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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第4章 炎と結晶
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第133話 お願いします


 ーー 数日後


 気にかけていた卵は無事だけど、やっぱり他の3つはダメな様で、既に腐り始めていた。

 カズはその卵を埋葬(まいそう)してやろうって、ゴジュラスとアリスに伝えると部屋の一角に埋めてやる事にした。

 悲しかったかけど、結局その3つは無精卵だったってこともあるし、その卵には命が宿っていなかったんだから仕方がないのかもしれねえ。

 けどもうひとつはどうにか無事だと知って、俺達は心から安堵した。


「カズ、卵が(かえ)るのはいつ頃になりそうか解るか?」


「解る訳ねえだろ。ただ、俺が力を少しづつ与えた事だし、かなり早く誕生するとは思う」


「そっか、その日が楽しみだな」


 その日が楽しみでならねえな!


「なあカズ……。この子が産まれてきたらよ。俺にテイムさせてくんねえか?」


 俺は思いきって勝負に出た。


「は? なに馬鹿な事を ーー」


「無理言ってんのは百も承知だ! お前がこの子が産まれて来るのをどれだけ楽しみにしているのかってのも知ってる! でも頼む! 金を寄越せって言うなら時間は掛かるけどどんだけでも払う! だからどうか俺にテイムさせて欲しい! 俺の家族として迎え入れたいんだ!」


 俺は生まれて始めて土下座した。

 無理言ってんのは解ってるさ。だけどやっぱり諦めきれなかった俺は、なんとか産まれてくる子供を引き取らせてくれって頼み込んだ。


「馬鹿が、金の問題じゃねえんだよ」


 だけど、カズは眉を八の字にした凶悪な睨みを効かし、俺は拒否された。


「オメェの気持ちは分かっけどよ。それは無理ってもんだぜ?」


「そこをなんとか!」


「だから()()()()()。テメーは()()()()()()()()()()()()、ボケが」


「どうかお願いします!」


「だ〜から()()()()()()()()()()()()、このアホがぁ」


「俺、ずっとお前が羨ましかったんだ! 俺もいつかお前の様にラプトルをテイムして、一緒に旅したり、バイクで走ったりとかしたいんだ!」


「俺の話しを聞いてんのかこのボケナスがぁ」


「だからこの通り! お願いします!」


 俺はこの時、まったくカズの話が耳に届いていなかった……。


「このアホボケがぁ、だから俺に言っても ーー」


「お願いします!」


「て、テメェ……」


 後から聞いた話し、この時の俺はマジであまりにも話を聞いてないから、カズは歯を食いしばりながらどうにかその怒りを抑えようと必死だったんだってさ……。ははっ……。


「お、俺の話を ーー」


「お願いします!」


「聞けよ! おい!」


 周りからしてみれば、最早一種のコントを見せられてるって思ったらしく。その様子を見ていた美羽達はどうにか笑うのを(こら)えようとして体を震わせてたんだとか……。


「お願いします! お願いします! お願いします!」


「ぶ、ぶっ殺して……いいか?」


 最早我慢の限界だと言わんばかりの顔で美羽はカズに聞かれて、その美羽は笑いを(こら)えながら頭を横に何度も降ったらしい。


「ノ、ノリちゃん、ちゃんと、ちゃんとカズの話を聞いて、あげて」


 そこでようやく我に返った俺が美羽を見ると、我慢できなくなったのか笑い出し、それを皮切りに一樹、ヤッさん、沙耶、桜ちゃん、志穂さん。全員が一斉に笑い始めた。


 ……はい?


 俺はどうして皆が笑っているのか解らず、首をかしげた後にカズを見ると……。

 そこには何とも言えぬ怖い顔をしたカズが俺を睨んでるじゃありませんか……。


 あ、あれ~? やっぱブチギレ寸前になっておられる~……。


 そう思って全身から大量の汗を一気に流し、めちゃくちゃ震えた……。


「テメェ、いい加減、俺の話を聞けこのボケカスがぁ」


「は、はい……」


「俺に頼んだって仕方ねえんだよ。頼む相手がそもそも違えんだよこの馬鹿が」


「……え?」


「え? じゃねえんだよ馬鹿。その話をするならアイツらにしろ。この……馬鹿が!」


 最後に怒鳴られて、向こうだって指差したのはゴジュラスとアリスだった。

 そのゴジュラスとアリスは俺の馬鹿さ加減に呆れ果てているのか、疲れた様子で見ていたし……。


「え? え? ……え?」


 でもその時、俺はまだ理解出来ないでいた……。

 するとカズはそんな俺の胸ぐらを掴み、ゴジュラスとアリスがいる所まで引きずって行くとその場で改めて土下座した。


「ゴジュラス、アリス。この馬鹿がお前らの子供を引き取りたいんだと。どうするよ? まぁどうするかはお前達に任せる」


「え? つまり、カズにじゃなくゴジュラス達に頼めって事か?」


「俺……、さっきからそう言ってなかったか? ん〜?」


 俺は頭を鷲掴みされ、その凶悪な握力で握られた。


「あっ! ゴメ! ちょっ?! あぁっ!」


 や! ヤバイ! 頭が潰れる~!


「理解したんなら、ちゃんとゴジュラスとアリスに頭下げて頼めこの馬鹿があぁ!」


「はいいぃぃぃ!!」


 そして俺は頭を地面に向けて投げられると、頭を打ち付けた。


「いってえぇぇぇ……」


 マジでいてぇ……、あぁ……、なんか世界がぐるぐる回ってる~……。


 俺が目を回していると、今度はソラが俺のすぐ側に立っていた。


「そ、ソラさ〜ンッデッ?!」


 でもそのソラさんが俺に銃口を向けているじゃありませんか……。

 しかも、今度はカノンが俺の頭をぐりぐりと踏みつけてくるし、クロも来ると3匹してゴジュラスとアリスに頭を下げた。


「ん? ん? ……えっ?」


 俺はその時、どうしてクロ達まで頭を下げてるのか理解出来ないでいたけど。徐々に冷静になっていくにつれて、それは俺と一緒に頼んでくれているんだって気づいた。

 ゴジュラスとアリスは理解してくれていて。<頭を上げてくれ>ってゴジュラスが言うと、カノンは俺の頭から足を退()けて後ろに下がり。ソラは銃をホルスターにしまう。クロはクロでそのまま座っていた。


「ってええぇぇぇ、マジで痛えぇ……」


<憲明>


「ん? あっ、はい!」


 ゴジュラスに呼ばれ、俺は今一度その場で姿勢を正し、再び正座の姿勢でゴジュラスを見上げた。


<お前はそんなに私達の子供が欲しいのか?>


「はい……、はい、欲しいです! 俺はずっと前からゴジュラスやアリスの様な恐竜をいつかテイムしたいと、ずっと憧れてた! お前達みたいな存在をテイムしたカズが心の底から羨ましくて……、本当に羨ましくて。俺が我儘(わがまま)を言っているのは理解している。それでもどうしても諦め切れないんだ! 身勝手な事を言ってるのは百も承知だ! でも! でもどうか……、俺にその子を家族として迎えられたらと……。だからどうかお願いします!」


 そこでまた頭を下げ、ゴジュラスとアリスに頼み込むと、クロ達3匹も一緒に頭を下げてくれた。

 そんな俺達を真剣な目で見ているゴジュラスはアリスに視線を向けると、その顔はどこか微笑んでいる様にも見える。


<……お前の気持ちは理解した。だがお前に育てられるのか? 私と妻の子はきっとお前の手に余るかも知れないぞ?>


「そんな事は百も承知だ。半端な気持ちで俺はこんな事は絶対にしねえ。覚悟があるからこそ、俺は恥を晒してでも頭を下げ続けられる! それは、お前達の子供だからこそ俺の新しい家族にしたいんだ!」


 俺は頭を下げ続けながらその想いを改めてゴジュラスとアリスに伝える。


 返事を待つ間、とても静かな時間だけが過ぎて行く……。

 1分? 2分? それとも3分か? 俺にしてみればとても長い時間だ。


<良いだろう……>


 そう聞いた瞬間、俺は心の底から嬉しかった。


「それじゃ!」


<とでも私が言うと思ったか!>


「……へ?」


 ゴジュラスが俺に顔を近づかせると、いきなり怒鳴られた……。

 まさかの返事で俺は呆然とした……。

 正に天国から地獄に落ちた気分だよ……。


<だがお前の気持ちはよく分かったから、私は良いだろうと応えたまでだ>


「そ、そんな……」


 愕然とした俺はその場に這いつくばる様にして落ち込み。クロ達がそんな俺の肩に足を乗せて(なぐさ)めてくれる……。


「ううぅぅ、お前ら……」


<だがな憲明。お前の気持ちは分かったが、そう簡単に我らの子を託すに値するかは別問題なのだ>


 そこで泣きながら顔を上げると、ゴジュラスとアリスは思わずその泣き顔に驚いたのか、ドン引きした。


<お前に、本当に我が子を託すに値するのか。お前の力を私達に見せてみよ!>


 その言葉にハッとした。


<お前はそこにいるカノンとソラ、そしてクロだけで挑んでくる度胸はあるか?>


「……ある!」


<では来い! ただし! 我が妻アリスはまだ体力が回復していない為、代理として私とこの者で相手をする>


 するとゴジュラスの横に、1匹のラプトルが近づいてきた。


<我が妻の代理はこの者しか務まらないだろう。頼むぞ? ()()()>


 ヒスイ……。アリスが率いる群れのNo.2であり、その実力は折り紙付きのラプトル。


<さあ何時、どこでやる? 私達は今からでも構わんが?>


「だったら今日の午後1時、場所はゼオルクの訓練場」


<良いだろう。では本日の午後13時、場所はゼオルクの訓練場だな? ではそこでお前とそのパートナー達が来るのを先に行って待っている>


 ゴジュラスはヒスイを連れ、ゼオルクの訓練場へ先に向かって行くと、その後ろを他のラプトル達も一緒について行く。

 俺はその後ろ姿を見送りながら、「絶対に認めさせるぜ!」と言った。


「まっ、やれるだけ頑張るんだな。これは言わばお前達と()()との真剣勝負なんだからよ」


 「俺達」、ってカズが言うのは誰もが納得出来た。

 だってゴジュラス達はカズの家族だからだ。その家族に味方するのは至極当然であり、当たり前な事。

 ゴジュラス達はこの世で最も恐ろしい男が育てているパートナー達で、誰もが敵に回したくないって思える最強家族の一員。

 それを考えるだけで体の震えが止まらなくなるくらい、俺は興奮した。


「全力で来い。じゃなきゃお前の負けだぞ? お前がどれだけ強くなったのか見せてみろ」


 そう言うと、カズはゴジュラス達の後を追う様にして部屋から出て行く。


「頑張れノリちゃん! 私も先に行って待ってるね! 行こう、ステラ、アクア、銀月」


 美羽も自分のパートナー達を呼ぶと、走ってカズの後を追っていく。


「まっ、当然っちゃ当然だよな。美羽はカズの彼女な訳だし。だから美羽にとってもゴジュラス達は家族でもあるんだからよ」


「そうだね〜、ま〜私達はノリちゃんの応援してあげるよ〜」


「うん、応援するから頑張れ! 僕もトッカーと一緒に一生懸命応援するからさ!」


 一樹、沙耶、ヤッさん。この3人の気持ちが俺にとってめちゃくちゃ嬉しかった。


「私は両方を応援するね」


「なら私もそうしよっかなぁ、まっ精々頑張りなさいね?」


 桜ちゃんと志穂さんは中立に立って、俺達とゴジュラス達の応援をするみたいだ。

 俺はどうにかカズ達を納得させて認めさせる為に、自分の武器である"フレイムバード"を用意して磨いたり、その場で素振りやシャドーボクシングなどをしてその時が来るのを待った。


「よし、腹が減ってはなんとやらだ! クロ! ソラ! カノン! 飯食おうぜ!」


 時刻は11:30

 まだ昼食には早いかも知れないけど、俺達はナッチを呼んで。昼食を用意してもらって食べた。


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