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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第五章 砦での生活

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102.人脈作りに取り組む第三王女様について

 ヴァンたちがポリス砦で色々行っている頃、カインズ王国の第三王女であるナディア・カインズは姉の助言を聞き入れ、早速行動に移していた。

 フェールが言ったように、国王であるシードル・カインズにそういう場がほしいといえばすぐに用意をしてくれた。

 シードルは、それがヴァンのための行動であるというのは気に食わないようだが、ナディアが一生懸命がんばっていることには応援をしているのである。

 さて、そんなわけでヴァンに出会うまで精力的に活動することもなく、身の安全のためにおとなしくしていようとしていたナディアはこうして自分から行動をしている。

 (お姉様たちと仲良くなることも、こうして行動を起こすことも、ヴァンに出会わなければなかったわね)

 そう思いながらもナディアは目の前に並ぶ少女たちを見る。

 十一歳のナディアとほぼ同年代の貴族の子女たち。美しく着飾っている彼女たちの中は様々な表情をしている。

 ナディアきらきらした目で見ている少女などは、正直よくわからない。少なくとも敵意はもたれていないことだけはわかる。

 ナディアをじろじろと観察するように見ているものは、最近ようやく表に出てきた第三王女に何かを感じているのかもしれない。

 ナディアをにらんでいる少女は、正直ナディアに理由はわからないが、なにかしら理由があるのだろうと考える。

 もう一人の少女は緊張した面立ちでその場にいる。

 「私がカインズ王国第三王女であるナディア・カインズですわ」

 挨拶をし、ナディアは笑う。

 一人一人の顔を見てにこりと笑う。

 この場にいる子女の数は、ナディアを含めて五人。

 「私はミーシェ・ルージーですわ! クアンお兄様からナディア様のお話は少し聞いておりますわ」

 きらきらした目でナディアを見ていたのはクアンの妹であり、ミーシェ・ルージーであった。兄と同様の美しい銀色の髪を持つかわいらしい少女である。

 「……私はトトラン・ホイエイです。よろしくお願いします」

 めがねをかけた藍色の髪を一つに結んでいる少女の名はトトラン・ホイエイ。祖先は他国からの移民で、過去に起きた事件をおさめた功績で伯爵位をもらっている一族の娘である。

 ナディアのことを悪い風にもよい風にも思っていないのだろう。ただ観察するように見ている。

 「私はルイネアラ・フィーガーですわ!!」

 次に声を上げたのはナディアをにらんでいた明るい茶色の髪を持つ少女だ。理由は不明だが、ナディアをにらんでいる。

 「わ、わわ私はイクノ・オーランと申します。よ、よろしくお願いします」

 最後の少女は王女様という存在を前に恐縮しきっている。このメンバーの中ではどちらかといえば地味といえるだろう。

 (……なぜにらまれているのか正直わかりませんが、まぁそれはよしとしましょう。こうして同年代の方と仲良くなるための場を折角お父様に整えてもらったのです。ヴァンの傍にいるためにも、がんばらなければ)

 と、ナディアは意気込んだ。

 「ナディア様ってお人形さんみたいですわね! お兄様と並んだらきっとすばらしいことになりますわ」

 「そうでしょうか?」

 どうやらクアンの妹がきらきらとした目でナディアを見ていたのは、その美しい姿に興奮していたからのようである。

 クアンのこともお人形さんみたいととても気に入っているミーシェなので、美しい見た目を持つナディアになつくのも当然なのかもしれない。

 「ナディア様、失礼を承知でお聞きしたいのですがよろしいでしょうか」

 そう切り出したのは、トトランである。

 「なんでしょうか?」

 「貴方様はずっと表に出てこなかったでしょう? なぜ、今はこうして表舞台に出てこようとしているのでしょうか?」

 彼女がナディアのことをじろじろと見ていたのは、よくわからない存在だからというのもあるだろう。突然動き出した王女。噂だけが先行してよくわからない存在。

 そんな存在のお友達候補としてこの場にいる自分の立場を考え、ナディアがどういう意図で進もうとしているのか気になっているようだ。

 「はんっ、どうせしょうもない理由なのでしょう? 私こんな無意味な話合いに参加などしたくありませんわ!」

 と、会話を交わしていたら、ルイネアラ・フィーガーはそんなことをいって席を立つ。

 王族に招待されてこの態度は明らかにおかしいわけだが、ルイネアラ・フィーガーはそんなことも考えていないのか立ち上がるとずかずか去っていった。

 ナディアにしても正直対応に困る存在なのでとりあえずほうっておいた。もちろん後から報告はするが。

 「……あの方は確か、第二王女であられるキリマ・カインズ様に取り入っている方ですわ」

 「キリマお姉様に……」

 「まぁ、あの方はよいとして、私の質問に答えていただけますか」

 そういうトトランは本心からルイネアラ・フィーガーのことをどうでもいいと思っているようである。

 「……目標ができたからですわ。その目標をかなえるためにも、私は力がほしいと思いましたの。本当にそれだけですわ」

 出会ったばかりの人にヴァンに関する感情を言うということもないが、ナディアはそんな真実を口にする。

 ヴァンに守られるのにふさわしい存在になりたい。

 ヴァンの傍にいて文句を言われない存在になりたいというのが目標なのだ。

 「目標?」

 「も、目標のために努力をしているのはすばらしいと思います!」

 何かを考えるようにつぶやきナディアを見据えるトトランと、緊張しながら一生懸命何かを言わなければと言葉を発したイクノ。

 「そう、目標ですわ。絶対にかなえたい目標なのですわ」

 笑ってナディアは告げた。

 かなえたい目標。今ではヴァンが傍にいないのが当たり前ではなくなっている。

 ヴァンが砦に向かい、王宮にいないということに寂しさを感じている。

 傍にいるのを認められるように、がんばろうとナディアは笑みを浮かべながら決意した。

 それから、四人での会話は続いた。これが、これから交流を深めていくことになる四人の出会いであった。





 ---人脈作りに取り組む第三王女様について

 (第三王女様は目標のためにがんばる決意を改めてする)




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