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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第九章:金環の新たなる■■

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問題は山積みだったらしい

 日蝕を乗り越えて一件落着……では一応あるのだけれども、それ以外にも問題は色々と発生していたことが判明した。

 直近の懸念だった破壊神ウルの件は思ったほど問題にはならなかった。不本意にも創造神扱いとなってしまったわたしに明らかに協力していたことで、その場を目撃していたヒトたちには好意的に捉えられたからだ。……とはいっても、わたしが付与した聖属性により色々抑えられていただけというのもあって、効果が切れた翌日にはわたしと神様ズを除く拠点の皆には重圧がすごかったらしい。


「……申し訳ありません、相手がウルさんとわかってはいても、体が勝手に恐怖を感じてしまい……」

「アタシは神子だから多少は耐性あるけど……」


 身近な相手に怖がられるのはウルとて本意ではないので、強化版神気隠蔽シャツを着てもらうことでひとまずの対策とした。これは少しずつでも慣れてもらうしかない。

 慣れるといえば、ウル自身の力の扱い方も問題で。


「……我は先代破壊神がぐうたらしていた理由がわかった気がするぞ……」


 とはウルの弁。

 やることなすことが破壊に繋がってしまうからだ。取れたドアノブを前に何とも言えない表情をしていた。……先代破壊神ノクスの場合は面倒だったという割合が大きかったと思うけどね。

 そしてもう一柱ひとり、早々に慣れてもらわなければいけないヒトもいて。


「ノク――いいえ、ウルでしたね。すみません……」


 地神が想像してた通り、創造神がウルを見るたびに間違えるのだ。それだけならともかく、いちいち凹むものだからウル側もいたたまれない。ある解決策・・・を考えてはいるけど、今は素材もわたしの理解力も足りないので実行出来ない。その頃にはさすがに創造神も回復しているだろうけど、わたしが文句を言いたい(・・・・・・・)ので水面下で進めていくことにする。


 昏々と眠り続けていた創造神が目を覚ましたのは二日後のことだった。

 わたしを見て、わたしの状態をすぐに察した創造神に平謝りされたのはさておき。今後わたしがどうすればいいかの話を進めていく。


「創造神様の活動を代わりにやっていく、と聞いていますけど」

「そうですね。……リオンに選択肢がないことにお詫びのしようも――」


 ……どうやら創造神は力を失ったことで更に弱気になっているようだ。話がすぐに止まるので、地神か水神に同席してもらって謝るたびにぺしっと叩いてもらうことでひとまずの対策(?)とした。開き直ってふんぞり返られるのもイヤだけど、同じことで謝られるのもしんどいからね……。

 さて、肝心の創造神の力の回復だけど……どうやらわたしが預かった力を返すことは無理らしい。というのも、創造神は神造人間ドールであるわたしの体を作った張本(にん)であり、わたしのことをよく知っているから、わたしに合わせて力の変換が出来た。しかし逆は出来ない。正確には出来ないでもないけど、体の再構築も含まれるので時間が掛かるという話だ。


「ウルは大きくなりましたけど、創造神様も力を返したら大きくなったりしません……?」

「これまでに神が初期の体より成長した例はなかったのですが……リオンが終末の獣の力も含めて増幅させたことが原因でしょうか。ひょっとしたら、ノクスのように大きく(つよく)なりたいという願望もあったのかもしれませんね。そして今のわたくしでは、器が小さすぎて受け取る余地がありません……」


 力を受け取るには一定以上の体の大きさが必要ということらしい。一番手っ取り早いと思われた方法が無理だなんて……ぐぬぬ。

 あと、ウルが異例であり、わたしが成長する可能性は限りなく低そうだ。残念。


「それで、わたくしの活動なのですが――」


 創造神の仕事内容を聞かされるにつれ、その多岐さにわたしの顔がどんどんと引きつっていった。ブラック企業も真っ青な仕事量じゃありませんか?っていう感想だ。

 そもそもの話、六神の補助があったとはいえ、少数の神だけでこの広い世界を運営しようというのが間違いなのだ。もっと神様を増やすべきじゃないですか? ……などと、素人に思いつくようなことをやっていないのは、やれない理由があるというお決まりのパターン。まぁリソースが足りないってだけの話なんだけども。

 じゃあわたしは一体何なのか、わたしを作るくらいなら神を作ればよかったのでは?という疑問も湧いてくるのだけど、当時は神子を一人増やすだけで精一杯、神一柱作れるほどまで待っていたら間に合わなかったかもしれないという。

 ……なんで現地アステリアのヒトじゃなく、異世界の魂をわざわざ招いた(コピーした)のかについては、わたしが以前うっすら想像した通り、実はわたしの元居た世界にも別の創造神がいて、相談をしたら乗ってくれたとかなんとか。まじかぁー……。

 で、わたしがただの神子で終わるのではなく、神にまで至ったのは完全に想定外だった、と。マジデスカァー?


 ともあれ、わたしが仕事を代わらないといけないことに変わりはない。創造神の活動が途絶えるイコール世界が緩やかに滅びていくことを意味するからだ。それでも、冥界の王を撃退したことで六神の活動制限がなくなり、大っぴらに手を借りられるようにはなったので、その点ではマシである。


「はっ。わたしは創造神……つまり神様たちを部下として顎で使ってよい、と?」

「……使ってもいいけど、間違ったことを言ったらどうなるかわかっているわよねぇ?」

「言ってみただけデス。調子に乗ってスミマセンデシタ、オネエサマ」


 権限はわたしの方が上だけど、新米で右も左もわからない状態で生意気を言ってはいけない。例えるなら、世襲でいきなり社長になった二代目が、やり方をよく知っている昔からの従業員を大切に扱わなければいけないという当たり前の話だ。実際に部下という感覚もなく、六神の方がずっと立場は上だ。


 あともう一つメリットとして、わたしも創造神プロメーティアの像へと自由に転移が出来るようになったことが挙げられる。わたしがわたしとして神へと成ったわけではなく、創造神の力を受け取ったことで、力の性質としてほぼ同じだと認識されているからだ。そして帰還石を作ってしまえば皆で転移出来るので、創造神の像がある場所限定とはいえ大幅に移動時間が短縮出来るのは非常にありがたい。探索そのものも面白いんだけど、創造神業務があるからね……。

 ……そこでまぁ、問題も発覚したわけで。後で知るか、早めに知るかの違いしかないけど。



「……これは……大変そうですね……」


 一緒についてきてもらったフリッカから小さく零れる。

 眼前に、廃墟と腐った大地が広がっていたからだ。むしろこんなところに創造神の像が残っていたことが奇跡なくらい。……今は供養済みだけど、周辺に大量の死体があったので、住人たちが最期まで頑張ってくれたのだろう。手が足りなさすぎてどうしようもなかったとはいえ、惨事を防げなかったことに胸が疼く。


 ……そう、わたしが知っている村が運が良かっただけで、わたしの知らない各地で日蝕の影響を大きく受けていたのだ。

 わたしのところのみたいに肉が溢れたりはしなくても、一部は冥界と繋がり大なり小なりモンスターたちが侵攻してきた。それは、ただのヒトたちには脅威だった。村の一つや二つ、滅ぶには十分だった。滅びはしないまでも、大きな痛手を受けた村だっていくつもある。カミルさんの手を借りて復興作業中だけど、多すぎててんやわんやだ。


「逆に考えると、リオン様がこれまで各地で支援してきたことで防げたということではないでしょうか」

「……そう、かもね」


 知らなかった村まできっちり救え、といわれてもそれは不可能だと答えるしかない。

 けれど……神様と成った今では、知らなかったでは済まされないのだ。神子だった時は疲れたら休むことが出来たけど、もう許されないのだ。

 今更ながら、重圧に胃が重たくなってくる。

 粘度の高い溜息を吐いていると、そっと手が握られた。


「変わって差し上げることは出来ませんが……力の限りお支えします」

「……うん、ありがとう」


 わたしは独りじゃない。情けないけど、だから立っていられる。

 それに、大切なヒトたちのためにも、立ち続けなければいけない、歩かなければいけない。

 手を握り返し、わたしは決意を新たにした。

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― 新着の感想 ―
[一言] >わたしがただの神子で終わるのではなく、神にまで至ったのは完全に想定外だった、と。マジデスカァー? そーぞーしん「マ……マジデスヨー?(汗だらだら) ……ちょっと期待してたけど(小声&目逸…
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