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第一章
6月に入って、俵夫婦がこの日浦部の家に招待されていた。清治は、もうすっかり浦部の子供達と仲良くなっていた。
「俵さんの所は印刷業をされているんですね。鳩の飼育に関して、もう小雑誌を作っておられるとは驚きました」
浦部がにこにこしながら言った。俵は実はこう見えても、T大学で考古学を学んだ優秀な人物だったののである。そして、この俵こそが、考古学、不思議な輪廻の主役へ接触して行く浦部以上の接点の一人だったのだ。清治は、自分が何かを引きよせているような感覚を持って行くようになる。何故なら、これから起きる事は清治が清治自身による架空世界だからだ。そして、自己変異、成長する為に必要なステップになるからだ。
その俵 正春・・浦部に只者では無いと看破されつつ、謙遜する。
「商売柄です。自分なりに整理して、浦部さんのアドバイスも参考にさせて頂きました」
「熱心で頭が下がります」
政春の博識さと同時に、生真面目で几帳面な性格を見て、感心しながら浦部はその小雑誌を眺めた。




