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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第八章:凍土の彷徨える炎獄

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マナの種族

「おや、お帰り。……リオン、アンタはまたそんなホイホイと拾ってきて……」


 拠点うちに帰ってきて、祭壇周りに居た地神(祭壇周辺の花壇の世話をしてくれているので、ここに居ることが比較的多い)が、わたしたち――正確には連れてこられたマナを見るなり、そのようなことを零す。もちろん怒っているわけではない。わたしは人攫いなんてしないし、事情もなしに拠点に連れてこないとわかってくれているからだ。


「また、と言われましても、前回セレネについては破壊神様の要請ですよ……?」

「それはそうなんだが、連れてくる相手が珍しいのばかりだと思ったのさね」

「珍しい? マーメイドがですか?」


 竜宮城あそこには結構マーマン・マーメイドが居たけれど……実はあそこ以外にはほとんど居らず、絶滅危惧種だったりするのだろうか?

 という予想は外れだったようで、地神が眉をひそめて思いもよらぬことを言う。


「……マーメイドだって?」

「え? 地上なのでヒトの足してますけど……マーメイドですよね?」


 まさか本当に違う種族だった? もしも長老さんの言っていたような命を啜る種族――だとしたら地神はもうちょっと反応しているか。わたしやウルはともかく、フリッカはか弱いので警告くらいはしてくれるはずだ。マナはずっとフリッカにくっ付いているけど、疲れた様子も見せてないし。……まぁこれはわたしのご飯を食べたことでお腹が空いてないからって可能性もある。それならそれでちゃんとご飯を食べるので命を啜るとか気のせいってことになるし……などといくら考えてもわかるわけがない。神様が知っているなら聞く方が手っ取り早いし確実だ。


「何かご存じなのですか?」

「知っていると言えば知っているが……まだ花壇の手入れの途中なんだ。そうさね、水系だし水神ネフティーに聞いておくれ。今なら屋敷の方に戻っているはずさね」

「わかりました」


 餅は餅屋、水棲種族は水の神様ってことかな。

 わたしは地神にお礼を言い、神様ズハウスへ向かうことにした。

 後ろから「なんでかみさまがいるの……?」と呟きが聞こえてきたけど……また事前説明を忘れてしまったようだ。

 ……って、今の地神は神気隠蔽布を纏っているので神気は漏れていない。『地神様』と呼んでもいない。それなのに、なんで神様だとわかったんだろう?


「ねぇマナ、地神様の像を見たことあるの?」

「? ないよ?」

「え、じゃあなんであのヒトが神様ってわかったの?」

「……? なんとなく……?」


 そっかぁ、なんとなくかぁ。

 ……で済ませちゃダメだよな。穴を見逃すと黒幕ラグナに察知される確率が高くなってしまう。アレは神様たちの顔を知っているからさすがに直接対面したらバレるけど、遠くからならバレないように隠蔽しているのだ。わたしからも破壊神の力?が漏れているらしいし、後で原因究明しておかないとなぁ。



 ゼファーと別れ、マナにしがみつかれているフリッカはともかく、ウルも一緒に、わたしたちは神様ズハウスへと向かう。

 そこに居たのは水神と闇神だけだった。……風神と火神(うるさいふたり)が居なくてよかった、とは心の片隅に押しやっておく。先ほどの地神と花壇しかり、神様たちは拠点の維持を手伝ってくれているので、日中は散らばっているのよね。拠点内で取得出来る各種素材の質も上がるし、ありがたいことだ。

 あとは火神が鍛冶をしてくれたり(酒の方が興味が強く、いつかドワーフ夫婦と暴走しやしないかが頭痛の種だ)、光神アイティが子どもたちの訓練……というより遊びかな、相手もしてくれている。皆最初は神様相手に畏れ多いと萎縮していたけれど、馴染んでくれてなによりだ。

 風神と水神も一か所に留まるよりはぶらつくほうが好きで、唯一、闇神だけが引きこもり気味だけど……彼は来たばかりなので仕方がない、と思っておこう。子どもたち相手にすらビクビクしている神様なんてのは居ない、いいね。見知らぬ子ども(マナ)を目にして、部屋の隅っこで固まっているのは見なかったフリだ。


「あらぁ、お帰りなさい。……また珍しい子が増えたわねぇ」


 水神の第一声がそれだった。先ほどの地神のセリフでわかってはいたけど、マナがマーメイドでないのは確定だ。


「ただいま戻りました。この子は諸事情により預かることになったマナです」

「……よ、よろしく、おねがいします……」

「そう。私は水神ネフティーよ。あっちでキノコを生やしていそうな黒いのは放っておいていいわぁ」


 「ちょっ……!?」と小さく抗議の声が聞こえたけど、動けない時点で全くもって神様の威厳がない。むしろ正体を知られない方がいいのでは?

 ショックを受けている闇神を他所に、テラスの方へと移動をする。……闇神も気にはなるのか、ジリジリと窓際まで移動していた。彼にもお茶くらいは出しておくか。


「それでネフティー姉さん。『珍しい』と仰いましたけど……この子の種族って……?」

「……リッちゃん、気付かなかったの? その子はウンディーネよぉ」

「えっ。ウンディーネって……精霊種の、ですか?」


 精霊はゲームでも存在していた。見た目は様々で、ヒトに近い種もいれば、モンスターに近い種もある。メインに六大精霊として地のノーム、水のウンディーネ、風のシルフ、火のサラマンダー(リザード同様に同名のモンスターが居るのでややこしい)、光のウィルオウィスプ、闇のシェイドがいて、派生として木のドリアードや氷のフェンリルなどが居る。

 ……この世界(アステリア)に来てから一度も遭遇したことがなかったので、すっかり存在を忘れていた。ゲームにおいては気紛れにプレイヤーを助けてくれたのだけど……ここではどうなんだろう。


「神子……というよりは創造神メーちゃんの手助けをしてくれる種族……だったのだけど、メーちゃんの力が弱まったこと、私たちが封印されてしまったことで数を減らしちゃったのよねぇ……。今はほとんど存在していないんじゃないかしらぁ」

「つまり、吸血鬼ヴァンパイアみたいな希少種族のようになっている、と」


 道理で一度も遭遇していないわけだ。

 しかし、創造神が力を失う、神様たちが不在になると数が減るというのは、どういった理屈だろう。


「精霊はヒトと同じように見えて、創造の力や魔力、神力を活力として生きているからよ。そして破壊の力には滅法弱いわぁ」

「あれ? マナはわたしの作ったご飯を食べましたけど?」


 というか、現時点でもウルと一緒におやつを食べている。わたしと水神の会話に耳を傾けてはいるようだけど、それでもしっかり食べる辺り意外と神経が図太いのか、単にお腹が減っているのか。マナはわたしに見られて一瞬手を止めたけど、見ているだけとわかったら食べるのを再開した。……図太い方か? いや、そういえばお昼過ぎてるのにお昼ご飯を食べてないわ。ダンジョンで小休止したけど、以降はバタバタしていてそれどころじゃなかったからなぁ。わたしも急に空腹が気になってきてしまった。


「それは正確には、リッちゃんの料理に含まれている創造の力を摂取しているのよぉ」

「……なるほど? ご飯が食べられないわけではない……けれども、創造の力やら魔力やらが含まれていないと食べられない……?」

「そうなるわねぇ。とはいえ、料理には大なり小なり創造の力が籠められるのだから、食べられないことはないはずよぉ」

「えっ」


 竜宮城の長老さんは、『マナは料理があまり食べられない』と言っていた。『あまり』と付けていたからには、全く食べられないわけではなかったのだろう。けれども、常にお腹を空かせているとなると……。


「……何かトラブルがあったからその子を連れてきたみたいね。経緯をちゃんと話してもらえるかしらぁ?」

「あ、そうですね」


 そういえばまだ何も説明していなかったな。わたしは海中ダンジョンでマナと出会ったこと、その後の竜宮城で起こった出来事を水神(と闇神)に話していくのだった。

精霊は過去に一度だけ言及していて(53話)、それから作者がすっかり出すのを忘れていました_(´ཀ`」 ∠)_(トリアタマ

そして気付いたらフラグ回収をしていた…。

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― 新着の感想 ―
[一言] >「え、じゃあなんであのヒトが神様ってわかったの?」 >「……? なんとなく……?」 >創造神の手助けをしてくれる種族  まあつまり、もともと神の手助けをするための種族だから、神力を隠して…
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