表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界の開拓記  作者: なづきち
第九章:金環の新たなる■■

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

477/515

壊して進む

「ごもっともですううううう!」


 現実に声を出しながら跳ね起きた。

 そして何やら胸元が痛い。寝返りでうつ伏せになって、身に着けたままのペンダントが刺さったようだ。……どうしてこう、破壊神に起こされる時は妙に痛みが発生するのか。あの神様、精神世界だけじゃなく現実世界でもなんかしてる……ことはないか、さすがに。

 ゴーレムの動力源の魔力ねんりょうの減り具合からして、寝ていたのは十五分ほどか。仮眠ってレベルだな。しかしそのおかげか、頭がスッキリしている。……久しぶりに誰かと話せたってこともストレス解消になったのだろう。


「……ありがとうございました」


 ペンダントの更に下、心臓の上に手を添える。

 今にして思えば、ウロボロスドラゴンの魂を素材にして作ったウロボロスリングを素材にして、わたしの心臓が出来ているのも妙な縁だ。元の世界(ゲーム)から持ち込んだ唯一のアイテムは記念アイテムだとばかり思っていたのに、本当に破壊神ウロボロスドラゴンの力の欠片が宿っていたなんてね。まぁ魂アイテムがレプリカであるのは確実だろうけど。本(にん)は封印されてはいても生きているし。

 ……そういえば、他にもいくつか魂アイテムを持っていたっけ。ベヒーモスのだけは使用してアステリオスとして生まれ変わったけど……他のやつは特に使う気は起らないな。ゲームと状況が違うし、レプリカじゃないだろうし、気軽に使うには重いからね……。いずれ、アステリオスのように使う時がやってくるかもしれないけれども。


「おっと、そういえば……」


 わたしは破壊神に言われたことの一つ、鏡の件を思い出して取り出す。

 拠点に居る時と違って、顔を洗いはしても鏡で寝ぐせを直したりはしてこなかったからなぁ……と覗き込むと。


「……わ、わぁ」


 最初は右側の前髪の一房が黒かった程度だったのだが……右側を中心に、髪の四割くらいが黒く染まっていた。いつの間にこんなに変化したんだ。鱗が増えているのはわかってたけど、髪もここまで影響出ていたかぁ……あ、顔にも鱗が増えてる。

 この見た目で「創造神の神子です!」と主張したとして、わたしのことを全く知らない人だとどう判断することやら……。疑われて協力してもらえない程度ならいいんだけど、敵対されるのはちょっと困る。まぁそれを考えるのは日蝕を乗り越えた後か。最悪、神様たちに泣きつけばなんとかなるでしょ。

 ともあれ、それくらい破壊神の力がこの体に浸透してきているって証の一つなのだろう。

 手をグーパーと動かす。以前と違いは感じられない。それでもなんだか、やれる気がしてきた。その理由が破壊神に言われたからだとしたら、わたしも随分と単純だな。


「壁を壊す、だっけ。石材っぽく見えるから、適正ツールはピッケルかな?」


 木材ならアックス、石材ならピッケル、土であればシャベル、とそれぞれの材質に対応して適切にツールを使用する必要がある。今なら力でゴリ押しも出来るかもしれないけど、ツールがない状態ならともかく、あるのにわざわざそうする必要はない。なお、素手でぶん殴るという選択肢は今のところない。わたしは脳筋じゃない……と思いつつも、なんでも拳でぶち壊すウルのことが脳裏を過ってなんかごめんという気持ちになった。というか、道に沿って進むのではなく、壁を壊して進む時点で十分に脳筋ですね、はい。


「えっと……目的地の方向は、っと」


 わたしは小部屋の壁を前後左右で調べてみる。入ってきた方向から見て左側で、わずかに心臓むねが疼いた。

 ――こっちだ。

 今まではあてもなく、通路に沿って彷徨っていたけれど、方向がハッキリとわかってなおかつ真っ直ぐに進めるのならば、かなりの時間短縮になることだろう。ついでに言えば、そこまで遠い感じもしなかった。これまでの道行は全くの無駄ではなかったとも知ってちょっとホッとする。


「まず最初に実験してみるか」


 特に何も意識せず、ピッケルを壁へと突き刺してみる。

 ガキン!と甲高い音を立てて弾かれた。壁を触って確認するけど、毛筋ほどの跡も付いていないし、逆にピッケルの方がゴリッと耐久力を持っていかれた。わかってたけど、おのれぇ。


「次は破壊の力を意識して……柄を握り潰さないようにしないとな」


 これで何も気にせず力を使うと、ウルと同じ目に遭ってしまう。慎重に力を、ピッケルの刃先に向けて流し込むようにして――振り下ろす!


 ガッ!

 バキンッ!!


「壊れた! ……けど、壊れた……」


 壁は確かに破壊出来た。突き刺した部分が大きく抉れている。床に落ちた壁だった欠片を拾うと、【星の強化石】と表示された。ただし壊れているので再利用は出来ない、と。残念だ。まぁ石は石なので、適正ツールはピッケルで合っているってことか。

 けれどピッケルもこの一撃で壊れた。先ほどので耐久が削れていたとはいえ、一撃でこれかぁ……やはり素手?

 と悩んだところで、ある物を入手していたことを思い出す。


「そういえば、これがあったな」


 わたしはこのミノスの大迷宮で手に入れたばかりの隕石メテオライトを取り出す。これでピッケルを強化してみてもいいかもしれない。

 隕石は転送門トランスポーターの時のように、きちんと加工しようと思えばものすごく面倒な手順が必要となる。しかし、形を変えるくらいならなんとかなりそうな気がしたのだ。


作成メイキング――」


 魔力を注ぐ。予想通りにめちゃくちゃ魔力を持っていかれるけれど、予想通りにぐにゃりと形を変えてくれた。わたしは隕石を、ピッケルの刃先と、握る部分をコーティングするように変化させていった。突貫だけど、元の素材よりは強度が増しているでしょう。

 コーティングしたピッケルを持ち、フゥと一つ息を吐いてから腹に力を入れる。


「これで、もう一度……破壊の力を意識して、振り下ろす!」


 ドゴンッ!!


 前回に比べて明らかに大きな音がして、大きく穴が開いた。そしてピッケルも少し耐久は減ったけど壊れていない。万が一壊れても、隕石部分の耐久の減少は微々たるもので再利用出来そうだ。よし、これなら!

 ガッコンガッコンと壁を壊し続け、ついには壁の向こうの通路へと到達した。やったぜ。

 と喜んでいたら、狙ったかのようにランダムワープでモンスター、クォーツゴーレムが出現する。


「邪魔をするなぁ!」


 持っていたピッケルでそのまま殴りつける。同じく破壊の力がこめられたその一撃は、クォーツゴーレムを木端微塵にした。

 ……ピッケルの耐久が少しとはいえ減ってちょっと勿体ない気がしたけど、やってしまったものはしょうがない。って、あああああ、ドロップアイテムの質が明らかに悪くなってるぅ!? ……攻撃に使うのは必要最小限にしよう……。


「しかし、ランダムワープの問題もあったな」


 直線移動が出来るようになったとしても、途中で知らず知らずランダムワープで後方に飛ばされてしまっては意味がない。目的地との感覚で飛ばされたかどうかはわかると思うけど、飛ばされる前に存在を知って避けるもしくは壊したい。なお、前方に石を転がしてみても無意味だ。石に反応しなくてもわたしに反応するパターンが多々ある。本当に厄介なのだ。誰だこれ作ったヤツ出てこい! ……いや、めちゃくちゃ強い存在だろうからやっぱ出てこなくていいや……。壁を壊したことで、怒って出てきたりしませんように……。


「あ、待てよ。単純に、進行方向にあるヤツを全部壊しておけばいいのか」


 ピンポイントに破壊するのではなく、直線状に力を振るえばいいんじゃなかろうか?

 わたしは今度は弓を取り出し、矢をつがえる。

 矢じりに破壊の力を乗せるイメージをして……放つ!


 ゴバッ!!


 何もない通路であるのに、確かに何かが壊れるような音が響いた。狙い通りにいった!

 壁はピッケルで破壊、通路のランダムワープは弓で破壊。こうしてわたしは最短距離で進む手段を得て、ついに……破壊神の封神石がある部屋まで辿り着くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >「ごもっともですううううう!」 >そして何やら胸元が痛い。寝返りでうつ伏せになって、身に着けたままのペンダントが刺さったようだ。 >「……ありがとうございました」 フリッカ「こうして抜き…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ