再びの作戦会議
正気に戻った僕は、自分の醜態を晒してしまった恥ずかしさを誤魔化すために、普段よりきつめに綾音を叱った。
「そ、それはそれとして、明日はどうするの?」
綾音は話題を反らそうと急な話題転換をする。僕も僕で気まずく思っていたので全力でそれに乗っかる。
「まず大前提として、明日登校したらみんなが僕の女装のことを知ってる、なんてことにはならないと思う」
「どうして?」
「僕が女装してるって情報は僕を女装コンテストに参加させるための唯一の脅迫のネタなんだ。もしそれをバラしたら僕を参加させることは絶対に出来なくなるだろ?取引の材料はなくなるし、そんなことをするようなやつの言いなりになるわけないからね。だから迂闊にはバラせないんだよ」
「なるほど、だからお兄ちゃんは落ち着いてたのね」
「まあね。多分、佐々木さんは情報を小出しにしてくるんじゃないかな。僕が女装してるってことは隠して、例えば一緒に映画を観に行ったこととか僕らが佐々木さんちに行ったこととか。これまで接点のなかった男女が急接近してるとなれば、クラスメイトたちは気になるだろうし話題の的になるからね」
「それで、みんなの注目を集めた段階で改めてお兄ちゃんと交渉しようってこと?」
「おそらくね」
「それって結構厄介なんじゃ」
「そうかな。僕はわりとどうとでもなると思ってるけど」
「お兄ちゃんがそう言うんならいいけど。私も力になれることがあったら言ってね」
「ありがとう、その時は頼らせてもらうよ」
それだけ言って僕は自分の部屋に戻った。




