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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第1章 終わりの始まり
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第11話 討伐作戦開始<和也side>


 22:30


「そろそろ準備は良いかしら?」


 朱莉さんの言葉に、組員達は綺麗に直立不動で整列したまま黙る。


「カズ、何か言って」


「なんで俺?」


「い・い・か・ら」


 そう言われ、俺は朱莉さんに手を引っ張られて前に出される。


 めんどくせ~……。


 前に立った俺は両手をポケットに入れ、隅から隅まで組員を見渡した後に、口を開いた。


「まあなんだ。ここに到着する前に伝えられた言葉を覚えてるか? 恐らく今回の寄生(パラサイト)タイプは普通じゃない。と言うより今回のターゲットは寄生パラサイトタイプじゃない」


「は?」


 俺の言葉に、ミコさんは耳を疑ったようだ。寄生パラサイトタイプだと思っていたからだろうな。


「恐らく今回のターゲットは(まれ)に見る()()()()だ。向こう側からの話によると、体が水色で? 若干透けてる? 透明? そんなタイプは見たことも聞いた事もないそうだ。だがとある情報が入った。それは先々週あたりに別のモンスターが現れ、幾つもの街や村を壊滅させた奴が出た。その為にそいつを討伐する為、軍等が動いたがそいつはとある場所で姿を消してしまったらしい。それは古い寺院だったらしく、そこにはある物が封印されていた。だがその封印されていた物も無くなっていたと、調査の結果判明した。それは古い水晶玉(オーブ)だ。何故それが封印されていたのか。理由はどんなモンスターでも()()させてしまう力を持っていた為だ。だがそのモンスターとオーブが消えた。じゃぁ何処に消えた? ん? そいつが消えたのは先週だそうだ。つまりそいつはなんらかの形で()()()()()()()。今回の事件は恐らくこちら側に来た事によって、そのオーブの力が暴走してしまったからだと思われる。そのモンスターって言うのは……。"ワーム"だ。その強さはランクで言うとBクラス相当になるだろう。なんせ幾つもの街や村を壊滅させたんだからな。そこへ来て、水晶玉(オーブ)の力で変異している。その変異によって体を分裂させ、人間や動物の体内に侵入して寄生。ある程度喰って腹を満たせば元に戻る。その為にその分裂した奴らが今ここに集まって来ているんだと俺は考える。だから慎重に動いてくれ」


 俺がそこまで話すと、ミコさんがある疑問を投げかけた。


「ちょっといいか? 俺達は寄生(パラサイト)タイプって思っていた。だがお前さんは寄生(パラサイト)タイプじゃなく、ワームって言ってるよな? しかもBクラスの。先遣隊の話じゃ寄生(パラサイト)タイプって報告を俺達は聞いてる。なら何故、そのワームは寄生(パラサイト)タイプになって分裂してる? それと最後に、他に犠牲になった奴は確認されているのか?」


 確かに、ミコさんのその疑問はもっともだな。ミコさん達は今回の被害者が1人しか確認出来ていねえんだし。


「さっきも言ったけどよ。向こうには水色で若干透明なモンスターって言ったら、俺は"スライム"位しか知らねえ。それに前回の寄生(パラサイト)タイプの形態にも類似(るいじ)しているって? んじゃ今までその生き残りがこちら側にいたとしても。被害が少な過ぎる。……んでだ。実は向こう側でとある村に寄生(パラサイト)タイプに寄生されていた奴がいたらしい。つまり、そのワームは村を壊滅と同時にそいつも喰っちまってる可能性がある。なんせ死体が見つかってないそうだからな。そして寺院には多くのスライムが生息していたそうだ。ここまで言って他に質問はあるか? ミコさん」


 俺の説明に、ミコさんはある程度理解したみてえだ。

 つまりそのワームがスライムや寄生(パラサイト)タイプのモンスターを捕食。そして何でも変異させてしまう力を持った水晶玉(オーブ)の力でそれらが一つとなり。新たなモンスターへと進化してしまったと俺は推測している。


「成る程な……。ちなみにそのワームはどんなワームなんだ? あと他の犠牲者の情報は?」


「ワームには2種類存在する。今回のワームは"虫型"。もし、虫型じゃなく"爬虫類型"だった場合。被害はとんでもない事になってたろうね。爬虫類型ワームは、全てAランクから上に指定されてる程に強力だ。んで、犠牲者は正直把握していない。でも俺の予想では恐らく人間以外の何かに寄生していたと考えている。今回犠牲になった奴は運悪く出くわしたってのが俺の読だ」


「運悪くって……。んで? お前はそれをどうやって知ったんだ?」


「簡単さ。こちら側には殲滅した筈のモンスターが生き残ってる疑いがあった。だが、生き残ってる割には被害が少な過ぎる。ましてや水色で若干透明? そんなの向こう側でも知られていない寄生(パラサイト)タイプだ。存在しているなら既にその存在はしられている筈。そして向こう側で確認されていたモンスターの情報。それらを踏まえて俺は、それが全てワームの仕業だと考えた。だが解らないのは、どうやってこちら側に来たのかって事だ」


 何かの拍子で()()()が開いたのか? それとも、誰かが意図的になのか?

 チッ、どうやってこっちに来たのか未だに解んねえな。


「成る程な……。わかった、お前の話を信じようじゃないか。それで? どう対処するつもりだ?」



 23:00



 全ての準備を整えたみてえだし、そろそろ特殊個体のワーム討伐を始めるか。

 先遣隊の話によると、分裂したワームは中心付近に集まっていると言う事だったな。周りを囲む様な形でワームを包囲し。一気に殲滅する作戦にするか。

 実働部隊は組の連中で固め、その中に自衛隊員を5人ずつ組み込んで、南側正面入り口をAルート。工場の北北西側にある、荷物の搬入口をBルート。東側に位置する食堂跡の窓から侵入する、Cルートと。三ヶ所同時に入って動いてもらうか。


「なあカズ」


「なんだい? ミコさん」


「お前さんとこの実働部隊はわかるが、なんでそこに自衛隊が加わってるんだ?」


 あ? あぁそっか、ミコさんは知らねえのか。


「それは上からの頼みでね。俺達だけでなく、国として民間人を守る為にその勉強がてら参加してんのさ。いつなんどき、俺達が別の事で動けない時に同じ事が起こるか分かんねえし、怖えからってさ」


「へ〜、そう言うことか」


「そっ、そう言うこと」


「んで俺達 警察と公安はそのバックアップってことか」


「頼りにしてるぜ? ミコさん」


「ちっ、ものは言いようだな。はっきり邪魔だから下がってろって言われた方が素直に楽だぜ」


「そう言うなよミコさん。だがいざって時は頼むよ」


「そん時は武器借りるぞ」


「あぁ、好きなの使ってくれて構わないぜ?」


 そこでミコさんは、俺達が運んで来た木箱の中を見る。中には銃火器類が、山のように入っている。

 その中からミコさんはこれだと言う物を手にした。


「へぇ、それ、扱えんの?」


 ミコさんが手にした銃を見た俺は微笑んだ。


 "F-2000"。

 ベルギー、エルスタールのFN社製アサルトライフル。

 5.56×45ミリNATO弾使用で、ふたつのおもなパーツから成り、取り外しの出来るハンドガードが付いている。

 殺傷力の極めて強い銃のひとつだ。


「なんか見た目に惚れた」


「惚れたってミコさん! ハハハハハハハハハッ!」


 それを聞いて俺は思わず笑った。


「だったらそれ専用の弾をもっと持ってた方がいい」


 俺は木箱の中を漁り、ミコさんにF-2000用の弾倉を幾つか手渡すと。


『こちら御堂、配置に着きました』


 無線から御堂が配置に着いたと連絡が来た。


『こちら鬼頭、了解したわ』


 朱莉さんはAルートの前で待機していた。御堂は東側のCルート。犬神はBルートから中へ侵入する手筈だ。


 それから程なくした後。


『こちら犬神。Bルートに到着しました』


『了解。ではこれより作戦を開始する。いいわね?』


 作戦開始を聞いて、現場に緊張が流れる。


『……Go(ゴー)


 朱莉さんの言葉に各班が動き出し、作戦が開始された。


『こちら御堂。食堂内は特に異常ありません』


『こちら犬神。こちらも特に異常ありません』


『了解、でも気をつける様に。さっきの骸の咆哮を聞いてバラバラになって警戒してるかも知れないわ。注意して』


 朱莉さんのその言葉を聞いた俺とミコさん達は、黙って一斉に骸に目を向ける。


〈グルァ?!〉


 黙って見られていることに、流石の骸も肩身が狭そうに落ち込む。

 だがそこに、朱莉さんのフォローが無線から流れた。


『まあ元をただせば、原因はいきなり骸の姿を見て叫んだ奴のせいなんだけどね。誰なのあれ? そのせいでスッゴイ面倒になったと思うんだけど? 取り敢えず、私達でもう一度各部屋を調べながら進むわよ?』


 その言葉に村中はドキッとした顔になり、俺達は村中を凝視した。


「お、俺のせいっスかぁ?!」


 馬鹿が、そうに決まってんだろボケ。


 するとその時、エリート風の眼鏡を掛けた男が村中の肩に手を乗せ、もう片方の手で眼鏡を上げながら言った。


「もし、仮に、彼らが君のせいで危険な目にあったら、その時はどう責任を取ってくれる?」


「え? そ、そ、それは」


「その時は(やなぎ)さん、やっぱアレしか無いでしょ」


 男の名は、柳誠一郎(やなぎ せいいちろう)

 歳は40前後。髪を七三にビシッと決めている公安局からきた男で、一緒に来ている公安達のリーダーだ。

 どちらかと言えば、とても陰険そうなタイプだな。


「ほう? アレですか、和也氏」


「アレしか無いでしょ」


 ふっ、流石だよ柳さん。やっぱ解ってくれたか。


「和也氏も酷な事を」


 だってアレしか無いでしょ、(つぐな)うとしたらな。


「あ、アレってなんなんスか?」


 怯えた表情で村中は訪ねる。するとどうやらミコさんだけが何を言ってるのか気づいた様子だ。

 ミコさんは手を顔に当て、夜空を見上げながら村中に声を掛けた。


「村中……、達者でな」


「や、やめて下さいよぉ〜! だからなんなんですかアレって!」


「……釣り」


「はぇ? 釣り?」


 そう聞いた村中は、なあんだと言った顔でホッとする。


 馬鹿が、何ホッとした顔になってんだコイツ。馬鹿なんじゃねえのか? 馬鹿なんだろ? 馬鹿としか思えねえなこの馬鹿。

 ただの釣りな訳ねえだろうこの馬鹿が。


「いざとなったら君がワームを(おび)()せる為の生き餌になって貰う。覚悟していたまえ」


「……はあ?」


 柳さんの言葉を瞬時に理解出来なかった村中は、(しばら)くの間、固まっていた。


 やっぱ馬鹿だろコイツ。よく刑事になれたなこの馬鹿。


今回はまだ戦闘に入りませんでしたが如何だったでしょうか?

宜しければ、いいね、⭐、感想、ブックマークしてもらえますとやる気が爆上がりになりますので宜しくお願いします!!

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