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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第二章:森奥の餓えた叫び

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リオンの三分メイキング

 作業しやすい場所へと移動し、即席の錬金教室が開催されることになった。


「素材は手軽に採れますし、手順も複雑ではありません」


 わたしは作業台を取り出し、そこに水、乳鉢と乳棒、ガラス瓶、各種ポーションの素材である植物を並べる。

 LPポーションにはバルム草、MPポーションにはリラ草、解毒ポーションにはデト草などなど一つずつ説明を添えていった。

 ちなみに、薬草はバルム草の下のランクで、【草】とだけ表示されるアイテムはまた別物である。たまに植物の種に変化するんだよね。原理は細かく考えてはいけない、創造神パワーなのだ。


「……どれもこの近辺で採れる物ばかりですな」

「……御祖父様、これ、家の裏に生えてますよね……?」


 まぁこれらの素材で作れるのはあくまで初級だからね。ランクを上げようと思ったら、スキルレベルだけでなく作業工程の工夫やら素材のランクアップやらが必要になってくる。


「さて、まずは乳鉢に素材を投入します」


 気分は某三分クッキングだ。などと思ってたら頭にあの音楽が流れてきちゃったよ。

 脳内でリズムに乗りながら投入したバルム草を乳棒でごりごりすり潰し、水を少しずつ足していく。水を足し過ぎてもしゃびしゃびになるので見極めが大事。


「重要なのはMP……魔力を篭めながら潰すことです。でも篭めすぎると溢れて無駄になるか、素材によっては壊れることもあるので気を付けてください」


 慣れないうちは少ないくらいの方がいいかも。ちょっと質が落ちるけれども、出来上がらないよりは多分マシ。

 わたしの作業を見て、ウィーガさんは感心したように呟く。


「ふむ、綺麗に流れていますな」

「あぁ、エルフは魔力が見えやすいんでしたっけ。それならちょっと楽かもですね」


 なお、わたしは魔導スキルレベルがまだ低いのでしっかりとは見えなかったりする。

 種族特性でエルフ自体が魔法全般得意だからね……羨ましい。


「素材が完全にペースト状になったら、今度は水に魔力を篭めながら少しずつ足して溶かしていきます」


 結局水を追加するのだから、最初から水をドバっと入れてはいけないのか?とは思うんだけども……ダメらしい。実際に試したのだけども劣化してしまった。

 多分、素材に魔力を馴染ませる工程が大事なのだろう。

 なお、このペーストが傷薬であり、このままでも使えるけれど効果は当然LPポーションに比べて低い。魔力の差かな。


「ペーストが一、水が十の割合になるまで足し終えたら終わりです。適当な容器に詰めてください」


 そしてわたしは出来上がった液体をガラス瓶に流し込む。

 偶然なのか知らないけど、作成に大体三分くらい掛かった。

 それでも思ったより遥かに短かったのか、フリッカが目を何度か瞬いてから訪ねてくる。


「……それだけ、ですか?」

「これだけ。ちなみに、他のポーションも全て同じ手順で出来るからね」

「何と……」

「説明のためにゆっくりやりましたけれども、慣れればもっと早く出来ますよ。魔力の効率的な流し方がわかってくる感じ?」


 と言ったら「これでゆっくりなのですか」とウィーガさんが少し引きつった気がする。いやでも、エルフならやり易いと思いますよ?

 まぁ、神子の場合は作成メイキングスキル使えば一瞬なんだけどもね。


 今後のために、ランク上げに必要なことも説明しておこう。

 さっきも言ったけど、重要なのはスキルレベルと上位素材。

 それに加えて、同じ素材でも状態が良い(耐久値が高い)やつを使う、道具のランクも上げる、魔力を篭める時に丁寧にやる(これは説明し辛い)などがある。素材によっては追加工程が入ったりもするけれど、これは追々だなぁ。

 手順自体は少ないけれども、極めようと思えば大変になってくるのがポーション作りだ。

 ここまで色々述べてきたけれども、わたしは人間ヒューマンだから、ひょっとしたらエルフならもっと良いやり方が見つかるかも、と締めくくっておく。


 あと、余談であるけれども、以前ウルにやってもらったら乳鉢が割れて乳棒が砕けました。

 そのトラウマ(?)が残っているのか、ウルは「ぐるるるる」と今にも唸りそうな顔付きで大人しくわたしの作業を見ていましたとさ。



 ウィーガさんはメモの手を止め、フゥと息を吐く。


「ありがとうございました。ところで、伝授の前に聞くべきことでしたが……報酬は如何程がよろしいでしょうか?」

「え? 要りませんけど」


 全く頭になかったですわ。

 わたしの回答にエルフ二人は唖然とし……ウィーガさんは慌てて言い募る。


「で、ですが、これは神子様の大事な技術……ですよね?」


 あれ、そこの認識がもう違うのかな? いや神子の悪行を考えればそうもなるかなぁ……。


「しいて言うなら、モノ作りをしてもらうこと自体が創造神様の力になるので、それが報酬ですよ?」


 大事な技術と言えばそうなるのかもしれないけれど、これは決して秘匿するべきものではない。過去にこの村に居た神子がおかしいだけだ。

 そもそも、神子の仕事は創造の力を振り撒くことなのだ。

 自分がモノ作りすることは勿論含まれるのだけれども、住人自身にモノ作りをしてもらうことも大いに含まれる。

 報酬が払えないなら作らない!とか、教えない!とかそんなことをしてはいけないのだ。


「……神子様自身のメリットがありませんよね? いえ、私共から差し出せる物は多くはありませんが、いくらかは……」

「……一応言っておきますけど、地位も嫁も要りませんからね?」


 あんなヤツと一緒にされても困る、と暗にこめる。

 そこは理解してくれたのか、こくこくと頷いてくれた。けれども、無報酬に関しては納得してくれないようで。

 うーんうーん……欲しい物かぁ……と悩んでいたら、ウルにつつかれてフリッカを指差された。

 え、まさかもらえって……ち、違いますよね。あぁうん、おかげで思い出した。


「フリッカ、良ければ聖花が欲しいんだけど」

「聖花……? それはどのような花ですか?」

「え? 祭壇の周りにいっぱい咲いてたよね?」


 わたしの拠点の祭壇周辺みたいにきちんとした花壇になってはいなかったけれども、別に花壇でなくともよい。こまめに手入れをすることが必要なのだ。


「あれがそうだったのですか……」

「知らずに聖水を撒いて保護していたの?」

「たくさん花が咲いている方が、創造神様が喜ぶかと思いまして」


 ……聖花と言うアイテム欲しさにやったわけじゃなく、ただ創造神のためにやったのか。

 それは司祭として、最も重要な素質かもしれない。

 いやその、わたしも創造神のためにやってるんですけどね? でもどうしても素材と言う所に目が行ってですね……!

 ……こほん。


「うん、それは正しい行為だね。創造神様も絶対に喜ぶよ。ついでにわたしも助かるし」

「――」


 わたしとしては至極当然のことを言っただけだったのだけれども。

 思いの外、彼女には刺さってしまったみたいで。

 一滴の、涙を浮かべていた。


「ちょ、え、待って、何か変なこと言っちゃった!?」

「いえ……私のやっていたことが無駄ではなく、創造神様のためになり、貴女のためにもなるのかと思ったら、はずみで……」


 あぁ……創造神も力が弱くなって、あまりきちんと動けてないみたいだからなぁ。

 司祭であれば余計に、信仰対象の姿が見えないのは不安にもなるか。

 更に、過去の神子の悪行の数々を聞きながらよくもまぁ歪まなかったものだ、と本当にありがたい気持ちである。

 わたしじゃ何の代替にもならないかもしれないけれど、せめてもの感謝を伝えよう。

 そう思いを篭めて、フリッカの手を握る。


「大丈夫。きみの信仰は、必ず創造神様の力になる。だから……くじけないで、続けてほしい」

「……っ」


 フリッカは手を握られたことに驚き、少しだけ逡巡してから。

 ポスンと、わたしの肩に額を当てて。


 小さく「……はい」と囁くように零した。

素材としての薬草と、回復アイテムとしての傷薬がごっちゃになっていたので修正しました。

あと、誤字報告してくださった方、ありがとうございました。

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