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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第八章:凍土の彷徨える炎獄

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結局海中へ

『隕石、ですか? 知らないですねぇ……』


『うーん、見たことないな』


『すんません、さっぱりですわ』


 行く先々の村を巡りながら、いくらかの物資支援と壊れた物の修理と引き換えに情報を集めてみたものの、概ねこんな感じだった。

 まぁそうだよね、期待はしてなかった。元の世界でも隕石の大半は大気圏で燃え尽きるらしいし、燃え尽きずに落ちてくるとしてもネットもテレビもラジオもないこの世界では情報が碌に集まらず、自分の観測範囲内限定となると更に確率が低くなるだろう。

 むしろ闇神が曖昧であっても知っていたのがラッキーなくらいだ。たまに拠点に帰ってはいるけど、創造神からは未だに反応がない。……それだけ力を使わせたということであり、段々申し訳ない気持ちになってくる。生きてて良かったとめっちゃ感謝はしてます。

 その次の村も隕石の情報がないという点では同じなのだけれども……どうやら困りごとがあったようで。


「ふむ、海のモンスター?」

「漁に使う網が何度も壊されて困ってるんだってさ。網そのものは直してきたけどね」


 ゼファーと一緒に村から離れた場所で待機していたウルに、村であったことを報告する。さすがにゼファーは連れていけないし、一匹だけにしておくのも不安だったのでウルが手を挙げてくれたのだ。万が一村がアレな感じだったとしてもフリッカを守りながら咄嗟に逃げるくらいの力はわたしだって付けているからね。


「……我らが対処してもその場しのぎではないか? モンスターが絶滅するわけでもなし、村人自身が対抗策を身に着けなければ繰り返されるだけだと思うのだが」

「そうなんだけども、立場上見捨てるわけにもねぇ。カミルさんに後で報告しておくので、そっちでなんとかしてもらおうかと」

「創造神の神子とは難儀であるのぅ」

「あはは……優先順位の問題で、本来なら村人たちを助けるのも仕事の一つだよ」


 以前ならともかく、決戦が近い今となっては申し訳ないけどあまり時間もかけていられない。全部終わったらまた来てもいいけど、数か月も放置しては可哀相だ。差し当たってカミルさんに対応してもらうのが手っ取り早いかなと。


「その割りにはリオン様は、網を強化したりトラップを差し上げたりしていましたよね」

「逆に言えばそれくらいしか出来ないってことだよ。作り方を仕込むまではムリかな」


 フリッカの指摘していることはそれこそその場しのぎだ。魚の釣り方を教えずに魚をあげているだけのようなものである。短期的な解決にはなっても長期的な、根本解決にはならない。


「まぁ、ひょっとしたらダンジョンが出来てモンスターが活性化していて、ダンジョンを潰すだけで解決するかもしれない。それに――」

「「それに?」」


 仲良くハモる二人に、わたしは鉱石探知機を向ける。探知範囲ギリギリの位置に光点があった。


「モンスターが来るって教えてもらった方角にディメンションストーンの反応があるから、ちょうどいいかなって。第一目標は隕石だけど、残念ながらこっちも結構な数が必要だからね」

「むぅ。前回の探索でこの辺りも通ったはずだが……取り逃したのか」

「わたしの鉱石探知機の方が探知範囲が広いんじゃないかな」

「それはありそうですね」


 自慢ではないけどこれでも神様の加護は多いのだ。神子としての能力は神子歴が長いカミルさんにも負けていない。はず。

 海中っぽいのが難点だけど、耐寒、水中装備はあるので行けないことはない。……寒いから行きたくはなかったけど背に腹は代えられない。ディメンションストーンの数は少ないので見つけたら取っておくのが望ましいのだ。


「……まぁ、ゼファーは待機になるけど……」

「ギュ……」


 ゼファーは海竜ではないので、アイテムで呼吸は出来るとしても水中移動はしんどいだろう。むしろわたしも訓練でしかしてない(しかも冥界アンダーワールドに落とされる前の話なのでブランクがある)ので、足手まといになるかもしれない。ウル頼りだ。


「我が一人で行けばよいのではないか?」

「……状況次第ではお願いするかもね。まずはわたしも行くよ」


 訓練し直す時間も惜しいので最終手段として考えておこう。でも挑戦すらしないのは光神アイティと火神に怒られ案件だ。


「もちろん私も行きます。……が、邪魔になるようでしたらゼファーと一緒に待機することにします」

「うん、フォローはするから、フリッカも一緒に行ってみよう」



 わたしたちは海に潜る準備をして、翌朝になってから行動開始する。

 ひとまず、ディメンションストーンの反応のある位置までゼファーに乗せてもらおうとした、のだけれども。


「モンスターの反応があるな」

「わたしには見えないなぁ。ここから攻撃出来そう?」

「さて……岩などに隠れてなければいけるかもしれぬが……」


 ウルはそう言いながら銛を投げてみる。……チッと舌打ちをしたので当たらなかったようだ。ウルはほぼ外さないから気にしてなかったけど……投擲アイテムに追尾性能でも付けてみるか?

 海中のやつらがわざわざ海上に出てくるとも思えないので待っても無駄だろう。わたしたちはすぐ近くにモンスターの反応がなさそうな位置を選んでから、意を決して海中へと飛び込んだ。


 うん、水中呼吸のエンチャントはしっかりと発動している。耐寒も問題なく、体感はちょっと冷たいプールに入ったくらいだ。

 暗視付き水中ゴーグルで視界も確保されている。そこらを泳ぐ小魚、ゆらゆらと揺れる海藻、カラフルな海洋植物。ほとんど海に潜っていないのでどれも新鮮に移る。そしてどれも素材に見えるけど、今は我慢だ。ちょっと採っていくだけに留めておこう。

 足ヒレで水を蹴り出す。これも水と風の複合エンチャントが掛かっており、小さな力でも推進力を得られる。隣でフリッカがよたよたしてるけど……エルフは森育ちだから仕方ないよね……。はぐれないようにロープで繋いでいるので大丈夫でしょう。くいっと引き寄せて落ち着かせる。

 などとわたしたちが呑気なことをしている間に、ウルはすーっと泳いでいってさっき仕留め損ねたと思わしきモンスターを狩っていた。早い。本気で逃げられたらいくらウルでも追いつけないだろうけど、モンスターは大体敵意剥き出しで向かってくるからね。


『あっちだよ』

『うむ。……なんだか妙な感覚だな、これは』


 短距離ではあるけれど、会話出来ずとも念話のように意志が伝わるアイテムでウルに指示をし、ディメンションストーンの反応のある位置まで泳いでいく。なお、伝える内容は自分の意志で決められるけど、うっかり内心も伝わってしまいそうでマヌケなわたしは特に注意が必要だ。……フリッカから生温かい視線が向けられているのは、さっきの『素材欲しい』が漏れてしまったからだろう。ある意味いつものことなのでそっと目を逸らし、泳ぐことで紛らわす。

 到達したその位置には。


『……想定内ではあるけどさ……』

『どうせダンジョンも潰す気だったのだ。予定に変わりはなかろう』


 ポッカリと大きな穴が空いていた。鉱石探知機は水平方向の探知はしても垂直方向は不明だからね……改良すればいけるかなぁ。

 これはもしかしなくてもダンジョンだ。わたしのセンサーにダンジョン核が引っ掛かっているので確実である。このダンジョンを何とかすれば、一旦はあの村の要望に沿うことになりそうだ。

 ダンジョン核の反応はあっても強力なモンスターが居るような気配はない。ウルも頷いているので間違いない。ガンガンとアラートが鳴るようだったらフリッカにはゼファーと待機してもらわなければならなかったけど、これくらいなら一緒に行けそうだ。


 ウルに先行してもらい、わたしはフリッカの手を引き、ダンジョンへと進んでいくのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >自慢ではないけどこれでも神様の加護は多いのだ。神子としての能力は神子歴が長いカミルさんにも負けていない。はず。 神ーず『むしろそれだけ加護をもらえている方が少ない』  総ツッコミですね、…
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