表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第五章 砦での生活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

132/272

120.側妃二人の動きについて 4

 ルイネアラ・フィーガーはアンへの警戒を強める日々の中で、何度かナディアの前に姿を現した。

 ナディアの前で謝罪をする姿は、心からの謝罪に思えたが、初対面の時にあのような態度をしていたルイネアラ・フィーガーがそのように簡単に心を変えるのだろうかという疑いがナディアの中では強かった。

 お詫びという事で渡された香水を、ナディアは一度も使っていない。

 「……香水、使ってくださっていないのですね」

 「ナディア、私も使ってみたけれどなんともなかったわよ? 警戒する気持ちはわかるけれど…」

 ただ、本人はお詫びの気持ちである香水を使ってほしそうで、キリマも自分が使って問題がなかったと告げた。

 『においかいでも人の身体に悪いものなのかさっぱり分からん。でもキリマが嘘をつく事はないと思う』

 ヴァンに託された召喚獣たちもそういっていた。

 ヴァンの召喚獣たちも、ナディアと一緒でルイネアラ・フィーガーに対しての信頼はなかったが、キリマに対する信頼は持ち合わせていた。

 ナディアにとって、キリマ・カインズは現状では信頼できる姉姫である。キリマの素の姿を知った今では、キリマがこういう事で嘘をつくはずがないとそんな風に思っている。

 (なら、少しぐらい使ってみようかしら。キリマお姉様は使って欲しそうだし)

 そうして、ナディアはその香水を少量だけだが使うようになった。

 ナディアが香水を使うようになってからはルイネアラ・フィーガーはお詫びの品を使ってくれたんだ、なら許してくれるんだという思考に陥ったようでにこにこしていた。

 一日、二日、三日、四日、五日、六日、七日、八日と毎日少しずつだが使っていた。時々やってくるルイネアラ・フィーガーはナディアの前で心からの笑顔を浮かべているように思えた。

 ナディアは自分の考えすぎで、本当にルイネアラ・フィーガーはお詫びをしようとしていたのかと思った。

 そんな中でアンが動いた。

 アンは、ルイネアラ・フィーガーに怒鳴りつけていた。

 その場を召喚獣たちが発見して回収してきた。とらえられたアンは、ナディアを前に普段の冷静な表情をなくして声を上げた。

 「なんで、まだ、死なないのよ」

 何故まだ死なないのかと。何故まだ生きているのかと。香水をつけたはずなのにと。

 召喚獣たちがいうにはルイネアラ・フィーガーが「ナディア様がつけてくれていて嬉しい」と報告していた所で、ナディアが元気なのを知ったアンがどなりつけたらしい。

 当事者としてこの場に残っていたルイネアラ・フィーガーが「どういう事ですか!?」と声を上げていた。

 どうやら、ルイネアラ・フィーガーがナディアに渡していた香水は「仲直りができやすくなる」といわれてアンから渡されたものが入っていたというのが話を聞いていてわかった。それも一度使うだけでは効果が出ず、長時間使う事で体をむしばんでいくものなのだと。ルイネアラ・フィーガーが流されやすい子供であるから、そちらを操ってナディアの事を殺そうとしていたという。

 ルイネアラ・フィーガーはアンとはそれまで接点もなかったため、アンにたどり着く事はないだろうと計算された事でだ。

 しかし、ナディアは一週間以上それを使っても効果が現れなかった。

 その理由に、ナディアは思い当たる。

 「……ヴァンのくれた誕生日プレゼント、こういうものにもきくのね」 

 おそらく、ヴァンのくれたネックレスがナディアの身体にとって悪いものを取り除いてくれたのだとナディアは結論づけた。

 ボヤ騒ぎとキリマが抜け出した事も、アンの手引きによるもので、そちらに視線がいっている間に自然にルイネアラ・フィーガーに接触させ、油断させようとしたようだ。ルイネアラ・フィーガーに関しては本気で謝罪をしようとしていて、ナディアを害そうとは思っていなかったようだ。

 「……お母様は、どこに?」

 「貴方の母親なら今頃黄泉の国よ」

 もう捕まってしまっているからというのもあるだろうが、アンは正直にそう話していた。その場にいたキリマをあざ笑うかのような言葉だった。

 母親が死んだと聞いて複雑そうな表情を浮かべるキリマ、自分がナディアを殺害するかもしれなかったと知って青ざめているルイネアラ・フィーガー、そして一番年下なのに冷静に今の状況を受け入れているナディア。そして捕まったまま、ナディアを睨みつけているアン。

 普段冷静であったアンがここまで感情を露にしているのはナディアがアンがどのような行動を起こそうとも命を落とす事はなかったからというのもあるだろう。殺そう殺そうと行動をし続け、でも死なない。だからこそ、アン自身も焦っていたのだろう。

 結局の所捕まったアンは、その後やってきたレイアードが責任を持って連行していった。

 キッコの殺害、ナディアへの殺害未遂も含め、本人が自白したこともあり処刑される事が決定する。

 実の娘であるフェールは、複雑そうな表情をしていたが母親が何をしてきたかというのを理解していたのでそれを受け入れた。フェールはアンの行った事とは無関係だったという事で、処罰はされなかった。



 そうして、側妃二人は後宮から消えていった。




 ―――側妃二人の動きについて 4

 (アンとキッコという二人の側妃はそうして姿を消した)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ