騒ぎの真相について
館長さんは続けた。
「有名なクランが二つ、全滅したのは知ってるかしら?」
【夢幻剣士】と【聖騎士同盟】のことだろう。
僕達は頷いた。
「こちらが把握してる限りだと。
彼らもね、似たような理由で全滅したの」
館長さん曰く、大神殿の動きに気づいた二大クランは、情報をかき集め、手帳の存在を知ったらしい。
それがさらなる悲劇を呼ぶこととなった。
聖杯への道標になりうる手帳を奪おうと、それぞれのクランが動いてかち合った。
結果、抗争に発展したのだという。
「その抗争の最中に、それぞれのクランが大神殿の神官をつかまえて手帳について吐かせようとしたらしいんだけど。
あろうことか、捕まった神官は手帳についてではなく、第一の鍵の場所を教えてしまった。
それで、大量死が起こった」
これが、表通りの騒ぎの真相らしい。
そしてそれらが一晩で起こったのだという。
説明はそれで終わりだった。
僕は、受けた衝撃を誤魔化すために、ここまでの謎ときで浮かび上がってきた事柄について館長さんに聞いてみた。
兎人族と、キングラビットの矛盾についてだ。
館長さんは答えてくれた。
それによると、どうやら考察厨さんの考えが正しかったことがわかった。
千年前当時、1部の亜人族はそれに類する動物やモンスターと同じ扱いを受けていたのだという。
剣聖となった人狼青年は、その1部から外れていた種族らしい。
つまり、人扱いすらされていなかったらしい。
過去のやり取りを見る限り、小間使いはそういうことは嫌いそうな感じがした。
だからこそ、さらに疑問が出てきた。
なぜ、小間使いは自著の中で兎人族をキングラビットとして描いたのか。
なぜか、無性に気になってしまった。
小説として世に出す時に、兎人族と書くと都合が悪かったのか。
それとも他に理由があったのか。
なんとなく、その疑問をぶつけて見たら、これにも館長さんは答えてくれた。
「勇者の死後にその小説は世に出た。
でも、その頃はまだまだ亜人族に対する差別というか偏見が強かった。
だから、彼は仕方なくあの子、兎人族の子をキングラビットとして描写したの。
あなた達が見た勇者と兎人族の過去のやり取りは、本当にあった事よ」
話がややこしくなるので、小間使いがこのゲームにこっそり仕組み、僕に見せたやり取りについては館長さんには言わなかった。
最後に、僕はどうしても聞きたくなったことを館長さんにぶつけてみた。
「あの、勇者はなんでわざわざこのゲームという形で、聖杯を後世に残したんでしょうか?」
館長さんは、悲しそうな目をしただけで答えなかった。
代わりに、
「お友達ならきっとその答えに気づいていると思うわ」
そう言って、オルを見たのだった。
僕もオルを見た。
オルはただ難しそうな顔をするだけで、答えようとはしなかった。
これはきっと教えてくれないな。
でも、この問いに答えてくれる人を僕は知っていた。
記念館を出て、当初の目的地である【イモータル山】に向かう道すがら、僕は掲示板を呼び出した。
生憎、安価と雑談でスレッドは終わっていたので新しい掲示板を立てることとなった。




