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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
番外編 5

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王太子殿下と第二王子

 カインズ王国の王太子、レイアード・カインズは完璧な王太子として有名である。

 美しい赤い髪に、赤い瞳を持つ、そして優しげに微笑むレイアードは、カインズ王国の国民たちにとっての憧れの存在である。

 王太子としての、業務もきちんとこなしており、次期国王として相応しい、カインズ王国の未来は明るいといわれている。

 彼の残念な一面―――妹たちのことを愛していて、妹たちのこととなるとその完璧な王太子の仮面をすっかりはがしてしまうのだが、そういう面を国民たちは一切知らない。

 そもそも、その残念な一面を知っているのは本当に一部であり、彼の妹たちであってもその残念な一面はさらされていない。その残念な一面を知っていて、いつもなだめる役割にいるのが第二王子であるライナス・カインズである。ライナスも、美しい王子である。金色に輝く髪に、碧眼を持つライナス。レイアードと共にいることが多く、一部の女性の間では「禁断の恋なのではないか」と妄想をしているものたちもいるそうだが、そんなこと当の本人たちは一切知らないことである。

 

 さて、その日も、レイアード・カインズとライナス・カインズは共にいた。



 「ライナス……、フェールが、あの《雷鳴の騎士》の弟子から手紙が来たと喜んでいた。私は、どうするべきだろうか!」

 「……いや、兄貴。なんで何かする前提なんだ? 何もしなくていいからな? フェールが幸せになるのは良いことだろう?」

 ライナスは、その美しい顔を呆れたように歪ませる。

 突然、ライナスの自室に訪れて、これである。第二王子として視察からかえってきて、自室でのんびりしていた所に、フェールのことで突撃されてライナスとしては残念なものを見る目になってしまう。

 ライナスは、兄であるレイアードのことを尊敬している。王太子としての責務をきちんと果たしていて、普段は冷静で、何事もそつなくこなす兄のことをかっこいいとさえ思っている。………ただし、妹に関わることで暴走している時の兄は別である。

 (……これがなければ完璧なんだがな。いや、逆にこんな一面もない兄貴はそれはそれでアレか。フェールと、キリマと、ナディアを心から愛していて時折騒いでいるのが兄貴だしな)

 と、ライナスはそんなことを思いながらレイアードを見ている。

 「しかしだ……っ、フェールがあの者と結ばれるとなると国外にいくということになりえるのだぞっ。百歩譲ってナディアは……いや、ナディアのことだって私はまだ早いと思っているが、ヴァンと結ばれたとしてこの国から出ていくことはないだろう。私は可愛い妹の事を見ていられるのだ。しかし、他国にいってしまったら———っ。せめて私の目が届く範囲に……」

 「兄貴、妹離れしような? その発言聞いたら流石にフェールたちだって兄貴にドン引きするかもしれないぞ? 結婚できずにこのままいきおくれになってしまう方が問題だぞ? フェールのことを大切に思っているなら良い奴と交流できていることは良いことだろう?」

 「フェ、フェールたちにドン引きされるかもしれない………」

 「かもしれない、ってだけだから想像しただけでダメージを受けるな、兄貴……」

 呆れた顔をしたまま、ライナスはいう。こんなレイアードの姿を、レイアードに憧れる令嬢たちがみたらどうなるだろうかと考えてしまっていた。

 「……しかし、もし、妹たちに嫌いなどと言われてしまったらっ!」

 「なんで絶望してるんだよ…。嫌われないようにしていれば嫌われたりはしないだろう。とりあえず《雷鳴の騎士》の弟子とのことはまだナディアとヴァンと違って明確に決まっているわけでもないだろうし、とりあえず見守っていればいいんじゃねぇの? それで時々相談されたらのってフェールを助けてやればいいだろう」

 「……まだまだ子供なのに。キリマもディグ・マラナラに惚れているし、どうしてこうも早いのだろうか」

 「好きでもない相手に嫁ぐよりはいいだろう。王族なんて政略結婚ばかりだぞ? その中でちゃんと好意を持った相手と結ばれるってのは良いことだろう?」

 「それは、そうだが……」

 「まぁ、その《雷鳴の騎士》の弟子がフェールに本当に相応しくないって思ったら考えればいいだろう。兄貴、なんだかんだで《雷鳴の騎士》の弟子のこと嫌ってるわけでもねぇだろ?」

 ライナスがそういえば、レイアードは、不機嫌そうな顔をしながらも頷いた。本当に、レイアード・カインズが妹に近づけるべきではない相手だと思っていたのならば、そのまま放ってはおかないのだ。なんだかんだで、《雷鳴の騎士》の弟子であるザウドック・ミッドアイスラのことを認めていないわけではないのだ。ただ、妹に男の影があるのが気に入らないという兄心があるだけである。

 「……認めていないとか、そういう話ではなくてだな、私はやはり―――」

 それからもぶつぶつレイアードはいっていたので、それに対してライナスは返事を返していくのだった。




 ―---王太子殿下と第二王子

 (王太子殿下は、相変わらず妹たちのことを思っている。そして妹にはまだ早いと嘆く王太子殿下の話を、第二王子はしっかり聞いていた)





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