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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第五章 砦での生活

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126.帰還について

 ナディア・カインズはその日、うずうずしながら王宮の正門に居た。なぜなら、ヴァンが今日帰ってくるからだ。ナディアは一生懸命顔に出さないように気を付けているが、気を抜くと、顔がにやけてしまいそうになっている。

 ちなみにフェールとキリマも、もちろんこの場には居た。

 (ヴァンが帰ってくる。嬉しい)

 久しぶりにヴァンが戻ってくるのだと思っただけで、心から嬉しくて仕方がない。ヴァンに隣にいてほしいと思ってならないのだ、ナディアは。

 (はやく、戻ってこないかな。もうすぐ来るという話なのに。ああ、もうすぐ帰ってくるとわかっているのに、もう私どれだけヴァンに会いたいんだろう……)

 じーっと馬車が来るだろう方をナディアは見ている。自分がどれだけ帰ってほしいと思っているのかというのを実感してしまう。

 (ヴァン……)

 と、ナディアがヴァンに対して思いを馳せている中で、馬車が見えた。

 あれに、ヴァンが乗っているという事がわかって、ナディアはドキドキしていた。嬉しくてはやく、その姿が見たいと願ってならない。はやく、はやく、姿を見たいとそう願う。

 そして、ディグ、フロノス、ヴァンと降りてくる。ヴァンの姿を見た瞬間、ナディアは駆け寄った。

 「ヴァン!!」

 そしてそのままヴァンの胸に飛び込んだ。

 「ナ、ナディア……!?」

 ヴァンは驚きながらも、その身体を受け止める。慌てて呼び捨てになってしまっていた。もちろん、それは周りに見られている。ヴァンは焦っている。まさか、ナディアが飛び込んでくるなんて思わなかったから当然である。

 「おかえりなさい!」

 満面の笑みを浮かべて、ナディアはヴァンの腕の中にいる。ヴァンの顔を見上げている。

 「……え、ええと、た、ただいま」

 ヴァンは、自分の腕の中にナディアが居る事に戸惑っている。

 (ナ、ナディアが、えっと、これは……)

 混乱状態である。そしてナディアは、次の瞬間はっとなった。はっとなって、次の瞬間ばっと体を離して、顔を赤くする。顔が真っ赤になって声を発する。

 「え、えっと、ヴァン」

 「う、うん、な、なに?」

 ヴァンもナディアが飛び込んできたのもあって、状況を確認して顔を赤くしている。二人して顔を赤くして、口もごらせている。

 (ど、どうしよう。ヴァンがようやく帰ってきたと思って、嬉しくて、思わず……こんな人が見ている前で……)

 顔を赤くしたまま下を向いている。

 (ナ、ナディアがえっと俺の所にきて、えっと…)

 ヴァンはヴァンで混乱している。

 「なにをやっているのよ。注目を浴びているわよ」

 そんな二人に呆れた様子で声をかけたのは、フェールである。フェールは、ヴァンとナディアの様子を見て呆れ顔だ。フェールの言葉に、二人は一斉にフェールの方を向く。

 「え、えっと、ごめんなさい。フェールお姉様」

 「いえ、私に謝らなくていいのよ。ただいつまで顔を赤くして挙動不審なのと思っているだけよ」

 ナディアがはっとなって謝れば、フェールが呆れた声でいう。それを聞いて、ナディアは「あの、ヴァン。本当にあなたが無事で嬉しかったの。だからその、飛び込んじゃっただけなの。あ、あまり気にしないで。えっと、じゃ、じゃあ、私は行くから」と一気にいった後、恥ずかしそうにその場からひとまず去って行った。注目されている中に残ったままというのは耐えられなかったらしい。

 「ディグ様!!」

 ちなみにその隣では、ディグにキリマが飛びつこうとして、華麗によけられていた。受け止める気もないディグである。代わりにフロノスが支えていた。

 「ディグ様! キリマ様が怪我したらどうするんですか」

 「いやー……俺はちょっとあんな風に見られるのは……それにフロノスがどうにかするだろうとは思ってたし」

 フロノスがディグをとがめる声をあげれば、ディグはそんなことを言う。キリマは「ディグ様連れない! 私もナディアみたいに……」とぶつぶつ言っていた。人前だからかろうじて王女様としての仮面をかぶっているがほぼその仮面ははがれきっているとも言えるだろう。

 「おい、ヴァン、ぼーっとしていないでさっさと行くぞ。フロノスもな」

 「あ、う、うん」

 「……はい」

 ディグは周りを見渡して面倒そうに弟子二人にこの場から離れる事を告げる。ヴァンは先ほどのナディアとのことでフリーズしたままだがどうにか答え、フロノスは呆れた様子で返事をする。

 さっさと歩きだすディグ、弟子二人はついていく。キリマは「あ、ま、待ってください!」とディグの隣に一生懸命並ぶのであった。後ろから去っていく彼らを見てフェールは「……私も部屋に戻るわ」と一言侍女に告げて、その場を去るのだった。

 残された見物人たちは、先ほどの様子を思って口々に囁きごとをするのであった。







 ―――帰還について

 (ヴァン達はようやく王宮へと帰還した。ナディアとヴァンの距離は、徐々に縮まっていく)





中途半端かなとも思いましたが、一旦ここで第五章は終了になります。

番外編はさんで、第六章【雷鳴の騎士とその弟子】(仮)に続きます。

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