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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第三章:荒野の抑圧された風

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作成スキルと魔法

 神子は何故か直接魔法を使うことが出来ない。

 ゲームであれば『そういうシステムだから』で納得できるけども、現実となった今でも使えないのは何故なのだろうか。


 神子わたしが魔法を使うには魔道具を作成して、それを使うと言う手間が必要になる。ゲームではNPCが売ってることもあった。

 その魔道具であるが、どれだけ簡単な物であっても作るのにこれまた手間が必要となる。


 例えば火魔法で一番簡単なのは着火イグニッションだ。これは(私の場合)料理に便利なので着火石という魔道具――見た目はほぼ魔石――にして火熾しに使っている。……極簡単なものなら魔石のような状態のまま使えるけれど、ちょっと強いモノになると別の形にしなければいけないのは強度の問題なのだろうか? これも調べておきたいなぁ。

 余談だけど、着火の魔法だと火の持続時間は一瞬なので、コンロのように直接火元として使いたければ延々と魔法を使い続ける必要があるのでMP効率が悪い。そもそも長時間効果を持続させる火魔法はない……いや、わたしの知らない魔法もあるかもね。


 着火石を作るには、道具として魔導台――魔法陣が刻んである作業台のような物――が必要であり、消費素材として魔石と火属性の触媒が必要であり、知識として着火魔法の詠唱スペルを知っている必要がある。簡単なものでさえこれだ。

 更に、魔導台は設置してから一日経たないと使えない制約があるので、作業台のようにアイテムボックスから取り出してその場で作成する、と言うことが出来ない。なお溶鉱炉なども同様の制限がある。ゲーム中はわからなかったけれども、接地面から何かを吸い上げているような気配があるので、大地と接続して恵みを得ている、とかそのような感じなのではなかろうか。

 とは言え、フリッカみたいに魔法をそのまま使える人が居ればどこでも魔道具制作は出来る。要は神子が魔法?を使うのに魔導台と触媒を必要とするのだろう。



 さて、前置きが長くなったけれども、今回はそんなわたしの魔法の訓練である。そもそも使えるのか?って感じだけど、雷の力に関しても初めての経験だからね。やってみないとわからない、希望はある……と思いたい。

 場所は拠点横の草原。講師はフリッカで、見学にウルとフィンが居る。レグルスとリーゼはグロッソ村だ。特にレグルスがしごき対象に入ってるらしい……頑張れ。


「……私としては、あれだけ魔力を使用しているリオン様が魔法を使えない、と言うのが非常に不思議なのですけれどもね……」


 フリッカ曰く、わたしの魔力使用状況は『異常』の一言らしい。

 量もだけれども……使い方がおかしいとか何とか。


「そもそも、料理に魔力を使う人なんて見たことがありません」

「え? 着火便利だよ?」

「いえ、そこではなく……」


 着火の魔法を使う人くらいはさすがに居るとのことで。でもそれ以降、料理中の過程において。

 神子わたしの場合、作成メイキングで一瞬で料理アイテムが作れる代わりにMPを消費する。手作業で作ると手間は掛かる代わりにMPの消費が減る。減るだけで全く消費しないわけではない。

 わたしはこれを普通のことだと思ってたんだけど……。


「……何故料理で魔力が減るのですか……?」

「えっ」


 そこから!?

 そして更に意外な事実が発覚することに。


「料理の過程で魔力を消費することでバフ効果付き料理が出来上がる、と言うのはわかりましたけれども」

「えっ、そう言う原理だったの?」

「……知らずにやっていたのですか……」


 がっくりと肩を落とされてしまった。……ご、ごめんね? 横からも「まぁリオンだしな」とか呟いてるのが聞こえてくるよ……。

 いやぁ、わたしとしては何を作るのにもMPを消費するのは当たり前のことだし、バフ効果も料理スキルレベルが上がったという感覚でしかなかったから……これもゲーム脳の弊害かしらん……。

 フリッカは頬に手を当てて大きく溜息を吐いてから「それは置いておきますね」と気を取り直し。


「つまり、リオン様には『魔力を使う』下地が既に備わっているはずなのです。その上魔法の詠唱も知っている。これで魔法が使えないと言うのは不思議でなりません」

「そう言われてみると……本当に何でなんだろうね?」


 ひょっとしてわたしが単にゲーム時代の設定を引きずって『使えない』と思い込んでいるだけ?

 まぁ、これからあれこれ試してみればわかる、かもしれない。……わかるといいなぁ。


「まず私が魔法を使ってみせますね。魔力を指先から放出するようなイメージで……火よ、灯れ。イグニッション」


 フリッカが腕を伸ばし魔法を使用すると共に、人差し指の先にポッと小さな火が灯った。

 魔法は詠唱の後に魔法名を唱えることで発動することが出来る。この場合『火よ、灯れ』が詠唱で『イグニッション』が魔法名だね。詠唱だけでも魔法名だけでも発動しないし、高ランクの魔法になるほど詠唱が長くなるので地味に面倒くさい。そしてわたしは知らなかったことだけど、魔力構築?とやらも必要になってくるらしい。

 神子の場合はその詠唱+魔法名を魔導台の前で唱えてやっと魔法の籠ったアイテムが作れると言うことになる。魔力構築は……どうなんだろう、スキルレベル上がったら研究してみるか。魔法そのものは使えないけれども、アイテム使用時に詠唱省略出来るのは神子のメリットとも言えるのかな。

 レグルスの使ったものはあくまで『魔法のような何か』であり、魔法とは言えない代物だ。でもあれはあれで魔力を使う訓練になるようで、感覚を掴めば彼も他の魔法も使えるようになれるのかもね。

 ……閑話休題。フリッカの話に集中しよう。


「私の指先から魔力が放出されたのはわかりますでしょうか?」

「……ごめんわからない」


 魔導スキルレベルが上がれば見えるようになるのかなぁ。

 なおここでも横から「我にも見えぬが、フィンは見えるのか?」「うん、見えるよ」などと聞こえてきたりしている。

 ……そうか、フィンも見えるのか……羨ましい……!


「では、モノ作りをする時などにご自身の体の中で『魔力が流れている』と言う感覚はありますか?」

「うーん……?」


 魔力の流れは意識したことなかったな。

 わたしはQAクイックアクセスボックスからいつもの石ブロックを取り出し。


作成メイキング、【創造神の石像】」


 とお馴染みのモノを作ってみる。

 スキル実行中に意識をしてみると確かにMPが流れているような……気がするけども……はっきりとはわからないなぁ。


「……ただの石が変化する様は何度見ても不思議です」

「……魔法も似たようなモノじゃないの?」


 わたしからすれば『石が形を変える』のも『何もない所から火が出る』のもどっちも不思議にしか思えないんだけども。魔法が存在しなかった元の世界での知識のせいなのかな。


「魔法とは魔力を代償に現象を発生させるものですから」

「これも魔力を使って石の形を変えると言う現象を起こしているんじゃ?」


 何気なく放ったわたしの疑問が予想外のものだったのか、フリッカが目を瞬いた。

 そしてややうつむき加減になり顎に手を当て、ブツブツと何事かを呟き始める。

 「モノ作りのことを考えてるリオンのようだの」「……そうだね」って……そうか、わたしが考え事をしてる時は傍から見るとこんな感じなのか……。

 フリッカはしばしの後に顔を上げて。


「……私にもリオン様と同じことが出来るのでしょうか?」


 と深刻そうな顔で言って来たけど……それは無理なんじゃないかな……?

 作成メイキングスキルは神子特有の力であり、神子は創造神様によって任命される。

 もしも作成メイキングスキルが神子以外にも使えるのだとしたら……わざわざ創造神が神子を任命する必要がなくなるのでは? 神子の実子であるあの長老トリオも使えないらしいしね。


「……そう、ですよね。だとしたら、神子リオン様の力は魔法のようではあっても、魔法とは全く異なる技術であるのだと思われます」

「……なるほど」


 例えるなら、ここからグロッソ村まで歩いて移動するのと帰還石を使って移動するのとで同じ結果は得られていてもその過程は違うものである、と言うようなものか……? いやわかりにくいなこの例え。

 今度創造神に会えた時に聞いてみようかな。


「これ以上は私にはわかりませんのでこれも置いておきましょう。今はリオン様の魔法使用についてです」

「そうだね、とりあえず試してみるよ」

すみません、少し魔法の設定に齟齬が発生したので修正してます。


着火石と火炎石は別物です。前者は火打石の魔道具バージョンのようなもので(指を当ててMP消費だけで使えるのでカチカチする動作が不要になる)、後者は使い捨ての攻撃アイテムに分類されます。

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