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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第九章:金環の新たなる■■

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聞いてた話と違うんですけど?

 ――世界を絶望が覆い尽くそうとしたその時。

 ――闇の化身を従え、金環を頭上に戴き、新たなる陽を創出した様は……正に神と呼ぶに相応しい。



「…………………………なんですか、ソレ」

「……リオン、アンタの評価さね」


 わたしが創造神だなんて荒唐無稽な話を聞かされて真っ白になった頭のまま、地神に首根っこを引っ掴まれて引きずるようにいつもの神様ズハウスへと連行された。これは比喩表現であり実際に首根っこを掴まれていたわけではないけど、そんなしょっ引かれてる気分としか言えなかった。途中でやたらと周辺がザワついていた気がするけれど、何が話されていたか全く耳に残っていないくらいに思考が飛んでいた。そして聞かされた話がコレである。

 ……なんて???


「言っている意味が、わからないんですケド?」

「……そう言いたくもなるわよねぇ」


 神様ジョークか何かかな?と引きつった笑みですらない何かを浮かべながら聞き返すわたしに、水神が頬に手を当て溜息を吐きつつ同意してくれる。……でも、否定はしてくれない。

 他の神様たち……光神アイティを見ても首を横に振られ、火神は腕を組んで鷹揚に頷き、闇神は肩をすくめ、とそれぞれ順繰りに見やっても、誰一柱(ひとり)とて否定してくれなかった。風神に至っては爆笑するのを堪えているのが丸わかりな顔である。この笑顔、殴りたい。

 おまけでウルを見ても何がなにやらという顔をされ、フリッカを見ても困ったように眉尻を下げられ、セレネを見てもそっと目を逸らされる。わたしも現実から目を逸らしたい。


「……よくわからない評価は一旦さておき、本当にわたしが創造神に成ってしまったんですか?」

「本当よぉ」


 むしろ断言されてしまった。

 何度も深呼吸をして、こめかみを揉み解し、やっとわたしの口から出てきた言葉は。


「全部聞かなかったことにして、退席してもいいですか?」

「フハハ! 退席しても事実は変わらないぞ!」

「……や、でもほら、皆の様子とか、後片付けとか、拠点内の様子も見たいですし?」

「片付けはすでに指示済みだ。怪我人も治療済みであるし、拠点内はほぼ被害はないから心配しないでいい」

「それでも、直接会ってお礼とか――」

「むしろ今の君は顔を出さない方がいいと思うな……」


 現実逃避は、火神、アイティ、闇神にそれぞれダメ出しされる。あっ、風神が堪えきれなくなったみたいで噴き出した。おのれぇ。

 ……一体全体何でそうなったのか、こういう話らしい。

 冥界から世界を焼きながら呪う絶望にくが溢れ、あまりの量と勢いに抵抗は無駄で、人々は聖域化されていた拠点に避難することしか出来なかった。けれども際限なく溢れる肉は聖域をも覆い尽くし、それこそ『世界が終わるんじゃないか』と人々の心の中に絶望が忍び寄ろうとしていた。


「……内側から見たらアレは怖かったわよ。頭の上全てが凄まじい呪いだったんだから」


 セレネが思い出したのか、ブルリと体を震わせる。確かにそれは圧迫感がすごかろう。わたしなんか過去に一度肉の海に溺れかけたけど、あの時の肉と、触れるだけで蝕まれる今回の肉とでは脅威度が違いすぎるだろうし。いや自分で言ってて何なのさ、この経験は。

 しかし、絶望はそこまでだった。にく切り裂かれ(じょうかされ)、光が差し込んだからだ。

 短いようで長い日蝕が、終わりを告げようとしていた。

 にくが消え去り、久方振りの光を浴びたことで、厳しい戦いを乗り越え無事に生き延びたのだと、人々は歓声を上げながらひかりを見上げる。


 そこには、闇の化身(ウル)に乗り、未だ金環しか見えていなかった本物の太陽の下で、太陽の代替品アイテムを手にしたわたしが居た……というわけだ。更にはその後の聖属性の雨も「恵みの雨だ!」とダメ押しだったらしい。


「……闇の化身だってさ、ウル」

「確かに我の鱗は真っ黒であるがのぅ……破壊神ではあるので全くの間違いではない、のか……?」


 ウルには協力してもらっていただけであって、従えていたというのは事実とは異なるのだけれども……その辺りを突っ込んだところで評価が覆るわけもなく。


「あの時のリオン様は、私も神々しいと思ってしまいました」


 頬を少し上気させてほぅ、と息を漏らすフリッカ。わたしの性格なかみをよく知っているフリッカですらそう思うって……えぇ……。


「……単に、暗い中での目立つ光源だった、ってだけじゃ……」

「リオン、忘れていないか?」

「……何をかな、アイティ」

「貴女が使用したのは創造神の力であるということを。つまり……神による創造と、大して変わらない」

「めっちゃ変わりあるよね!?」


 創造神と、創造神から力を授けられた神子、そこに断崖絶壁にも等しい違いはあるでしょう!? そうでなければ、創造神の神子は全員神様になっちゃうよ!?


「……プロメーティアが僕より小さくなってしまうくらいに君に力を渡したのに、神子と同じなわけないよね……」

「そ、そうですけど、だとしても、闇神様から力を奪ったあの蛇は神様になってないですよね?」

「条件を満たしてなかったからね……」


 条件、ってアレよね……。不壊属性の心臓かくを持っていることはもうどうしようもないとして。創造神と破壊神の加護を持っていること……そういえば破壊神の力が少し残ってるんだっけ……。でもでも、一定以上の信仰だけはないはず――


「……ま、まさか……」

「うむ! 先ほどの光景で規定値まで信仰が得られたようだな!」


 火神の何故か得意気な声に、気が遠くなりそうだった。

 隣のウルに「だ、大丈夫かの?」と肩を揺さぶられてハッと気を持ち直す。そして同時に、思い出す。


「で、でも創造神様は、この力を受け取ったところでわたしが神様に成るわけじゃないって言ってましたけど……!?」

「そこがメーちゃんのうっかりと言うか……」

「ちょ、こんな重要なところでうっかり!?」

「プロメーティアも、リオンがここまで信仰を得るとは思ってなかったんだろうさねぇ……いやおそらく、普通であれば大丈夫だったんだろうが……」


 決まり悪げに続けられた地神の言葉に愕然とする。

 なんでも、ここまで熱狂?した原因が……どうやらリオーネ村のヒトたちの言動がきっかけらしい。あの、わたしに対してやたらと熱意というか、なんというか、そんな感じのことを向けてくるヒトたちの。

 そのヒトたちが……冒頭の評価を熱弁したことにより、他の村のヒトたちも、危機的状況から脱したばかりというのもあって乗せられて伝染して。膨らんで。弾けて。


「申し訳ありません、まさかあれがこのような事態に繋がるとは……」

「でも知ってたとしても止められなかったわよねぇ。実際に救われているわけだし……」


 フリッカはバツが悪そうに、セレネは気持ちはわかる、と。いくらなんでもこの二人を責める気はさらさらない。他の六神を責める気もない。……いや、さっきからおなかを抱えて悶絶している風神だけはとても殴りたい。

 そして創造神には文句を言いたい。とはいえ、わたしだって信仰を得られるなんて思ってなかった。忙しくてほとんど様子を見にくることすら出来なかった創造神に予見しろというのも酷な話…………やっぱり文句を言いたい……!


「地神様……この場合、創造神様はどうなるんです?」

「どうにもならんさね。力を取り戻せば創造神が二柱になるだけさね」

「それって……バランス的に問題ないんです……? この力を返せば、わたしは神子に戻れたりしません……?」

「バランスに関しては現時点では何とも。力は返せないこともないだろうが、一度神に成った者が神でなくなった前例は……んだ時だけさね。アタシたちが生み出されるより前の話だがね」


 それは……困る。神に成るくらいなら死にたい、とまでは思わない。

 どうしても……逃れられないのか。

 沈み俯くわたしの肩に、おそるおそるという風に手を乗せられる。ウルの手だ。


「まぁ、その、なんだ。新米同士、頑張ろうではないか?」

「――……あぁ」


 そうだ、わたしはウルに破壊神を押し付けてしまったのだ。ウルからすれば押し付けられた感覚はないのだろうけど。

 でありながら、わたしだけがウダウダとみっともない様を見せ続けるのはよろしくない。

 わたしは腹をくくり、笑顔……を作ったつもりだったけど、へにゃりと情けない顔で。

 ウルの手に自分の手を添えて。


「……よろしく、わたしの破壊神様」

「……うむ、よろしくなのだ。我の創造神よ」

章タイトル回収その2

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― 新着の感想 ―
[一言]  結局なっちゃったかぁ〜。 そーぞーしん「ひとりでアレもコレもとやる必要が無くなって、らっくらくで良いわ〜」 リオン「趣味のモノ作りの時間が無くなるからイヤだって言ったのに……」  になっ…
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