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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第七章 王都で起こる出来事

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152.呼び出しされた英雄の弟子たちについて

 その日、ディグ・マラナラは所用で王宮から出かけていた。そのため、ディグの研究室の中に居るのはディグ・マラナラの弟子であるフロノス・マラナラとヴァンだけである。

 社交界を無事におえ、彼らは一息をつき、いつも通りの日常を営んでいた。ちなみに、ディグはフロノスに男の影がないことを心配していたが、社交界を終えてもフロノスの側にはそんな影欠片もなかった。フロノスはあまりそういうことに関心を持てないでいた。そういうことよりも、ディグ・マラナラの弟子として相応しくありたいと願っている。

「ヴァン、今日はナディア様の所いかないの?」

「うん。ナディア、お勉強するって。俺もだから頑張る」

 ヴァンはどこまでもナディアの言動を優先する。頭の中はナディアのことしか考えていないのではないかとでもいうようなヴァンの言動にいつもフロノスは呆れている。

 (でも、ヴァンがナディア様に恋していてよかったとも言えるわね。もし他国の人とかに恋してたら敵に回った可能性あるし。召喚獣大勢連れた相手が敵とか怖すぎるもの)

 フロノスはヴァンの事を見ながらそんなことを考える。

 フロノスはヴァンの全力を見たことがない。ヴァンの全力、持てる力を全て使った時。それは即ち、全ての召喚獣を顕現させ、ヴァンが手加減をせずに魔法を打ち出すことと言えるだろう。ヴァンは恐るべき才能で、召喚獣を幾ら顕現させていても平気なある意味化け物のような存在である。ヴァンが全ての召喚獣を顕現させ、行動を始めたらと思うと想像するだけでフロノスはぞっとした。

 (……ヴァンが切れる事がないようにした方がいいわね。凄いことになりそう)

 とりあえずナディアに手を出すことがなければヴァンが切れることはないだろうことはフロノスにも十分想像出来るので、誰かがナディアに手を出すことがなければいいななどと思考するのだった。


 そんな風に、ディグ・マラナラの弟子二人が過ごしている中で使者が来た。


 ディグが出かけていることを知ると、ヴァンとフロノスでも構わないということになったので、二人は王宮騎士団の詰所へと向かうのであった。

 今回、ヴァン達を呼び出したのは王宮騎士団の団長であった。ユグッドという名の団長は、ヴァンやフロノスとも挨拶程度はする仲である。

「ただ今、師であるディグ様は席を外しておりましたので、私フロノス・マラナラと弟弟子ヴァンでこちらに参りました。どのような御用でしょうか」

 丁寧に礼をしてユグッドに話しかけるフロノス。それにならって、ヴァンも頭を下げる。

「―――貴殿らは、ここ最近王都内で人が消えていることは知っておるか?」

 彼は、ヴァンとフロノスに向かって、そう問いかけた。

「人が消えている?」

「何か召喚獣たちがそういうこと少しいっていた気がします」

 フロノスは知らなかったので不思議そうに声を上げるが、ヴァンは少しだけ召喚獣たちから聞いていたらしい。とはいっても詳しくは何も分からず、ただ消えていることがあると聞いているだけなのだが。

「本当に少しずつだが、人が消えている。目だって噂になっているのは若い娘ばかりだが、それ以外の者も気づいたらいなくなっているという案件があるようだ。事件性のないものであるかどうかが分からなかったのだが、どうやら人為的な事件である可能性が高いようだ。そのため、事件解決のために力を貸してほしい」

「わかりました。……ヴァンも、事件解決したらナディア様も喜ぶから頑張りましょうね」

「うん」

 ヴァン、他人がどうなろうとしったことではないという態度で聞いていたので、フロノスは思わずナディアも喜ぶからという話をしてやる気を出させていた。

 その後、ユグッドはその事件についての情報をヴァンとフロノスに話していく。

「それでだな、今の所被害にあっているかと思われる人数だけで六名。うち、四名は平民の女性だ。その者たちは―――」

 まずは、王都内からいなくなってしまっている人間たちの名前だ。誰が居なくなっているか、どのような者なのか、その情報を告げる。

「―――ビッカ」

 その中には驚くべきことに、ヴァンの幼馴染であるビッカの名前もあった。しかしその名を聞いてもそこまで慌てないいつも通りのヴァンだった。

「そして男性のいなくなっている者は――」

 その後、ヴァンとフロノスはその人為的な事件で王都からいなくなっている者たちの情報を頭に留めた。ひとまず、ディグが帰宅して相談をしてからヴァンとフロノスは本格的に動くことにしようという話になった。

 フロノスはユグッドの元からの帰り道、

 (……王都内での事件なんて、大事だわ。ディグ様の弟子としてしっかり解決してみせる)

 と気合いを入れるのであった。



 ――――呼び出しされた英雄の弟子たちについて

 (英雄の弟子たちは、王都内で人が消えている事件について聞く。そしてその解決に乗り出すのだった)




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