表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界の開拓記  作者: なづきち
第七章:廃地の穢された闇黒

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

365/515

破壊神の役割

『破壊神は敵ではない』


 今更と言えば今更なセリフである。

 破壊神が創造神の神子であるわたしを救おうとしたこと。あぁ、加護ももらっているか。

 神様たちが破壊神に対して敵対心を抱いていないこと。創造神に至っては共同制作をする仲だ。

 そして破壊神の神子であるウルと出会わせたこと。おそらく、わたしの手伝いのつもりでそうしたのだろう。

 ここまできて『破壊神は敵だ! 倒せ!』なんて、ありえない。

 まさか『神たちの敵ではない』だけで『住人たちの敵ではある』なんて話でもないだろう。……ないよね?


「私もウルさんを敵とは思いませんし、思えません。しかしそうすると、一つ大きな矛盾があると思うのですが……」


 わたしの、確認の体を取った質問に誰一人として動揺はしなかったが、フリッカが疑問を呟く。


『モンスターは破壊神の手勢である』


 そう、破壊神が敵ではないのであれば、何故モンスターを生み出すのか。モンスターは襲ってくるのか。

 しかしわたしは、これにも一応答えらしきものは浮かんでいる。


「わたしは創造神様から……一度たりとも、破壊神を倒せ(・・・・・・)とは言われていない(・・・・・・・・・)んだよ」

「えっ……」

「そして、これはフリッカも聞いているはず」


 火山のダンジョンで、あの謎の男に言われたこと。


『この世界の住人たちがモンスターの発生源』


これに関しては神様たちも事実だと認めている。

知らないならともかく、知っていてなお『破壊神が悪い!』となるのは盲目にもほどがあるだろう。もしくはあの謎の男みたいに破壊神に罪?をかぶせることでメリットがあるとか。

しかし破壊神がモンスターに関係していないわけでもない。


だとすれば……創造神が正の想念を創造に変換するように、破壊神が負の想念をモンスターと言う形に変換しているではないだろうか?



「つまり、破壊神は……ただの役割であり、世界を破壊しようと思ってモンスターを生んでいるわけではない」



 わたしの結論に、フリッカが息を飲んだ。

 ……まぁ生粋のアステリア人からすれば、常識が覆されるようなことなんだろうなぁ。


「あとこれを皆の前で言うと怒られそうだけど……モンスターにも有効活用出来る面はある」

「……有効活用、ですか?」

「まず、モンスターの魔石やら皮やら牙やら、素材になるでしょ?」

「……それは、そう、ですね」

「『まず』と言うからには、他にもありそうだの?」


 『有効』という言い方に眉をひそめたものの、素材になることには頷いたフリッカ。魔石はホント色んな所で使っているからね。

 そしてわたしの言い回しに引っ掛かったウルは期待通りに突っ込んでくれた。気が重いけど、思わせぶりなことを言っておいて答えないわけにもいかない。


「もう一つ……わかりやすい敵を作ることで、住人を団結させる」

「「――」」


 破壊神は、世界の負の想念をコントロールすると共に、憎まれ役を背負っているのではないだろうか、なんて。

 フリッカだけでなくウルも目を見開いた。……まぁきみは純粋ですからね、そんな発想はないんだろうね。

 これもあの謎の男が言っていたことだけど、非常に残念なことに、ヒトという生き物は勝手に敵を作ってしまうこともある。

 外に敵が居るからこそ不満を内側じゃなく外側に向けさせる、仲は良くないけど同盟を組む、なんて話もよく聞く。モンスターという絶対的な敵を用意することで、住人同士の争いを減らすのは有効ではあるだろう。

 ……まぁモンスター発生の原因が住人の負の想念であるので妙な気分になるけど、住人全員清廉潔白でいろってのも無理な話だ。わたしだって誰かを嫌ったりすることあるし。そして敵を用意されてなお住人同士で諍いが起こることで、謎の男が憤る気持ちはわからないでもない。

 神様たちを見回す。肩をすくめたり、苦笑したり。しかし何も言われないので、事実なのだろう。


「……もしその話が事実だとしたら……破壊神は辛くないのでしょうか」

「フリッカ?」

「世界中の人々から憎まれるなど、考えるだけでもゾッとするのですが――」

「それは問題ないであろう」


 フリッカの恐れを、意外なことにウルが遮った。

 ウルはチラとわたしを見てから、断言する。


「誰に嫌われたところで、一切痛痒を感じないタイプであろうよ」

「……」


 あー、なるほど。

 あの黒い女性――破壊神ノクスと会った(と言うのかどうかはともかく)時のことを朧気にだけど思い出す。


「なんて言うか……あのヒト、のらくらと自分が破壊神であることを肯定も否定もしなかったけど……つまりは相手からどう思われようと構わない、くらいの気持ちだったんだろうなぁ、って」

「そ、そうですか……」


 それはそれとして、もうちょっとだけ思い出してみる。

 破壊神ノクス。わたしからすると……助けてもらったこととか役割を抜きにしても、やっぱり敵とは思えない。

 相対した時、めちゃくちゃ恐怖心が沸き上がったけれども、それは死に相対するような原始的な恐怖だ。あの女性自身から敵意とか殺意とか向けられたわけではない、と言うのもある。脅されはしたけど……多分アレは面白がられていたな。

 何だかんだで加護をもらったり、親切にしてもらったり……とても純粋で綺麗な、夜のような闇だったから、と言うのもある。


 そして何故だか、むしろとにかくゴロゴロしていたい、気紛れな猫のような光景が頭に浮かんで。

 ポロリと口から漏れる。


「――プッ」


 ……聞きつけた神様たちに、爆笑された。


「ははははは! 気紛れな猫!」

「気紛れかつ怠惰よねぇ……フフ」

「……ま、まぁ、間違いではないな?」

「怖さは猫どころじゃなく虎だけどねぇー。あ、いや、竜だったね!」

「確かに、アレは力を揮うのすら面倒がるタイプだな!」


 五柱全員から否定の言葉が出てこないどころか、むしろストンとツボにはまってしまったようだ。

 ……うん、この様子からしても、敵対関係ではないよなぁ……。

 しばらくして、神様たちの笑いが収まってから、逸れた話を元に戻す。


「えぇと、地神様は言いましたよね?」

「ん? どれのことさね?」

「『天秤が傾いている』」


 天秤。つまり。



「神様たちはわたしに破壊神を倒してほしいのではなく、創造と破壊のバランスを取ってほしい、ってことですよね?」



 現在、世界は破壊側に傾いていて、それを戻さなければならない。

 さりとて、創造側に大きく傾かせてもいけない。

 創造だけでは成り立たない。

 破壊だけでも成り立たない。

 創造神だけでなく、破壊神も世の中には必要で。


 ……神様たちが妙に回りくどいのもわかった気がする。

 これは、神様うえから言われたから従う、だけでは駄目な話だ。自分で考えてその結論に至らないといけない。

 住人たちの場合は大なり小なりモンスターの被害に遭っているから簡単な話ではないだろうけど……とは言っても、多少なりとも啓蒙して欲しい気持ちがないでもない。何せモンスターを憎めば憎むほどモンスター発生に繋がるのだから、負の悪循環だ。しかし破壊が必要だからと言うのを大義名分にしてヒャッハーするヒトも居ないとは言い切れないよねぇ。難しい。


「……正解さね」


 地神が代表して答えた。

 ……正解してよかった。間違っていたら恥ずかしいところだった。

 それに、あの破壊神と戦う必要がなくなったのは助かる。力の差もそうだけど、剣を向ける気が起きなかったからね。

 わたしがホッとしている間、フリッカからおずおずと手が上がる。


「……あの」

「なんだい」

「……破壊神が敵ではないとして……では、誰が神様方を封印したのでしょうか?」


 この質問に対し、神様ズは一斉に嫌な顔をした。

い、言われていないはずです。

もし言ってる部分があったらでっかいミスです……_(´ཀ`」 ∠)_

設定回が続きますが、もし以前の記述と異なっている部分があれば優しく教えていただけると助かります…(鳥頭作者

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >「ははははは! 気紛れな猫!」 >「気紛れかつ怠惰よねぇ……フフ」 >「……ま、まぁ、間違いではないな?」 |ωΦ)じーーーー  破壊神様が見てる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ