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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第4章 炎と結晶
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第134話 炎と結晶0<ゴジュラスside>


「ゴジュラス、やるからには手を抜くなよ?」


<分かっております>


 主人(あるじ)に連れられ、「先に飯食うか」と言うことで食事をすることになった。


「はい! おまちどうさま」


「旨そうだな」


<はい>


 連れてこられたのは、"りっちゃん"と呼ばれているオークの女主人が(いとな)んでいる店。

 本来、そこは居酒屋であり、今の時間は勿論営業時間外な為、店の看板は準備中になっている。

 しかし、主人(あるじ)とは昔からの知り合いと言うこともあって、食事を提供して頂くことになり。我々は裏庭にまわってそこで食事をすることが出来た。

 何故ならば、私の体が御店に入りきらないからだ。

 無理に入ろうものなら破壊しかねないのでな……。


 ありがたいものだ。確かに食事をしなければ、満足に動けなくなる恐れがあるからな。


「しかしまさかアンタんとこの子がゴジュラスとアリスちゃんの卵が欲しいだなんてね~。アンタ、沢山食べて迎え撃ってやんな」


<あっ、はぁ……>


 この、りつと言う方に。私は勿論、アリス達はこの街に来てからずっと御世話になっている。

 勿論それは街に住む者全てと言えよう。

 だが特に、私達はこの方を"りつ子"さんと呼んで(した)っている。

 この方には大変御世話になっているからだ。


「でもゴジュラスが本気を出すならノリちゃんに勝ち目が無いんじゃないの?」


「んなもん分かってる。アイツだってそのことぐらい理解してる筈だ。正直に言うとゴジュラスは勝ち負けで決めたい訳じゃねえんだよ。そうだろ?」


<ははは、流石 我が主人(あるじ)。見抜いておられますか>


「当たり前だ、お前にアイツが勝てる訳がねえんだよ」


 (かな)わんな、本当に……。


 そう、私は別に勝ち負けで決めたいとは思ってなどいなかった。

 私とアリスは、憲明に我が子を(たく)すに値する価値があるのかどうか、それが知りたかったのだ。

 それを我が主人(あるじ)は既に見抜いておられる。


 だがそれ以前に。見極めるのでは無く、見て見たいと言う気持ちもある。


 憲明が主人(あるじ)と共に行動しているのは知っている。しかし、私が憲明と共に行動したのは、バルメイア戦の時だけであり、憲明自身がいったいどれだけの実力があるのか私はまったく知らない。


「ねえゴジュラス。勝ち負けで決めないならどうやって決めるつもりなの? ノリちゃんが信用出来るのか出来ないのかなの?」


<そうだな、信用出来るのか出来ないのかの問題もあるが、見極めたいのだ>


「見極めたい?」


 美羽はまだ、私の真意に気がついていない。

 だから私は話した。彼女は主人(あるじ)を救ってくれた大切なパートナーであり、主人(あるじ)と愛し合っている者。つまり、我々にとっても彼女は家族の一部なのだ、このまま黙ったままと言う訳にもいかないだろう。


「なるほどねぇ。確かにそれは一利あるね」


 故に、話を聞いた彼女は理解を示してくれた。


「んじゃ尚更手加減とかしたら駄目だよ?」


<無論、そのつもりでいる>


 とは言うが、私と憲明との戦力を考えるに、手加減しなければ死なせてしまいかねないと簡単に想像することが出来る。

 何故ならば、私は主人(あるじ)より究極の力のひとつ、"進化"のスキルを与えられて今に(いた)り、その過程で最高とも言うべき能力をも得たからだ。

 ましてや私は()のモンスターとは訳が違う。


「はいよゴジュラス。アンタの好きな()()()()()()だよ」


 ふむ。何時もながら見事な焼き具合だと匂いだけで解る。


<いただきます>


「ふふっ、一杯食べて行きなね」


 う~む、この鼻腔(びこう)(くすぐ)るこの香りが私の食欲を掻き立ててくれる。


 私はりつ子さんが焼いてくれる、この子牛の丸焼きが特に好きなのだ。

 何種類ものスパイスを独自に配合し、それを揉み込んでからゆっくりと丁寧に焼いていく。

 丸焼きなのだから、本来ならかなり手間暇と調理時間が掛かる。しかしりつ子さんの手に掛かれば不思議とそこまで時間を掛けずに焼いてしまう。

 その秘密はりつ子さんのスキルにある。


 "料理人"


 そのスキルこそが全ての秘密に繋がるのだ。

 無論、主人(あるじ)が御作りになられる料理は全てが美味。


 ふむ、主人(あるじ)に続いて次に料理を食べて旨いと思えるのは、このりつ子さんだろう。

 何時もながら良い仕事をしておられる。


<本日もりつ子さんオリジナルのスパイスが効いておりますな>


「だろ? ほらヒスイもお食べ」


<クルルッ>


 ヒスイは料理に興味があるのか、主人(あるじ)が御作りになられる時や、りつ子さんが料理をしている時はいつも邪魔にならぬように、真剣に見ている。

 それだけではなく、主人(あるじ)の身の回りの御世話等を、どこで習ったのかおこなっている。

 まだまだつたないが、私が見るかぎり光るものがあるように思えた。


 お前ならいずれきっと、主人(あるじ)にとって優秀な執事(バトラー)になることだろう。


<クルッ?>


<ん? いや、なんでもないさ>


 それにしても私は運が良い。

 夜城和也と言う、素晴らしき主人(あるじ)(つか)える事が出来るのだからな。


 だが私は、(ムクロ)を始めとした()()の足元にすら届いていない。

 だからこそ、私を家族に迎え入れて下さった主人(あるじ)の顔に、泥を塗るような事は決してしないと心に誓いをたてた。


「どうした、なにか考え事か?」


<いえ、そうではないのですが>


 私はどれだけ手加減しようかと悩んだことで、食事が止まってしまっていた。


「まっ、お前の好きなようにすればいいさ。お前の事だ、どれだけ手加減すれば良いかって悩んでたんだろ?」


<……バレて、ましたか……>


「逆にバレてねえとでも思ったのか?」


 本当に、(かな)わないな、この方には……。


「だがビシッとケジメはつけさせろ」


<御意に>


「お前達が良いって思ったんだからそれで良い。裏を返せば俺だってお前達から子供を譲ってもらうようなもんだったんだ。それが俺じゃなく、憲明になるだけなんだしよ」


 それは違います主人(あるじ)……。


<我々は主人(あるじ)と出逢い、テイムされて家族となれたのです。故に、我々の子供は必然的に主人(あるじ)の家族になるも同然なのです。ですので、主人(あるじ)には正当な権利がおありかと>

 

「でもお前達は俺じゃなく憲明を選んだ」


<……申し訳ありません>


 すると、そこで主人(あるじ)は明るいお顔で笑われた。


「気にすんな。俺もアイツになら良いかって思ったんだしよ」


 少し寂しげではあったが、晴れ晴れとした笑顔。

 主人(あるじ)も憲明なら信頼出来る筈だとお考えだったのだ。

 そして、その選ぶ権利を主人(あるじ)は私達にお与えくださり。私達は憲明を選んだ。


 しかし、その前にはケジメをつけなくてはならぬし。本当に我が子を託すに値するのか試さなくてはならぬ。

 だが、彼ならきっと主人(あるじ)と私達の期待に応えてくれる筈だろう。


 私は少なからず憲明を信じていた。

 憲明ならばきっと応えてくれる。望んだ結果を示してくれると。


「ゴジュラスのその優しさって誰に似たんだろうね~?」


「ん?」


 美羽がそう言って微笑んで聞いていたが、主人(あるじ)は解っておられなかった。


<それでしたら、誰に似たんでしょうな?>


 私も微笑み、主人(あるじ)の顔を覗くと。


「言ってろこのヤロゥ」


 そう言って、私達は食事を楽しみつつ笑った。

 

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