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終末世界の開拓記  作者: なづきち
章間二

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顔合わせ

 今日は皆でグロッソ村にやってきた。

 単純にうちの新しい住人であるフリッカとフィンの紹介と言うのもあるけれど、今後、特にフィンを預かってもらうこともありそうだな、と思って。

 数日置きに帰るとしても、わたしたちが探索に行ってる間に拠点に一人は(フリッカと二人だとしても)厳しいだろうからねぇ。置いて行く方も不安になるし。


「あ、みこさまだー!」


 目ざとくわたし達を見つけた子ども達が走り寄ってくる。……やはりモフモフはいいなぁ……。

 しばらくデレデレ……もとい対応していたら、後ろでこんな会話が成されていた。


「……リオン様は小さい子が好きなのでしょうか」

「見ての通りではないか?」


 ご、誤解を招きそうな……!


 気を取り直して。

 見ない顔であるエルフ二人がすごく気になっているのか皆してチラチラ、中にはガン見している子も居て質問攻めになりそうな気配だったけれども、進まなくなりそうなので「後でね」と言ったら素直に聞き分けてくれた。……あのアルネス村の後だから、心が洗われるようだ……。

 ライザさん――腕が治ったので結局長になった――が何処に居るか教えてもらおうとしたのだけど、「あんないするー!」と手を引っ張ってくるので任せることに。「よろしく」と手を繋いだら嬉しそうに笑うのでそれがもう可愛いのなんの。

 「成る程……」とフリッカの呟きが聞こえたのだけど、何が『成る程』なんだろう……?


 連れて行かれた場所は村の中央付近にある一番大きな建物だ。わたしが建てたやつじゃなく、集会所が欲しくて自分達で建てた物だとか。住居があれば良いかと思ってて、そこまで気は回らなかったからねぇ……。

 すでに連絡が行っていたのか、途中で人が増えて騒ぎが聞こえていただけなのか、中に居たライザさんは慌てるでもなく出迎えてくれた。


「神子様、ようこそおいでくださいました」

「おーっす」

「二人とも元気そうだね……と、新しい人……?」


 どうやらレグルスとリーゼも居たようだ。ライザさんの仕事を手伝っているようで、勤勉なようで何より。

 わたしたちは軽く挨拶を交わし、フリッカとフィンの紹介をして、うちに住むことになったので今後何かあればよろしくお願いしたい、と伝えた。勿論アルネス村でのあれこれはしゃべらない。親しくなったら彼女達自身の口から語られることもあるでしょう。

 皆難色を見せるでもなく快く引き受けてくれたのでホッと胸を撫で下ろす。


 ここでちょっと意外だったのが、フィンがモフモフ……もとい獣人ビーストのちびっ子達に人気が出たことである。

 フリッカも同じエルフなのだけど、物静かで醸し出す雰囲気が大人だからだろうか。ちょっと年かさの少年少女は遠巻きに彼女の方を見ていたけれど、ちびっ子たちはフィンに興味津々で。


「エルフなんてはじめてみる!」

「すきなたべものは?」

「ボクはね――」


 と四方八方から言い寄られてあたふたしていた。アルネス村はそんなに騒がしくなかったからねぇ。こういうのは初めての経験なのかな。

 終いには「あそぼう!」と手を取られて、半ば泣きそうな顔でフリッカの方を見上げることに。

 フリッカが困ったようにわたしを見てくるけど、わたしにもどうしようもないのでそのままライザさんの方へ視線を流した。ライザさんは楽しそうに笑ってから立ち上がる。


「ほーらアンタたち! 今日のお仕事は終わったの!?」

「「「まだでーす!」」」

「遊ぶのは終わってから!」


 「はーい!」と元気に返事をしてちびっ子達は散って行った。他の子たちもわたしに一礼をしてから仕事へと戻って行く。


「……び、びっくりしたよぅ……」

「まるで嵐のようでしたね……」


 フィンはフリッカにしがみつき、フリッカはその頭を撫でながらポツリと零すのだった。

 えーっと……まぁ、頑張って慣れてね……?


 そしてあれこれとグロッソ村の近況を聞き、わたしの方もあれこれ話し。

 少し話が落ち着いて喉を潤すためにお茶を飲んでいた所、フリッカがしみじみとこんなことを言うのだった。


「ここでは女性も長になれるんですね……」


 アルネス村は男性優位っぽかったからねぇ。そういうのもカルチャーギャップなんだろうね。アルネス村以外のエルフの村がどんなのかはわたしも知らないけど。

 けど、この村もこの村で結構特殊な気はする。だって長になる基準が――


「母がこの村で一番強いですから」

「……えっ」


 そう、一番の強者が長になると言う決まりであるからだ。そしてリーゼが言った通りライザさんが一番強い。ライザさんより強い人が全員亡くなってしまったから、と言うのもあるけれど……それでも男性の大人も残っている中での一番なのだ。……そう言えばボーアはあれからどうなったんだろう。気になるようなどうでもいいような。

 後、先代長はレグルス父だったけれども、その更に前はまた女性だったらしい。獣人女性すごいな。

 ……あ、もっとすごいのが居たか。


「む?」


 わたしの中で最もすごいと評判であるウルをちらりと見たら首を傾げられた。

 まぁさすがにウル程ではないけれどライザさんも強い。レグルスとリーゼがセットになっても敵わない程だ。

 彼らはそんなライザさんに「リオン(さん)について行くために!」と毎日のように稽古を付けてもらっており、少しずつだけど上達しているらしい。わたしがへっぽこなので是非頑張って欲しい。


「……私もウルさんに訓練していただいた方が良いのでしょうか……」

「えーっと……ある程度身を守れるようになるのは悪いことではない、かな?」

「我は別に構わんが……うっかり大怪我させそうで怖いな……」


 フリッカが謎の対抗心?を見せていたけれど、適材適所と言う言葉があるからね。身を守れるに越したことはないけれど、きみにはどちらかと言えば魔法を頑張って欲しいかな……強制はしないけど。

 うん、森でのあのドジっっぷりを思い出してのことじゃないからね? さすがに平地である拠点うちでは早々見てないけれども……それでもたまにねぇ……。

 でも魔法の専門家が居ないからなぁ。わたしが教えられるのは魔法のスペルだけであって、どうすれば強くなるとか省力化出来るかとかわからないんだよね。詳しい人と知り合うまでは自分で試行錯誤してもらうしかないか……。

 おっと、魔法と言えば。


「大事なこと忘れるとこだった。レグルスとリーゼとライザさん、この魔石に魔力を篭めてもらえます?」

「うぇ……魔力を使うのは苦手だ」

「構わないけど……」

「承知しました。レグルスはこれも訓練と思いなさいな」


 わたしは三人に二つずつ小さな魔石を渡す。

 レグルスが顔をしかめて、リーゼは不思議そうに、ライザさんは笑顔で三者三様に承る様が何か面白い。

 そして返された魔石をチェックして、問題ないと頷く。


「オッケーです。これで各自用にうちとグロッソ村の帰還石作りますねー」

「「「……はい?」」」


 いや、前々から帰還石の改良は必要だと思ってたんですよ。少なくともわたし以外でも使えるように、って。

 それでフリッカがもたらしてくれたヒントもあってあれこれと試してみたら、割と簡単な方法で出来上がったのだ。

 その方法は、わたしが作成した帰還石と使用したい者の魔力を登録した魔石を組み合わせることだった。名称はそのまま【帰還石・改】と表示された。

 ゲーム時代はNPCに魔力の篭ったアイテムを作ってもらうことはあっても、ただ魔石に魔力を篭めてもらうとかなかったしねぇ……ちょっと盲点だったかも。


 一人一か所につき一個しか持てないと言う制限までは外せてないので――他に何か要素を追加する必要があるのか、スキルレベルが足りないかすらも不明である――、わたしが帰還石を作ってからその人の分を作る、作ってからでないとわたしの分すら作れない、と面倒臭いことになっていたりするけど使えないよりは全然便利だ。

 あとメリットもあって、わたしと登録者以外には使えず、もしも帰還石を失くしたり盗まれたりしても悪用されることはない、とセキュリティ面ではプラスに変換される。特にうちはまだ常駐してる人が居ない状態だからね……。使用者本人が悪人だったら目も当てられないので、一定以上の信用を置いている人にしか作りませんよ、勿論。

 なお、『失くしたら一生作れなくなるんじゃ?』と言う懸念がここで沸いたけれども、実験した結果、魔石であるせいかしばらくアイテムボックスの外で放置すると大地へと還ったのか消えてしまい、再度作れるようになったのでそこは問題なかった。……ゲーム時代のドロップアイテムが時間経過で消える仕様だったけど、これと関係してたのかな。


 しかしここでまた一つ難点が……ウルの分が作れないのだ。

 正確には、魔石に魔力を篭めようとしたら魔石が壊れる。……単に彼女の魔力量が大きすぎて壊してしまうのか、もはや呪いなのか……ウルがまた凹んでしまったので慰めることに。

 もしもはぐれてしまったら、イビルトレントの時のように野性の勘?でわたしを探してね……。よっぽどの理由がない限りウルを連れて行かないと言う選択肢はないので。


 と言うことでまぁ、基本的にはわたしが送ることにはなるだろうけど、緊急時の移動手段が出来ましたとさ。

 通信装置も早い所作れるようになりたいなぁ。いちいち移動せずとも通信だけで済ませられれば楽だろうし。……そもそも作れるのか知らないけどもね。

 うーん、研究することが一杯だー。

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