後悔
家に帰ると、綾音が僕の部屋の前で待っていた。
「お兄ちゃんおかえりなさい」
「ただいま」
「で、どうだった?」
綾音には佐々木さんに告白(実際にはプロポーズになっちゃったけど)することは伝えてないので、首尾よく佐々木さんの思惑を潰せたかを訊いているのだろう。
「佐々木さんにプロポーズしてきた」
「え?」
「告白しようと思ったら間違えてプロポーズしちゃってた」
僕はそれだけ言うと自分の部屋に入った。
部屋の外では綾音が、どういうことか説明しろと喚いているが、今はそれどころではない。
正直に言うと佐々木さんと結婚したいという気持ちに嘘はない。だけど、いろいろすっ飛ばしてプロポーズしてしまったことは後悔している。
告白はあくまで佐々木さんの気を引くための作戦ではあったけど五分以上で成功するだろうとも踏んでいた。でも、流石にプロポーズは成功しないだろうし、お互いに気まずくて疎遠になってしまう恐れもある。
「はあ」
過ぎたことを悔いても仕方がないと頭では理解しているが心は鬱々としてため息が漏れてしまう。
「お兄ちゃん、私の部屋に来て」
綾音が僕を呼んでいる。正直そんな気分ではないが、あれだけ僕を心配してくれた綾音に何も説明しないのはさすがに気が引けたので、渋々ではあるが綾音の部屋に行くことにした。




