第334話 不気味に笑う仮面
銀月を警戒してるように見えるけど、それでもまだ余裕があるって感じがする。
「ではこうしようじゃないか」
何をしようとしてるのか解らねえけど、指を鳴らし、ただそこに立つだけで何もしない。
……指を鳴らしただけでなんにもしねえじゃねえか。
でもその考えは間違いだって事を直後に知る事になる。
強烈な空気の弾丸が俺達を襲い、マズイと感じたヤッさんが前に出て皆を後ろにし、大盾で次々と飛んでくる攻撃を防いでくれた。
「んだよこれ! どっから狙ってきてんだよ?!」
「考えにくいけど遠距離から攻撃されてるのは防いでる僕がなんとなく解る!」
「だからそれがどっから飛んで来てるって言うんだよ?!」
そう叫ぶ一樹とは違い、美羽は冷静に分析していた。
「方向から考えると北東。速度、威力、考えるだけでもあり得ない……」
「何があり得ねえって?!」
「北東方面から撃たれてるのは解るんだけど、誰が撃ってるのはかまったく見えないの」
「はぁア?! んなもん見える訳ねえだろ!」
この時の俺は美羽が何言ってんのか理解出来ないでいたけど、それが"支配眼"の力の一部って知るのは後になってからだ。
「嘘、まだ見えない。……千葉? ……違う」
「見えるならなんだって良い!! 早くこの攻撃をしてくる奴を見つけてくれ!!」
「焦らせないでよ。…………え? まさか……"茨城"?」
「はぁア?!」
ちょっと待て! "茨城エリア"からだと?!
"茨城エリア"と言えばアイツを思い出す。
「……見つけた」
「おい美羽! "茨城"ってまさか! 冗談だよな?!」
「……"アフティオアメス"」
マジで冗談キツいって!!
下手に手を出したらマズイと判断したモンスター、それが"アフティオアメス"。
だけどそんな"アフティオアメス"をそれでもどうにかして倒さなきゃ、凶星十三星座になんて勝てるわけねえし、カズの前まで辿り着けない。
早くなんとかしなきゃとは思っちゃいたけど今のタイミングでかよ!
「おやおや、守ってもらってばかりで良いのかい? それで彼の前に辿り着けるとは想像出来ないね」
言わせておけばこのクソヤロォ……ッ!
「彼は君達の為にも離れ、もう帰っては来ない。この意味が解るかい?」
「あぁ、解らねえよんなもん! クソッ! なんとかなんねえのかよこの攻撃!」
「無茶言わないでほしいなぁ、美羽の話じゃ"茨城エリア"にいる"アフティオアメス"の攻撃なんでしょ? 攻撃を防ぐだけで下手に動いたら、奴の攻撃が当たる!」
「ちっ!」
確かにそうだし距離がありすぎる!
いやちょっとまて……、その前になんで、コイツは"アフティオアメス"から攻撃されない? "アフティオアメス"はカズがテイムしてるモンスターじゃねえのか?!
SSSランク、"絶滅種"、あのフューラーとかですら可愛く見えるような怪物。
そんな奴を、あのカズ以外の奴がテイムしてるとは思えなかったし、信じたくもない。
けど認めなきゃならねえんだろ。
「……おい、テメェがあの"アフティオアメス"をテイムしてんのかよ?!」
「……その通り、私が主だよ」
「いったいどうやって!」
いや、そんな事を考えてる暇じゃねえ。
「……美羽! イリス! お前らならなんとか出来るよな?!」
「出来ないかじゃなく当然みたいに聞くなんて」
「まっ、俺、じゃなく、私らなら出来るだろ美羽姉」
危険のは分かってる。だけどこの状況を逆転させる事が出来るとしたらこの2人以外考えられねえ。
「頼む!」
「ははっ、ノリちゃんに頼まれたんじゃ断れないよね。ね? 銀月?」
<"アフティオアメス"、いずれはどうにかしなければならない相手ですからね。では、先に行っております>
銀月は"アフティオアメス"の攻撃を雷で作ったバリアでガードしつつ、巨大な翼を広げて飛んで行く。
「それじゃ私達も行こうか」
「了解!」
続けて美羽は竜の姿に変身し、その背中にイリスが乗ると銀月を追いかける。
ここでビビってるわけにはいかねえよな?
「"アフティオアメス"は美羽達に任せて俺達はコイツをぶっ倒すぞ!」
ましてや俺達はあの凶星十三星座達と一度戦って生きている。
ヤッさんや一樹なんてどうにか勝てたんだ。こんな奴に勝てねえなんて、そんなのありえねえ。
暫くすると"アフティオアメス"の攻撃が止み。俺達は再びノーフェイスに攻撃を仕掛けた。
「まだまだ青いね君達は」
「うっせ!」
「私がいつまでも手加減するとは思わないことだ」
その言葉の後。
俺達は誰も動けなくなった。
「なっ?! あっ……!」
「私はね、弱者をいたぶるのは余り好きじゃないほうでね?」
「なんだよ……! お前?!」
「また私が誰かと聞くかい? 学習能力がこんなにも低いと流石に泣けてくるからやめてもらえないだろうか? 私はノーフェイス。"邪竜教"のリーダー。そして、私も又、いと尊きお方へ絶対の忠誠を誓いし者。そしてあらゆる世界の滅びを願いし者」
ノーフェイスから漂ってくる異様な気配や威圧感に恐怖し、体が動かない。
「君達は何も解っちゃいない。人間はもっと住みやすい世界にする為にと、この世界を破壊している。水を汚染し、空気をも汚染した。光を忘れ自ら破滅へと向かう者達に終焉を! 破滅を望む者に安らかな死を!」
そう語るノーフェイスの仮面が、少しずつ割れる。
「滅んでも良いじゃないかこんな世界! 死とは全ての命に与えられた唯一の平等であり希望! それを与えられるのだから逆にそれを嬉しく思わないでどうする! 君達は間違ってる! あらゆる咎から解放されると言うのに何が不満だと言える?! 君達が背負いし罪すら無くなると言のに、どうしてそこまで拒むのか、その理由が私には理解出来ない」
割れる仮面がまるで、不気味に笑ってる様に見える。
「あの御二人の幸せを奪った世界、今更そんな世界など、私には何の価値も無いがね?」
「うっ?!」
不気味に笑っている様に割れた仮面の向こうから、不気味に光る目が幾つも見える。
人間とかじゃ、ねえんだな……コイツ。
「おっと、仮面が割れてしまった」
仮面が割れた事で俺達はあることに気づいた。
「少し興奮してしまったようで申し訳ない」
声がバラバラだって事に
「さて、続きを始めようか」




