第341話 vs氷帝 1
「ここでテメーをブッ殺しゃ、後々楽になるだろうな」
<では殺されないようにしないといけませんな!>
バランは鋭い牙が並ぶ大顎を開け、鋭利な爪でコンクリートを簡単に破壊しながら守行に突進する。
「嘗めるなよ?」
守行は向かってくるバランに対して堂々と立ち。コンクリートさえ簡単に切り裂く爪を避けると低姿勢からのアッパーカットを大顎に叩き込む。
<ヌッ……グッ……!>
「本気を出してるならちゃんと本気で来ねえでどうすんだアホンダラが」
<カッ……!>
続けて鋭いフックを顔面に叩き込んだ事でバランの巨体が大きく揺れた。
軽い脳震盪を引き起こし、バランス感覚が狂ったからだ。
「こっちはテメエが本気を出したからそれに応えてんだぞ。それにだ、伊達にアイツの父親してねえぞ。アイツを育てたのはオイ、……この俺だぞ? 温い事してくれんなよ?」
<そう……でした……ね>
「だったら頭を一度冷やしてから出直してこい!」
ふらつくバランの腹に守行の拳が深くめり込み、今度はその巨体が大きく吹き飛ぶと建物を破壊し、その姿が瓦礫等で見えなくなる。
「このバカタレが、こちとらとっくにテメェがバランだって事は気づいてたんだよ。そのテメェがなに今さらこの俺を前にして手ぇ抜いてんだ、あ? ざけんじゃねえぞこの馬鹿骸がよぉ。テメェが正体隠していたからこちとらそれに気づかねえようにすんのは大変だったんだぞボケが。反省してから出直してこい反省したら。それまでどんだけでも待ってやる」
<……>
バランが動かない。
気絶してるからなのか、それとも守行の言葉に反省してるから動かないのかも解らない。
「……骸、オメェ、本当はわざと俺に殺されに来たんだろ」
わざと殺されに来た。
その言葉に反応したのか、瓦礫が僅かに音をたてて崩れたのを守行は聞き逃さなかった。
「それが仁義を守る為だと思ったか? 馬鹿が……、テメェには憲明と交わした約束、倅と交わした約束があんだろ。その約束をテメェは無碍にするつもりか? だとしたらとんだ間違いだぞ。それにだ、テメェは絶対零度の支配者、氷帝と呼ばれる存在なのに、どうしてテメェが今いる建物が壊れねえんだ? その時点でテメーが力を抜いてる証だろ! 違うか! あっ?! 違うなら何か反論してみやがれ!」
すると瓦礫に埋もれたバランが大声で泣く。
余程、守行に指摘された事が効いたのだろう。
「泣け……、今は泣いてスッキリしちまえ」
守行だからこそ、バランが来た理由に気づけた。
だからこそ、守行はバランではなく、骸と、その名前を呼んだ。
「アフリカでお前を見た時はビックリしたもんだ。なんせ、まさか確認されてねえ奴と遭遇しちまったんだからよ。そんなお前が倅を前にして硬直し、頭を垂れた。……俺はな骸、その時、お前に恐怖を感じた。その理由ってのが既に倅が冥竜王の生まれ変わりだって知ってたからだ。だからこそ、そんな倅を連れてくんじゃねえかってビクビクしてたさ。……そんなお前と何年一緒に暮らしたと思っていやがる。おい骸、もう一度言うぞ? テメェが凶星十三星座だろうとなんだろうとな、テメェはもう、俺の大事な家族なんだよ。そんなテメェが生半可な覚悟で俺に殺されにくんじゃねえ、ましてや敵だろうとテメェは何があっても死ぬな、生きろ、そして最後まで見届けたら帰ってこい。いいな? 親父である俺との約束だぞ? 守らなかったら死んでようがなんだろうがテメェをブチのめしに行くからな?」
そこまで話し、守行が確信をつく事を言ったからこそ……。
再び場の空気が変わる。
バランの姿を隠している瓦礫がどんどん氷、それは次第に建物全体へと及ぶ。
<……感謝、申し上げます、……父上>
その直後、建物が粉々に粉砕するとそこには何か吹っ切れた様子のバランが佇んでいた。
<……正にその通りです。私は貴方に殺されに来ました。……私は凶星十三星座のNo.Ⅴ、しかし……、私もまた貴方を家族と思っておりました。だからこそ……、だからこそ! 私は貴方を裏切った事に後ろめたさがあり、これまで恥じていた>
雨が雪へと変わる。
<……そんな私を罰してくれるのは誰でしょう、他ならぬ、貴方意外考えられませんでした……>
「……この……馬鹿息子が」
<私は生きます! そして2人と交わした約束を果たしましょう! ですが今! あの御方の望みが叶えられる為に! 例え少しでも今は!>
「んじゃ来やがれ、こっから先は親子喧嘩だバカヤロウが。だが本気で殺すつもりで来い」
<行かせて頂きます!>
親子喧嘩。
絶対零度の支配者であるバランと、鬼神と呼ばれる男が本気でぶつかり合う喧嘩。
<"婆娑羅"!>
「俺にそれが通用すると思ったか!」
迫り来るバランの"婆娑羅"は以前、天使のユグドラシルをズタズタにした攻撃であり、ただの突進とは違う。それを、守行は正面から全ての攻撃を拳で迎撃し、掠り傷一つ与えられない。
<(やはり強い……!)>
全てを見切り終えた守行のカウンターが眼前に迫るが、バランもまたそれを見切ると避け、距離を取ると今度は魔法による攻撃に移る。
<"氷柱舞"!>
「ふんっ!」
<"氷刃"! "氷雪槍"!>
「ぬるい!」
立て続けに放つ氷雪系魔法を、「ぬるい」の一言だけで全てを拳で破壊する。
「どしたあ! まだまだ俺の力はこんなもんじゃねえぞお!」
<氷雪地獄ノ獄ノ門、氷華ノ花弁舞散ル氷ノ刻>
「(……"嘆きの華"か) 受けて立つ」
<魔氷ノ鏡ニ睡蓮花! 八寒地獄ノ華ヲ咲カシテ静寂ナル時ノ調ベニ激昂無情ノ静寂ヲ! ……氷雪月光無情華>
詠唱を唱え終えるとバランは暫くの間、守行と目を合わせる。
<……>
「……来い」
ー "嘆きの華" ー
バランの周りに白く美しい、巨大な氷の花が咲き。その花が爆発し、周囲へ飛散するとそれは周囲を一瞬にして氷雪世界へと変えた。
建物は凍てつき、舞い降る雪は巨大な結晶となってぶつかる物全てが凍る。
そして、守行はと言うと。
「……こんなもんか」
<……>
多少は凍ってしまっているが無事だ。
「なんだ? あんまり驚かねえんだな」
<……貴方がどれだけ強いのか、私は勿論、ゼストとパンドラも知っておりますからね>
「……なんだ? もしかして、バレちまってるのか?」
<……我々三名だけですが>
「……そうか、なるほど、だからお前が来たのか……。倅にはまだ話すなよ?」
<勿論ですとも。ですが、バレるのは時間の問題では? 先程話されたではありませんか。あの方を育てられたのは他の誰でも無い……、貴方御自身なのですから>
「ふん、そうだったな」
身体に着いた氷を壊し、どこか寂しそうな、なんとも言えない顔で微笑みながらバランの方へと歩みだす。
「本当はずっと隠しておきたかったんだがな」
<ですが今、世界がこうなってしまったのですから隠す事は困難かと>
「……だな。だからお前はその真実をも明るみにする為に、ここへ来たって訳だ」
<…………肯定です>
「ふん! 色々とメンドクセー事を画策しやがって馬鹿共が。…………だったらそんなお前らに、俺の恐怖を叩き込んでやる」
瞬間。
<ガッ?! ……ハッ!>
又もやバランの腹に守行の拳がめり込むと宙に浮く。
「歯あ食いしばれよ?」
皆さん! 明けましておめでとう御座います!
2026年になってしまいましたね!
本当ならこのページはもっと早い段階で完成していたはずなのに、中途半端な状態で公開予定してしまって申し訳ないです(;_;)
しかーし!
そんな時もあると思ってまた頑張りますし! 今年は去年よりもっと頑張りますので今年もどうか宜しくお願い致します!!




