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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第七章:廃地の穢された闇黒

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希少種族

 とりあえずトラブルにならずによかったと内心でホッとしてから、フリッカ用の椅子と飲み物を出す。

 おっと、まだ気になることはあったな。


「あー……これも確認しておきたいんだけど、きみ……と言うか、破壊神の神子の役割って何?」


 どうしても何か物を壊さなければいけなかったりするのなら廃材とか(加工すればどうとでもなるので全く使えない廃材はないのだけれど)、剣の練習用の木人形みたいなのを用意しなければならない。

 けれど……どうしてもヒトを壊したいとなるとさすがに困る。その場合はウル相手に発散してもらうしかないかな。さすがにウルより強いことはない、ように見えるけどどうなんだろう?

 わたしの問いに、問われたセレネは首を傾げる。


「……役割? そんなもの知らないわよ。あと破壊衝動とかもないから……アタシを何だと思っているの?」

「何、って……破壊神の神子?」

「……そうね」


 役割を知らない? 神子なのに? 破壊神がものぐさすぎて伝え忘れてるパターン?

 破壊衝動がないのは……そう言えば破壊神は『壊すのが大好きで神子なんぞをやっているわけではない』と言ってたっけ。

 ……いや、わたしは未だに破壊衝動に悩まされてるんですけど? おかげでモノ作りが失敗するんですけど? 年季の違い? 創造神の神子だから?

 セレネと同じく首を傾げるわたしに、地神が口を挟んでくる。


「リオン。破壊神の神子に、創造神の神子のような明確な役割はないさね」

「えっ。破壊の力を振り撒くとかしないんですか?」

「それはモンスターがやっているし、元よりわざわざ振り撒かなくても人々は自然に行っている」


 ……なるほど?

 自然に行うと言うのは……料理のために生き物を狩ったり、素材集めのために木を切る行為などがそれにあたるか。

 それを言ったら創造の力だって自然に振り撒いているだろうけど……破壊の力の方が強いと言うことか。それが創造よりも破壊の方が容易い性質によるものか……ヒトの性質によるものか。後者だとしたらなんだか悲しい。


「となると、ウルの役割も特にはないので? わたしの手伝いくらい?」

破壊神アレの意図が読みきれるわけじゃあないが……それで合っているはずさね。余計なことは面倒でしたがらない奴であるし」


 よかった、実はウルには何かを壊さなきゃいけない使命があるとかじゃなくて。わたしの力じゃ止められないからね。

 わたしの障害を壊す、と言う意味ではめちゃくちゃ働いてくれているけれども。……ウルは働き者だよね。破壊神みたいにものぐさじゃなくて助かるわぁ。そっと追加のおやつを出すことで感謝の意を示しておいた。ウルはわけがわからない顔をしつつも食べる。


「じゃあ何のために神子を任命するんです? 破壊神様の身の回りの世話とか? 封印されちゃってるけど」

「……アレがそんなことを必要とすると思うのか?」

「いやぁ、ものぐさだからこそ誰かにやらせるってことも……それに地神様とか火神様とか、しょっちゅうわたしにお酒を要求――」

「それはさておき」


 強引に話を途切れさせられた。パワハラだぞう。


「基本的には種族保護の意味合いが強いさね」

「……はい?」


 種族……保護・・

 何その破壊からめちゃくちゃ縁が遠そうな単語。

 さっきセレネが吸血鬼ヴァンパイアだと判明した時も希少種族云々言ってたけど、関係あるってことだよねぇ。


「ちなみに、破壊神ノクスがそれをやっている理由って『目印にして、うっかり壊さないように』だってさ。怖いよねぇー」


 風神が怖いと言いながらもケラケラ笑っている。何かの間違いで『うっかり』種が途絶えさせられたら笑うに笑えないだろうに。

 逆に言うと、目印がなければうっかり壊しても構わないと思っているのかもしれない。やっぱり笑えない。……わたしもうっかり壊されないようにめじるしを与えられたのかしらん。でも神造人間ドールであっても希少種族じゃないし、もしや珍獣扱い……さすがにないか。気まぐれが一番ありえそうだ。

 茶々を入れてきた風神にシッシッと手振りをしながら地神が補足をする。


「あと、破壊神が力を与えることにより生き残る力が増すから、それで頑張れってことさね」

「頑張れって……頑張れなかったら?」


 セレネの時はわたしが割って入ったからこうして生きているけど、そうでなかったらあの神子に殺されていたかもしれない。

 わたしに救出を願ってきたとは言えどうにも中途半端……いやあのヒト、封印されてるんだった。わたしにコンタクトを取ってくるだけでもやってくれている方ですねゴメンナサイ。


「いくら神だからって、完璧に守れってのは無理な話さね。それに……実際に種族が途絶えたとしてもそれは一時的なもので、またそのうち発生・・する」


 発生って……さっきセレネ自身も言ってたな? 言い間違いではなかったのか。


「世界が種族の因子を保有しているので厳密な意味での滅亡はない。ただ復元には非常に時間がかかる。一人でも生き残ってもらえるとその時間が短縮されるって寸法さね。もちろん番で殖えてもらうのが一番手っ取り早いがね」

「ほーん……?」


 元の世界とは違うんだな。まぁ神様が実在していたり、魔法とか創造の力とかがある時点で全然違うってのはそうなんだけど。

 でもそう言う仕組みなのだとしたら、極論、保護する必要はないのでは……?


「……創造神プロメーティアが悲しむからねぇ……」

「……破壊神様はそれに付き合っている、と」


 あの神様、律儀だな……地味に好感度が上がっていくよ……。あちらからしたらウザいだけかもしれないけど。

 ……まさか以前『うっかりほろぼして』泣かれたから仕方なくそうしている、とか……? ありえそうな……。

 なお、他に発生待機中の種族に、ウルの外見の元となった竜人ドラコニアン魔人ディアブロ鬼人オルガなどが居るらしい。

 何と言うか……名前からして見事にモンスター扱いされそうな種族……あ、まさにそのせいで今存在していないのか……ヒトの業が深い……。思わず大きな溜息が出てしまった。


「……地神様」

「ん?」

「そんな話まですると言うことは……彼らが発生たんじょうした時、わたしに助けてほしいからでしょうか?」


 いくら破壊神から力を授かったとしても、絶対数が少ないと言うのはそれだけで不利だし、大変だろう。一般の住人たちでは無理でも、創造神と破壊神が敵対関係にないことを知ったわたしであれば、彼ら彼女らにそう易々と敵対したりはしない。衣食住も提供出来るので協力者としてはうってつけだ。

 一番は住人たちの意識改革をすることなんだろうけど……一朝一夕に解決出来る問題でもないし、それが不可能に近いことは元の世界でも絶えず争いが起こっていることからも明らかだ。

 わたしの予想に、地神は首を横に振った。


「一応言っておくが、プロメーティアはそこまでリオンに期待していない。もちろん能力がないと言う意味ではなく、そこまでさせられないと言う意味でだ」


 地神曰く、普通に考えれば神子わたし一人にここまでやらせる方がおかしいらしい。百年以上封印されて所在も知れない神様たちを探し回らなければいけなかった、と書くと随分と大変に感じる。実際には運に恵まれ、五柱まで解放出来たわけだけど。


「アンタは十分以上によくやってくれている。ここでまた別の問題を無理に……あえて意識して背負わなくていい。今回の件が例外だと思ってくれていいし、相当に確率が低いのでそもそも出くわさないだろう」

「……はぁ」

「……ただリオンであればその低確率を引き当てて、結局助ける事態になる可能性も……」

「わたしをトラブルホイホイみたいに言わないでくださいよ……」


 それをフラグって言うんですよ……。

 いやそんな疑わしい視線を向けないでくださいよ……わたしのせいじゃないですよ……。

なお、現時点においてこのフラグが本編中で立つ予定はないですが、リオンが勝手に動くこともあるので未定です(そっと目逸らし

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― 新着の感想 ―
[一言] >他に発生待機中の種族に >鬼人(オルガ)などが居るらしい。  何やってんだよ! 団長っ! >まさか以前『うっかり壊(ほろぼ)して』泣かれたから仕方なくそうしている、とか……? ありえ…
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