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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第二章:森奥の餓えた叫び

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暗殺計画未遂

フリッカ妹の名前をリィンからフィンに変更しました。名前が似通っていることに何故気付かなかったんだろう……。

 フリッカは恐る恐る自分の首元に手をやる。

 二度、三度、直に触れることが出来るようになった自分の首を撫でることで、解放されたのだと自覚をしたようだ。


「……っ」


 瞳に一滴の涙が浮かんだかと思えばそれはあっという間に溢れ、頬にいくつもの筋を作っていく。

 わたしはそれをじっと見ているのも何だか悪い気がして、目を逸らすように少し離れようとしたのだけれども。


 トンッ、と。

 フリッカに胸元に抱き着かれたので、それは叶わなかった。


 えーっと……まぁいいか……。うん、満足いくまで泣くといいさ。

 気の利いた言葉の一つも掛けることは出来ず、頭をポリポリと掻いてから、静かに泣くフリッカの背を軽く叩いてやった。



「……大変失礼いたしました」


 五分経ったか経ってないかくらいして、フリッカは落ち着いたようだ。目元は赤くしゃくりあげてるけどそこは突っ込まないでおこう。

 しかしあれよね、美少女の泣き顔って結構な破壊力よね……こほん。

 わたしの場違いな感想はさておき。


「正直な話、私は死すら覚悟していました……命を救っていただき、本当にありがとうございます」

「うん、どういたしまして。ところで、何でこんなことになったの?」

「それは――」


 隷属の首輪を嵌めたのはやはりと言うか何と言うか、フリッカの父親らしい。

 ……よくもまぁ義理とは言え娘にこんなことが出来るものだね? 連れ子の存在が疎ましかったのかな?


「いえ……逆ですね」

「逆……?」

「父は、ひどく母に執着していました。そして、私にも……成長して母に似るにつれて、少しずつ変化を見せ始めました」


 何でも、昔っからフリッカの母親のことが異常な程に好きだったらしく、元から伴侶の座を狙っていたのだけれども、許嫁――フリッカの実父の存在と別派閥と言う理由からウィーガさんから許可をもぎ取ることが出来なかったらしい。

 しかしフリッカが生まれて十年程で実父が亡くなったのと、昔は少し体の弱かったフリッカに優先して薬を融通することを条件たてに、無理矢理に近い状態で夫として収まったようだ。

 最初は憎き恋敵の子として疎まれていたが、母親と同じような容姿になっていくフリッカに気付いてからは態度を変え、母親が亡くなってからは更に酷くなったらしい。

 ……こんな調子じゃ、フリッカが恋も愛も要らないと思うのも仕方ないかもしれない。

 ひょっとしてだけれども、ザギさんとウィーガさんがフリッカを嫁候補に推したのも、こいつから守るためだったのでは?と思ってしまうよ……頭痛い。


「事態が解決したら……神子あなたを殺せと言われました」


 スッとナイフを差し出される。

 効果を調べてみると、ご丁寧にもLP回復を阻害する呪い付与機能付きだった。

 わたしの持ってる解呪ポーションで治せる……と思いたいけれども、これが神子の遺産なのだとしたらわたしよりスキルレベルが高くポーションが効かない可能性もある。

 ……さ、刺されるようなことしてこなくて良かった……!


 自分のモノである(と一方的に思い込んでいる)フリッカが取られたのが相当癪に触っているらしい。そして、わたしがフリッカに気を許しているのを逆手に取って罠を仕掛けようとしたのか。『モンスターと相打ちになった』とでも説明しておけば罪に問われなさそうだし。確かに、刺されてもその直前まで気付けない自信あるわー……。

 勿論フリッカは最初は断ったけれども、『だったらフィンに嵌めるぞ』と脅されて引き受けざるを得なかったとのことで。

 ただただ自分のエゴのみで神子わたしを排除するために、自分の娘たちを利用したって言うのか……そうかそうか……。

 フフフフフ……たとえ創造神に怒られようとも、必ずや個人的制裁をしてくれよう、そうしよう……。それに加えて、神子の危険遺物破壊計画を立てないとな。


「ですが私に貴女は殺せません。勝手ながらフィンのことを貴女に託して、父を巻き込んで自死しようと思っていたのですが……」

「いや、たとえその展開になったとしてもさせないよ?」

「……そう、ですね……そう言う方でしたね」


 ……何だか微妙な笑みを零されたけど、褒められていると思っておこう。

 まぁ大体の経緯はわかった。帰った時にどうするかは追々考えるとして……とりあえず、わたしはまだ手に持っていた隷属の首輪をブラブラさせ。


「これ、もう一回嵌めてもらっていい?」

「えっ……?」

「勿論、爆発機能はなしの状態でね」


 フリッカは一瞬顔を引きつらせたが、続けられた言葉に首を傾げる。

 ちゃんとした理由はあるのよ?


「これを嵌めた状態なら、『まだ言うことを聞かせられる』って油断を誘えるかなと思って」

「……なるほど」


 鋭い人であれば『事態が解決したのにわたしが生きている』ことで疑問を持つかもしれないけれども、短絡的にしか見えないからねぇ。

 そもそも解除キーが手元にあるから解除されることはないとか思ってるだろうし、キーが新たに作れるだなんて予想だにしないだろう。


「……嵌めてもらってよいでしょうか?」

「? いいけど」


 まぁ爆発機能がなくなったとは言え自分でやるのは怖いよねぇ、と思って了承したものの。

 ……美少女に首輪を嵌めるのってめちゃくちゃ倒錯的な絵面よね……ここにウルが居ないことにほんの少しだけ感謝をした。



「さて、今度こそウルとの合流を目指そう」


 ……と言ったものの特に探すアテはないんだよね。目印を付けながらダンジョン探索するしかないか。

 運良くウルの戦闘音を聞きつける、もしくはウルがこちらの音を拾って駆け付けてくれることを期待しよう。

 せめて核のある方向がわかればそっちに向かうことで合流確率が増えそうなんだけれども……反応が今も微妙なんだよなぁ。


「根を見ればわかるのでは? 太くなっていく方に幹があるはずです」

「あ、そっか」


 頭上を確認しながらゆっくりと歩いて行く。高性能レーダーウル様が居ないのでモンスターに不意打ちされやしないか内心ビクビクしているのだけれども……全然襲われないな。

 ……あー、モンスターも喰われてるんだったか。根の動きに集中すればいいかな。

 そうして警戒をしながらも、わたしはイビルトレントをどう倒すか頭を悩ませていた。

 爆裂の矢をもっと大量に打てばいいか? でもあそこまで大きい魔石はもうあんまりないからなぁ。質がダメでも量でいけるかなぁ。

 瘴気もあるから一番最適なのは聖属性なんだろうけれども……。


「フリッカは聖火は使える?」

「……申し訳ありません、使えません」


 いやうん、聖属性魔法って他の属性魔法に比べて難易度高いからね。仕方ないよ。

 聖属性は言うなれば基本属性+モンスター特化能力の複合魔法だから。一番馴染みが深いのは聖水かな。これも分解して考えるなら水属性+モンスター浄化・排斥能力だ。

 ちなみに闇属性だけはまた別の意味で難易度が高いと言うか、特定種族とモンスターしか使用できない。闇神も創造神側の神として存在しているんだけど……何でなんだろうねぇ。

 あ、いや待てよ? わたしは魔法が使えないだけで、知識としては知っているのだ。ゲーム中に魔法に関する書物を読み解くことでレシピが増えたりもしたからね。


「よし。フリッカ、今から覚えよう?」

「そ、それは無茶振りでは……?」

「大丈夫大丈夫、司祭であるきみなら少し習得しやすくなってると思うから」

「……リオン様がそう言うのでしたら……」


 レクチャーをすると、燃費がものすごく悪い――一回使用するだけでMPがゼロになって昏倒しかける――ものの見事に習得出来ましたとさ。

 ……フリッカさんマジ優秀。でも無理させてごめんよ……。



 ウルと遭遇出来ないまま歩くこと一時間弱、根を辿って歩くことが出来なくなった。

 何故なら、非常に太い根が空洞中を占有してしまったからだ。……ここまで何の反応もなかったけれども、さすがに切ると反撃来るよなぁ。

 そして、微妙にだけれども核の反応が強くなっている。幹がすぐそこなのだろうか。

 どうしたものかなぁと考えながら周囲を観察していると……足元に小さな箱のようなものが半分埋まっているのに気付いた。

 こんな所に何だろう?としゃがみ込んで見てみると、掘り出す前にフリッカから回答が降って来た。


「……それ、骨壺です」

「うえっ?」

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