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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第三章:荒野の抑圧された風

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ガーディアン戦のち雷雨

「む。リオン、レグルス、この先はやたら数が多いぞ」

「おや? となると……ガーディアン達かな?」


 更に小一時間。小さなトラブルはあったものの大きな怪我をすることもなく順調に進んで来た所でウルが口を挟んできた。

 もちろんただのモンスターハウスだと言う可能性もあるけれど、ガーディアン……つまりは強敵モンスターが居ることを想定した方がいいだろう。


「何匹くらい居るかわかる?」

「さて……二十は超えていると思うが……」

「……さすがにそんな所に突っ込むのは自殺行為でしかないね。わたしが少しずつ弓で釣ってくるよ」


 今回はウルさん手加減タイムだからね。ゲーム時代にわたしが採っていた手法で進めてみることにした。

 攻撃バフおやつを食べ、ウルとレグルスには後ろの方で待機してもらい、ランタンに布を被せて光量を出来るだけ減らしてからわたし一人で先へとソロソロと忍び足で行く。

 暗くてよく見えないけれど、音とその反響だけでウジャっと居るのが察せられる。わたしはごくりと唾を飲んだ。

 弓に炎の矢――当たるまで炎を漏らさないし、当たった後は灯りにもなるのでこういう時は重宝する――を番え、深呼吸で心を落ち着けてからササッと五本放つ。


 グギャ!?

 キシャアッ!


 着弾と共に撒き散らされた炎により、大きな空洞であったその一部が照らされ浮かび上がる。

 モンスターの種類は今までとほぼ同じ。けれど一点だけ違いがあった。


 最奥に、ボス格と思しき大ムカデ――ジャイアントセンチピードがその巨体をうねらせていたのだ。


 ムカデとかまたしぶとい且つキモいチョイスを……!

 わたしは数匹こちらへと向かって来ているのを確認しながら急いで後退していった。


「レグルス!」

「おうよ!」


 ガシっと拳を打ち合わせてから、わたしと入れ替えにレグルスはモンスターの前へと踊り出した。

 わたしにばかり気を取られていたモンスターたちはあっさり……と言うほどでもなかったけれどレグルスに蹴散らされていく。


「どんどんおかわり呼ぶよ!」


 わたしは先程の炎の矢による光を目印に矢を放っていく。何匹か仕留めつつ、かすり傷を負ったり矢が近くに刺さったことでわたしにモンスターがヘイトを向けてやって来る。

 数が多すぎる時にはさりげなくウルが投石することによって足止めしてくれていた。

 このままジャイアントセンチピード以外の全てを倒せたら……と思ったけれどそこまで上手くは行かず。その前にジャイアントセンチピードがギチギチと嫌な音を立てながら動きだした。


「当たれっ!」


 目に向けて矢を放ってみるも、牙に防がれてそれは叶わなかった。

 十数メートルはあった彼我の距離をあっという間に詰めてくる。あぁもう! 間近で見るとめちゃくちゃ気持ち悪い!


「レグルス、牙は毒があるので噛まれないように! あと、さすがに拳だと相性悪すぎるから武器使って! 狙うのは関節部ね!」

「……さすがにあのクソ多い足に向かって徒手空拳では挑みたくないよなぁ……」


 レグルスは口の端を引きつらせながらサブ武器である槍を取り出した。なおその腕はリーゼには遠く及ばない、らしい。

 わたしも弓からハルバードへと持ち変える。刃部分は以前倒したウルフの牙だ。この武器もあまり習熟度は高くないけれど剣だとリーチが短く、槍だと範囲が狭いので仕方がない。


「……リオンは対応力はあるのかもしれぬが、幅広過ぎて弓以外の練度が足りてないのが問題よな」


 全く以ってその通りでございます! けれどウルみたいにその身一つで全て粉砕!とか出来ないんです……!

 訓練もしなきゃだけど、それ以上に各作成スキルレベルを上げていかなきゃいけないのだから忙しすぎる!

 未だ残っている雑魚モンスターはウルに任せて、わたしとレグルスでジャイアントセンチピードと相対することになった。


 ギギャギャギャッ!


 ジャイアントセンチピードはその長い体を鞭のようにしならせ、上空からわたしたちの居る地面へと打ち付けてきた。

 さすがにそれは見え見えだったから避けることが出来たのだが、すぐさま横――レグルスが避けた方向へと横凪ぎに払う。


「うおっ!?」


 槍の柄を盾代わりにすることによって、レグルスはその牙による噛み砕きを辛くも逃れることに成功する。


「このやろう!」


 そして無防備にさらされた顎を蹴り上げることで頭部をかち上げた。

 わたしはその隙に斬り付けようと思ったが、尻尾の方が振り回されて邪魔をされ、その固い甲殻をやっとの思いで弾くだけに留まった。

 動きが素早くてなかなか関節部も狙えず、近付けば弾かれ、遠ざかれば体当たりをして来て、一進一退の攻防が続く。


「ほーれ、リオンもレグルスも頑張るが良いぞー」

「「ぐぬぬ……!」」


 早くも雑魚モンスターを一掃したウルが高みの見物とばかりにやや離れた場所から声援を送ってくる。

 負けてられない!とわたしとレグルスは頷きあった。


「これでも喰らえ!」


 わたしは複数の火炎石をジャイアントセンチピードに投げ付けた。

 そもそもわたしはウルの言った通り対応力――アイテムの多さが売りなのだ。馬鹿正直に武器だけで戦う必要は全くない。


 ピギャアッ!!


 体を焼かれたことによりジャイアントセンチピードがのたうち回る。

 一見絶好のチャンスであるが、不規則に跳ねられるため狙いを付けにくい状態になってしまい、レグルスが困惑する。


「お、おいリオン! 暴れ回って近づけねぇんだけど!?」

「そんな時はこうだ!」


 わたしはお得意?の石階段積み上げで上の方まで登ってから、ジャイアントセンチピードに向かっていくつもの石ブロックを落としていく。

 ガツンガツンと重量級アイテムに押し潰され、ジャイアントセンチピードは身動きが取れなくなっていった。


 ギギャアアァッ!?


「ほらレグルス、動けなくしたよ! ぶった斬って行こう!」

「……お、おう」


 どこか呆れたような生返事するレグルスと共に少しずつ関節部を破壊していき、魔石を切り離すことで、ジャイアントセンチピードはやっと息絶えるのであった。



「……何つーか……リオンの戦い方ってめちゃくちゃだな……」

「ある意味『らしい』とも言えるのだがな。発想は面白いであろう?」

「それは確かに」


 核の浄化も無事に終え、解体作業をするわたしの後ろで残存モンスターの襲撃を警戒している二人がそんな会話をしていた。

 うぬぬ……ウルにいくらか訓練を付けてもらってるとは言え戦い方なんて我流だし……。いくらこの身が神造人間ドールとは言え身体能力が平凡な以上、アイテムを駆使して戦うしかないわけで。

 まぁわたし自身、ここまで石ブロックが活躍するなんて思ってなかったのだけれどもね!


「さて、回収完了。ここにはもう何もないみたいだし、地上に戻ろうか」

「うむ」

「了解。あー、日の光が恋しいぜ……」


 残念ながら第一目標である神様の手掛かりは皆無だったけれども、ダンジョンが一つ潰せたのと素材が手に入ったのでまぁいいでしょう。戦闘経験も多少なりとも積めたし。

 核を浄化したからと言ってもすぐにモンスターが消え去るわけでもない。帰り道も用心しながら、それでも行きよりは疲労はあるものの気持ちは軽く、来た道を戻って行く。

 新鮮な風が吹き込み、出口はすぐそこだと言う所まで来たのだが。


 ――ゴロゴロ……


「うん? この音……ひょっとして雷?」


 出口すぐ手前まで進むと、何時の間にやら空は暗い雲に覆われており久方振りの日を拝むことは出来なかった。代わりに時折雲間を雷が走り周囲を照らしたかと思えば重低音が鳴り響く。

 激しい雨が降り注いでダンジョンの中までザーザーと雨水が流れ込み、足元がすっかりぬかるみと化していた。


「あちゃー……これは外に出ない方がいいな。雨が上がるまで中で休憩しよう」

「うへぇ、すげぇ雨だな」


 すぐ後ろに付いていたレグルスも天気を見て頭をガシガシと掻いている。

 このダンジョンは下へと続いている。つまりはこのままだとどんどん雨が入って来ると言うことだ。

 気温が下がって来たのか寒いし泥だらけになるのも嫌だったので、わたしは一時的に穴を塞ごうとし石ブロックを出したのだが――


「リオン、出口に近付くな! 奥へ急げ!!」

「えっ?」


 ウルのこれまでにない切羽詰まった警告がされたその瞬間。


 ――ドオオオオオオンッ!!


 耳をつんざくような轟音がして。


「――」


 全身が熱くなると同時にわたしの意識は漂白されるのであった。

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