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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第3章 蠢きだす闇
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第85話 戦前の祭り


 8月17日


 AM10:00



「テメーらあああ! 準備は良いかあああ?!」


「「ウオオオオオオ!!」」


 ゼオルクの街にある闘技場で、マークのおっさんが大声を響かせると多くの観衆も大声で応える。

 しかも珍しくスーツを着ていて、白いワイシャツに灰色のネクタイを結んでいた。


「帝国をブッ潰す前にカズ主催のイベントを開催だコノヤローー!」


「「ウオオオオオオ!!」」


「今回のイベント参加者は6人!! 憲明!! 美羽!! 一樹!! 玲司!! 沙耶!! そしてラーティム国のテオが参戦だコノヤローー!!」


「「ウオオオオオオ!!」」

「「王子頑張れええ!!」」


 歓声と共にテオを応援する人達の声も混じっている。ラーティム国の兵士達なんだろ。


「今回カズが用意したのは!! なななんとおお! あのカラミティー・ドラゴンの幼体だチクショーーめが!! つーーいに生まれやがったぜー!!。」


「「ウオオオオオオ!!!」」


 マークのおっさんが大声でそれを伝えると多くの人達がより興奮し始め、闘技場は熱気に包まれていく。

 でも一度「まぁまぁまぁ、落ち着け」と言いながら両手で静かにしろって言いながらジェスチャーをすると、会場は徐々に静かになった。


「よっしゃテメー等これを見やがれ!!」


 次に両手の人差し指を立て。頭上にある大きな液晶モニターを指差す。

 なんで闘技場に巨大な液晶モニターがあるんだよって、言いてえけど、それはあえてツッコまなかった。それでそのモニターには、カラミティー・ドラゴンの写真が大きく映し出された。


「これがカラミティー・ドラゴンだコノヤロー!!」


「「お〜〜!」」


「しかもだ!! このカラミティー・ドラゴンは世にも珍しい白銀色だバカヤロー!! あのカズが大切に卵を守り!! つい先日産まれたばかりなんだとよコノヤロー!!」


「「ウオオオオオオ!!」」

「スゲエエェェェェ!!」


 会場にいる人達はカラミティー・ドラゴンの写真の他に映し出されたステータス情報を見て、更にヒートアップしていく。


「テメーラーー!! 盛り上がってるかああ?!!」


「「ウオオオオオオ!!」」


「早くバトルを見たいか?!!」


「「ウオオオオオオ!!」」


「カラミティー・ドラゴン最高かああ?!!」


「「ウオオオオオオ!!」」


「俺も最高かああ?!!」


「「ウオッ?!……」」

「え?」「は?」


 変な事を言うもんだから会場が一気に冷めたじゃん……。


「と、取り敢えず楽しめテメーラー!!」


「「ウ……、ウオオオオオオ!!」」


「さあ誰が勝ってこのドラゴンを手にするのかを予想しながら金を賭けやがれテメーラー!!」


「「ウオオオオオオ!!」」


「今のオッズはこうだコノヤロー!!」


 再び画面を指差すと、そこには俺達の写真と一緒にオッズが表示される。


 テオ、2.2。美羽、4.8。憲明、9.5。沙耶、12.7。一樹、47.1。玲司、134.9。


 オッズは人気がある順で表示されてるみたいで、どうやらヤッさんが1番人気が無い……。


「さあ!! まだバトルは始まらねえ!! 賭けてえ奴はどんどん賭けやがれコノヤロー!! もうじき締め切るからその前にさっさと賭けやがれ!!」


「「ウオオオオオオ!!」」


 会場が熱気で暑くなり、誰が誰に賭けているのかを話し、より盛り上がったみてえだ。


 その頃、会場の控え室には1人1人が控え、個人個人が軽くトレーニングをしたり、瞑想(めいそう)をしたりしていた。


 それから(しばら)くした後、会場にカズが現れると更に観客は盛り上がった。


「ヤロー共! このイベントの主催者であるカズの御登場にもっと盛り上がれやああ!!」


「「ウオオオオオオ!!」」


「カアァズゥゥゥ!! な〜にか一言!! 言ぃちゃってくれい!!」


 そう言われ、カズはマイクを手にした。


「今日は帝国との戦争の前にこんなイベントを主催して申し訳ない。だけど、だからこそ俺はあえてこのイベントを急遽(きゅうきょ)主催した。本来なら俺のチーム、"夜空"や友人テオの為の勝負だ。だけどよ、やるなら皆んなにも楽しんで貰いてえからこんな形をとった。それに知って欲しかったんだ。まずは肩の力を一旦抜いて楽しもう。息抜きは大切だ、そうだろ? いつまでも空気を張り詰めてたら思考が鈍る。良い仕事が出来なくなる。緊張するだけが全てじゃねえ。娯楽(ごらく)は大切だ、そうだろ? それに賭けに負けたならその怒りを帝国にぶつけてやれ、八つ当たりしてやれ。さぁ、今日はとことん楽しんで見てってくれ!」


「「ウオオオオオオ!!!」


「俺は今日、このイベントの主催者だが公平を期すため、バトルの審判はしない。だから今日のイベントの審判をこの人に頼んだ。紹介しよう。ジャッジメントを務めてくれるのは……」


 カズの言葉に皆、息を呑む。

 俺もその1人だ。俺は控え室で中継画面を見てたからな。

 俺はいったい誰が審判をするんだろうって、頭の中で思い浮かべられる人達の顔を浮かべた。


 ウルガさん、ネイガルさん、先生、御堂さん、犬神さん、それともまさか親父さんか?


「ジャッジのほう、宜しく」


 するとカズの後ろにある出入り口からとある人物が姿を表すと、更なる歓声が沸いた。


「私がジャッジします」


 陸将?!


 ジャッジメントがまさか稲垣陸将でビビった。


「なんで自分がと思いましたが、まぁ良いかと思い、了承しました」


「「ウオオオオオオ!!」」

「陸しょぉぉぉぉぉ!!」」


 会場の中に、ちらほらと自衛隊の人達まで来てるのが映ってるし……。


「んじゃそろそろおっ始めるぞテメーラー!!」


「「ウオオオオオオ!!」」


 画面にマークのおっさんが映し出されると。その前には透明な箱が用意され、その中に手を入れると1枚の紙を出した。


「まずはコイツだ!!」


 紙を広げるとそこには名前が書いてある、マークのおっさんはその紙に書かれた奴の名を読んだ。


「まず1人は!! カ~ズキィィィ!!」


 1人目は一樹か。


「2人目はコイツだ!! サ~ヤァァァ!!」


 2人目は沙耶。

 風と水、どっちが勝つかな。


 そう思ってると、画面に一樹と沙耶の写真が映し出され、【一樹VS沙耶】って表示された。

 稲垣陸将は階段を降り始め、闘技場の中心に歩いていき、中心に到着するとマークのおっさんはいきなりキリッとした真面目な顔に変え、一樹と沙耶の2人を改めて呼んだ。


東ゲート(青コーナー)、一樹選手、入場」


 東ゲートの門が開くと、そこから一樹が姿を表す。


西ゲート(赤コーナー)、沙耶選手、入場」


 続いて西ゲートから沙耶が出て来る。


「ここでバトルのルールを説明します。パートナーモンスターはそれぞれ1体だけとし、モンスターの交代は禁止です。また、このバトルにおいて殺しは勿論 絶対に禁止。殺さない程度であれば何をしても構いません。しかし、金的攻撃は反則攻撃と見なし、即反則負けとなります」


 すると画面に映る2人の写真の下にオッズが表示され、同時に投票締切の文字が出る。

 2人のオッズは先程と変わらねえ。

 沙耶と一樹は何時でも始められると言った体制になると睨み合った。


「沙耶、悪いが勝たせてもらうぜ?」


「へ〜? 私に勝てる自信あるの〜?」


「用意は良いかな? それじゃ……始め!!」


 2人が軽く話をした後、稲垣陸将が準備は良いか確認を取り、大きな声で開始の合図を出した。


 2人のバトルは見てて面白かった。

 沙耶は風を操って、"F2"って竜巻の技を作って一樹を攻撃し、隙を見てはガルを投げての爆発攻撃。

 良いコンボだって思った。まさか沙耶が、いつの間に竜巻系の技と言うか、魔法? を手に入れたんだって思ったけど。

 対する一樹は"ウォーター・プリズン"とかを使って沙耶の動きを封じようとすっけど、沙耶は風を使って上空に回避したりと上手くかわし、終始一樹を翻弄(ほんろう)し続けた。


 結果。


「勝者! 沙耶!」


「「ウオオオオオオ!!」」


 バトルは沙耶が勝った。

 でもピノとダークス、この2匹の戦いはダークスに軍配が上がる。

 ピノが落ち込みながら沙耶の元へと戻ると、沙耶はピノに「どうしたの?」と声をかけ、何があったのか全然気づいていない。

 ダークスは沙耶の攻撃をまともに受けて気絶した一樹の足をハサミで掴み、そのまま東ゲートへ引きずって戻って行く。


 ……何があったのかと言うと。


「いやぁぁ、なかなか面白いバトルでしたね」


「そうですね」


 マークのおっさんとカズが、解説者席に座ってその戦いぶりを振り返る。


「あそこでアレが来るとは予想もしてませんでしたね。今のを御覧になってどう思われますか? 和也さん」


「確かにまさかアレが来るとは私も思いませんでした。ですがそうですね、今回はまぁ運が無かったからだと思います。あそこでまた違った()()()を捨てていれば、きっとピノが勝っていたと思います」


「やはりあそこで()()()()2()()()()()()5()を捨てたのが痛かったですね」


「そうですね」


 カード、クラブの2、クラブの5。

 ピノとダークスが何をしていたのか察しの良い奴なら解ると思うけど、2匹はトランプを使って、()()()()()()()()で勝負してたんだ……。

 なんでそれで? ってなっちまうけど、これがなかなか面白かったんだ。

 きっと沙耶は、いったい何のことなのか理解出来ないまま戻ったと思う。


「さあ!! 続く戦いはこれだ!!」


 マークのおっさんがまた箱の中から紙を出し、名前を読み上げる。


「まずはコイツだ!! ミ~ウゥゥゥ!!」


「「ウオオオオオオ!!」」


「2人目は!! レ~イ~ジィィィ!!」


「「ウオオオオオオ!!」」


 次は美羽とヤッさんか。


 2人がどう動くのか、と言うより、俺は美羽がどう動くのか注目していた。


さて、今回のお話は実にシンプルです。

"カラミティー・ドラゴン"の幼体を手に入れるため、憲明達はバトルを始めます。

憲明、美羽、沙耶、一樹、玲司、テオ。この6人による勝ち抜き戦。

果たして、カラミティー・ドラゴンの幼体は誰の手に?


次回もお楽しみに!

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