれない。ヴァンは好きな相手のためならなんだってやらかしそうだもの。ヴァンの実力を知った上で利用するような人間がヴァンの思い人ではなくて本当によかったわ)

 フロノスは改めて、目の前の異様な実力を保持している弟弟子を見ながらそんなことを考える。ヴァンという存在は英雄の弟子として様々な経験をしてきたフロノスにとってみても異常である。そんな異常な存在の思い人が彼を利用するような存在ではなかったと思う。

 通常、力を持たないものが力を手にしたら自分にも力があると考えてしまう者も多く居るだろう。だというのにそんな風にナディアがならなかったこと。そのことは本当によく考えてみると幸運な事だったとフロノスは思ってならない。

(それにナディア様はヴァンの事を利用しようとかそういう気は一切ない。そういう王女様で本当によかった。ナディア様はただヴァンの事を大切に思っているし、ヴァンもヴァンでナディア様を思っているだけだもの。この二人早くくっつけばいいのに)

 ヴァンの事も、ナディアの事も知っているフロノスからしてみれば、見るからに両片思いでしかないのだから早くくっつけばよいのにと思ってならないのである。

(でもヴァンは変に自分が平民だからという気持ちが強いから、何かきっかけがないとくっつくことは多分ないでしょう。何か起こった方がいいのかもしれない。いや、でもそれでヴァンとナディア様の仲が変なことになったりしたらヴァンや召喚獣たちがどうするか分からないし。スノウもヴァンに服従している状態だろうからヴァンに何かあったら何するか分からないし……んー、となると、もっと穏便に済ませるのが一番いいのか)

 フロノス、両片思い状態のヴァンとナディアをどうにか出来ないかと考えながら、何かあればヴァンがどうなるか分からないと不安を抱いていた。

 そんなフロノスの心配など知りもしないで、ヴァンはナディアへの誕生日プレゼントをどうしようかとずっと考えているのであった。

 ――そしてそんな二人の耳に、ダーウン連合国家の公子がやってくるという話が舞い込んでくるのはそれからしばらく経った日の事だった。



 ―――誕生日プレゼントについて

 (少年は姉弟子と共にプレゼントについて話し、姉弟子は二人の関係に頭を悩ませる)




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