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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第八章:凍土の彷徨える炎獄

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段々丸くなる

「うんめぇ……! お前らいつもこんな美味い飯を食ってるのか!?」

「リオンが居る時は大体そうだな。めちゃくちゃ助かってるよ」

「ぐぬ、あいつの料理か…………俺も料理を勉強した方がいいかな……」


 ウルの腹時計がお昼を訴えたのでダンジョン内のそこそこ広い空間で休憩を取っているわたしたち。

 レグルスとジルヴァが食べながら賑やかにそのような会話をしている。ジルヴァは料理を褒めたかと思えば何やら恨めし気な視線を向けてきて、忙しいものだ。まぁフリッカ含めて皆の胃袋を掴んでいるのは事実ですけどね? この分野で負ける気はないぞ。なお、フリッカが料理を作ることもあるけどあいつには出してやらん。嫌がらせでジズーの卵料理でも出してやろうかと一瞬思ったけど、吐き出されてもったいないことになるだけだろうからやめた。

 ……や、大丈夫よ。ちゃんと食材確認してますからね? おっかなびっくり食べなくていいのよリーゼさん?


「フリッカ、体力は大丈夫?」

「はい、問題ありません。……リオン様の料理はいつも通り美味しいですね」


 ご飯が美味しく食べられるなら大丈夫だろう。フリッカも昔に比べれば随分と体力が付いたものだ。

 わたしへの恨めし気な視線が強まった気がするけどスルーだスルー。むしろもっと見せつけてやれば諦めてくれるだろうか? ……恥ずかしいから無理ですね。そこまでオープンにはなれないよ。


「もぐもぐ……それでリオンよ。このダンジョンはまだ続きそうなのか?」

「んー……核の反応からしてまだ先かなぁ。今日一日では終わらなさそう」

「……まさか村の近くにここまで大きなダンジョンがあったとは……」


 ウルの問いに予想で答えると、ベオルグさんが頭が痛そうな顔をした。いくら村に近くても、神子わたしみたいにダンジョン核が察知出来るならともかく、物理的に繋がっていない状態であれば普通のヒトではなかなか気付けないかもね。元の世界みたいに地下施設を作るでもないし、ただの穴だったところに最近になってダンジョンが発生した可能性もあるし。

 攻略時間に関しては、ウルが全力で対応しなければ、という注釈が付く。ここに来るまではレグルスとジルヴァに先頭を任せていたから、最初の想定よりは遅めだ。レグルスとリーゼであればもう少し進んでいただろうし、ウルであれば比べ物にならないくらい進んでいただろう。宣言通りに置いて行かないのかって? ジルヴァが想定より大人しくなっているので様子見中ですよ。



 食事を終えて奥へと進む。

 ベオルグさんたちが調査済みの部分は過ぎ去り、未知の場所となった。しかし急激に光景が変わるわけでもなく、太い道に枝道がいくつも空いている似たような光景が続いている。


「リオン、調査するか?」

「いや、無視しよう。行き止まりになるまでは太い道を進んで」

「了解だ」


 引き続き先頭のレグルスに指示を出す。

 迷宮型であれば狭い道の先に扉を開けるスイッチが――なんてこともあり得るけど、ここは明らかに手の入っていない、自然の洞窟がそのままダンジョンに成ったものだ。そんな手の込んだ仕掛けはまずない。ひとまず一番太い道、つまり一番利用されていそうな道を辿っていくのがガーディアンに遭遇しやすい。そしてガーディアンがいるならダンジョン核も近くにあるという寸法だ。そこまで近付けばガーディアンを目印にしなくてもダンジョン核の場所はわかるので、壁を掘って迂回も出来るのだけども……倒しておいた方が村人さんたちにとっても安心材料になるか。


「行こう、リーゼ!」

「うん!」

「お、俺も負けてられるか……!」


 道が広くなったので、リーゼも前衛に加わることになった。サイドやバックアタックはウルが居る時点で心配は要らない。加えて殿にはベオルグさんがどっしりと構えている。

 こちらの手数が増えると同時にモンスター側の手数も増え、少しずつ強くもなっているけど、現時点では特に問題は起こっていない。三人の攻撃プラスわたしとウルの遠距離攻撃、フリッカの魔法攻撃によるサポートもあって、進行速度はやや速くなったぐらいだ。


「……くっそぉ……!」


 しかし速くなると、体力の減りも速くなるわけで。

 わたしたちの中で(フリッカは別として)一番鍛え方が足りないジルヴァの動きが精彩を欠き出した。息が荒くなり、テンポが遅くなり……攻撃力が足りなくなる。

 ガキリと、岩のように硬い甲殻を持つソリッドスコーピオンに短剣を弾かれ、大きな隙を晒してしまう。


「――あっ」


 ダメージを喰らったところで、事前に渡しておいた身代わり腕輪(スケープブレスレット)があるので死ぬことはない……のだけれども、さすがにわかってて見捨てるのは人道に悖る。わたしが甲殻の隙間に矢を射て攻撃を逸らさせて、その後すぐさまウルの投石で甲殻が破壊され、頭も破壊された。あれ、これわたしの攻撃要らなかった?

 ポカンとするジルヴァであったが、「戦闘中に呆けるな!」とベオルグさんの一喝で復帰し、残りのモンスターの殲滅に向かうのだった。

 そして戦闘後に。


「……助けてくれて………………ありがとう」

「どういたしまして」

「うむ」


 後半が小声だったし、目線も合わせずそっぽ向いていたけど、無視されたり変に突っかかられたりするよりはよっぽど上出来だ。


「で、どうする? まだついてくる?」

「……ついていく。俺はまだ戦える」

「負けん気を発揮するのは悪いとは言わないけど、自分の能力を把握して戦うのも必要だよ。本当にダメだと思ったら大きなケガをする前に退いて」

「…………わかった」


 自分の強さに自信があっただろうに、その自信はかなりすり減っているように見える。それでも泣き言を言わずに前を向くのは美点ではあるか。少し評価をプラスしておこう。……フリッカを見たことでマイナスにしようかと思ったけど、それだけでマイナスにするのは心が狭すぎると自分を戒める。

 横からレグルスの「オレにもあんな時代あったよなぁ」などと呟きが聞こえる。ここを越えられればきっとジルヴァも強くなることだろう。

 ……強くなったところでフリッカは渡さないけどね!


「さて、今日はここまでにして休もうか」


 ジルヴァの体力の件を抜きにしてもそろそろ休み時だ。彼以外は体力が残っているけど、残っているうちに休まないともしもの時が大変になる。


「そうか。俺は大して働いていないから、不寝番に――」

「いえ、大丈夫ですよ。ちょっと待っててくださいね」

「……は?」


 (つぶらな)瞳を瞬くベオルグさんはひとまず置いておいて、いつもの野営の準備を開始する。

 さて、広い道は塞がない方がいいかな。壁に穴を開けてスペースを作る。そのスペースに特別製石ブロックを敷き詰めて部屋を作成する。部屋の周りに聖水は撒けないし、聖石を置いて。ダンジョン内だから念のため追加強化として、狭い空間では聖火は怖いから派生品の聖光のランタンを天井部に吊り下げて、と。今回は男女でしっかり空間を分けられるように仕切りも設置。覗いたら処す。後は人数分の寝具を出して、不寝番に警備ゴーレムを出して。


「こんなもんかな。んじゃ、晩御飯食べようか」


 と振り向くと、案の定というか、あんぐりと口を開けているジルヴァとベオルグさんが居た。そういえば彼らはラスア村でわたしが家を一軒作った時には居なかったっけ。他の皆はすっかり慣れて「ほー」と感心と感謝はしてくれるけど驚きはしなかった。ちょっと寂しいような、毎度驚かれても困るからこれでいいような。

 晩御飯はなんだろうなーと和気あいあいとする皆を他所に、ジルヴァが一言。


「……一体なんなんだよぉ……!?」


 神子ですから……。

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― 新着の感想 ―
[一言] >……フリッカを見たことでマイナスにしようかと思ったけど、それだけでマイナスにするのは心が狭すぎると自分を戒める。 フリッカ「むしろ特大マイナスでお願いします。 リオン様にだけ一生見つめ続…
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