表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界の開拓記  作者: なづきち
第九章:金環の新たなる■■

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

479/515

最後の罠

 ケルベロスが破壊神の力を利用しているのなら、ちまちま削ってはいられない。最大火力で速攻しなければ、せっかく破壊神が解放出来たのに力を吸われすぎてヘロヘロになっているという事態になりかねないからだ。破壊神の力を借りるために異界アザーワールドまで遥々とやって来たのに、そんな結末になってしまってはとても困る。

 ……破壊神も光神アイティや闇神みたいに小さくなるのだろうか? どうしようちょっと見てみた――ごほん。すでにウルが居るからわざわざ見るまでもない――いやいやそういう話でもない。こんなこと考えていたってバレたら蹴られるだけじゃ済まなさそうだ。


 フゥと一つ息を吐き、改めてケルベロスを観察する。

 破壊神の力を利用しているとはいっても、使いこなしているわけではなさそうだ。精々がダメージをいくらか低減させているくらいだろう。

 だったら、変則的とはいえ破壊神の力を得た破壊神の神子(わたし)が、出力で負けてはいられない。もし負けたら破壊神に何をされるかわからなくて怖いぞ。……その時はそもそも会えないか。


 わたしは聖剣をアイテムボックスに収納し、右拳に力を籠める。最大まで力を籠めるとどれだけ高耐久の武器であってももたないからだ。わたしの創造神の神子としての能力が不足しているという話ではなく、創造プラス破壊プラス終末の獣、全てを籠めた力に敵わないだけである。……それすらも耐えられる装備を作れるようになれ、というのはその通りなのだが。今は悲しいことにそこまでモノ作りのみに集中出来る状況ではないのだ。


 ウォン!!!


 ケルベロスがわたしが何かしようとしていることを察知したのだろう。妨げるように巨体で突撃してくる。チャージ攻撃の前に隙が出来るのはお約束とはいえ、妨害される方になるのは面倒だな!

 ひたすら拳に力を籠め(チャージし)ながら、ケルベロスの牙を避ける。爪を避ける。尻尾を避ける。獲物わたしに攻撃が当たらないことにイライラしているのか、攻撃が雑になっているのが一助にもなっている。最初に床をカリカリしてたことといい、こいつは短気なのか?

 近距離だと回避に忙しいと思い、大きく距離を取ったら――すかさずケルベロスは三つの頭全部で極太ブレスを放ってきた。これが今までの通路や小部屋だったらピンチだったけど、大部屋になったことで避けるスペースは十分にある。……といいながらもブレスが速すぎて掠った! 危なぁ……!


「……ん?」


 わたしが服の袖を焦がすと同時に、ケルベロスが口元を焦がして血を吐いていた。

 え? 自爆? そんなバカな……いや、あれは破壊神の力を持て余しているのか? 威力は増しているけれど、きっちり制御出来ていないせいで反動が来ているのか。攻撃が雑だったのも痛みで気が取られているのかもしれない。あの神様の力は一筋縄ではいかないだろうしね……。

 これ以上破壊神の力を消費されてたまるか、と最後にもうひと踏ん張り力を籠めて。一気に、決める!


「はあああああああっ!」


 ガアアアアアアアアアアアッ!!!


 わたしがジェットブーツに魔力を叩き込んでケルベロスに向けて急加速するのに合わせて、ケルベロスはブレスで迎撃しようとする。ダメージ覚悟で突っ込んだのだけれども、先ほどのブレスのダメージが祟ったのか、連続でほいほいと使用出来ないのか、ブレスが細くなったことでギリ避けることに成功する。

 ただ、ブレスが駄目でもケルベロスには牙がある。眼前に迫ったわたしにケルベロスは大きく口を開け、噛み千切らんと勢いよく閉じるが――


「どっせええええええええい!!」


 ドッパアアアン!!


 わたしは右拳を突き出して自分からケルベロスの口内へと突っ込み、牙をへし折りながら喉の奥へと到達。そのまま頭をぶち抜いた。

 一度首の裏から通り抜けたが、方向転換。上から背中へと再度拳を振り下ろす。頭のように貫けはしなかったけれど、肉が潰れ、骨が砕けていった。


 ア゛ア゛ア゛アアアアアアアッ!!


 それでもまだケルベロスはしぶとく生きていた。残る二つの頭が狂乱しながらも、自分の体ごと喰い尽くしてやるといわんばかりの勢いでわたしに牙を剥く。

 わたしはそれを避けず――


「毛皮が硬かろうが、中身までは硬くないのもお約束でしょう!!」


 ケルベロスの肉体に埋まったままの右拳で、セイクリッドボムを炸裂させた。


 ドボッ!!!


 わたし自身すら巻き込んだその爆発は、ケルベロスの肉体を吹き飛ばし、今度こそケルベロスを絶命させるのだった。



「……あっぶなあああ……っ!」


 ぶっちゃけ、このミノスの大迷宮で、先ほどの至近距離セイクリッドボムが一番ダメージを喰らった。聖属性はともかく、爆風は普通に喰らうからね……ポーションで回復出来たけども。……皆に知られたら盛大に怒られそうなので黙っておこう。

 飛び散ってこびりついたケルベロスの肉片やら血やらを『最初の頃に比べてこの辺りのメンタルはかなり図太くなったよなぁ』などと感慨深い(?)思いをしながらざっくり拭き取ってから、ドロップアイテムの物色――じゃなくて、まず破壊神の封神石を探さなければ。

 ……体内で思いっきり爆ぜさせちゃったけど、さすがに封神石ほどの物であればちゃんと残ってるよね? 壊れたりしてないよね?

 ちょっとだけ冷や汗をかきながら捜索すると、傷一つない封神石を発見して胸を撫で下ろす。


「はぁ、よかったぁ……」


 封神石を手に取ったところで、ドッと疲れが出てきた。ケルベロスとの戦闘時間は短いものだったけど、全力を振り絞ったため疲労感が強い。創造神の力に比べて使い慣れていない破壊神の力を使ったのであれば尚更だろう。

 心と体を落ち着けるためにも、先にドロップアイテムを拾い集めていく。……決して『破壊神を解放したら拾う暇がなくなるだろうから』なんて思ったからじゃない……よ? そして破壊神の力を目いっぱい使ったことで、ドロップアイテムの質が落ちていることに泣いてなんかないよ?


「さて、今度こそ……っと」


 気を取り直して、封神石に向き合う。

 緊張でゴクリと喉を鳴らしつつ、【魂の鍵】を取り出し――


 ゾクリと。

 悪寒が全身を走って、取り落としてしまう。


 ……な、なんだ? 今のものすごく嫌な感覚……。

 深呼吸で落ち着かせて、【魂の鍵】を拾ったところで。


『このアイテムは、使ってはいけない』


 そんな直感が、わたしの中を駆け巡った。

 『使っても無意味』ではない。『使ってはいけない』だ。

 手に持っているこれは間違いなく破壊神の封神石だし、そのように表示されている。それはわたしの心臓むねの疼きが保証しており、表示が偽装されているわけでもない。全然違う、封神石に似せたトラップアイテムとかではないということだ。

 仮にゲーム時代と状況が違うのだとしても、封神石にアイテムを使ってはいけない、となるのは何故……?

 ……もしかして。


黒幕ラグナは、わたしが解放時に【魂の鍵(これ)】を使うだろうとわかっていた? その対抗策……?」


 いや待て、これまで四柱の解放をしてきたけど、特定のアイテムに頼ったことはなかった。解放する際に特定のアイテムは不要ということであり、そんな状態で【魂の鍵】にピンポイントで対策しようとは思わないだろう。

 ……まぁ、元より封印の力を変換したり無効化したりすることが重要なのだから、わざわざ用意しなくても良かったかな……と溜息を吐きながら【魂の鍵】をしまいこみ、火神を解放した時のように『封印の機能を壊す』ことをイメージしようとして――


 またも、悪寒が走った。


「は!?」


 慌てて力を霧散させる。封神石には良くも悪くも変化はない。浮き出た汗を拭う。

 地神の時のように封印の力を魔石に移そうとしても、風神の時のように分離セパレーションスキルを使おうとしても、脳内にアラートが鳴る。では水神の時のように浄化すればいいのか? この封神石は汚染されているわけではないし、勘が『それも違う』と囁いている。

 つまり……これは。


「解放しようとすることそのものが、トラップになっているのか……?」


 ……こんなの、どうすればいいんだ……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >創造プラス破壊プラス終末の獣、全てを籠めた力に敵わないだけである。……それすらも耐えられる装備を作れるようになれ、というのはその通りなのだが 不壊ブロック(俺を使え……俺なら簡単には壊れ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ